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「聖女様。大変申し訳ありませんが、異世界からいらした方はこの国の王族と婚姻して頂くのが習わしです」
三人の間に入って来たのはこの国の宰相を勤めるウィリアム・ハルスである。
額から大きな汗をかきながらチラチラと王太子を気にしながら話をする様はどう見ても王太子の意に沿うよう聖女様を促しているに過ぎない。
「王族?……まさか、王子様と……」
宰相の話に麗美那はそう言うと優希の顔を見て思案する。
つまり、爽やかで優しい美青年をとるか、はたまた、王子をとるか。
「現在我が国の王子は王太子殿下唯一人しかおりません。つまり、貴女様が王太子妃になりますと、将来のファーストレディになられます」
なんと甘美な響きだろうか?
噂では宰相は口から生まれて来たのではないかと囁かれる程に人を騙くらかすのが得意だ。
「ファーストレディ……」
ほら、その口車に乗ってしまった者が一名いるぞ。
「王太子は文武両道、眉目秀麗、健康で体力あり。御歳22歳」
「まぁ」
王太子の回りに集まった魔法使いが光魔法で王太子を輝かせる。
そして、聖霊魔法使いが魅了の妖精を召喚し、再び王太子の回りに光の粒子を漂わせた。
「麗美那。どうぞ私の妃に」
麗美那の手を取り深々と膝を着く王太子。
光魔法と魅了の妖精の効果抜群。
麗美那は真っ赤な顔でルドルフを見た。
これで頷かない女はいない。
「完全に落ちたな」
案の定、麗美那はコクコクと頷いている。
王太子が麗美那の手の甲に唇を落とすと
「おーっ!!」
と歓声が上がった。
ハッとした麗美那は辺りを見渡して愕然とする。
あ~あ。
魔法が切れたな。
「皆の者。我が妃となる麗美那だ。そして、勇者殿には我が妹と領土を。正式な通達は明日。では宰相、後を頼む」
そう言ってルドルフは麗美那をお姫様抱っこして強制的にその場を離れて行った。
「こほん。では、アリエル姫」
ウィリアムの声に私の肩がピクンとなる。
「はい」
何とか返事が出来た。
「こちらの勇者優希に公爵位を封爵し領土は北の大地とする。また第一王女であるアリエル姫の降嫁先とする。異論はありませんな?」
何の説明もなく宰相は皆の前で言質を取ろうとする。
キョトンと宰相の話を聞いていた優希は私の方を見た。
そして、ニコリと微笑む。
それ如何に?
「姫様との婚姻お受け致します」
そして、何故かすんなりと承諾していた。
聖女様にはお友達止まりだったのに。
優希は慣れたように私の手を取ると手の甲へと口付ける。
「姫様を娶る栄誉を私に」
王太子とは雲泥の差のとても優雅な所作。
居合わせたご婦人方の間からため息が聞こえる。
「……許します」
一拍置いてから私は同意した。
生憎同意する以外の道は私にはなかったのだから。
そして、王太子の邪魔者でしかない私と勇者様はこれから三日後、仮の挙式を済ませて荒れくれた北の大地に出発する事になるのだった。
命あっての物種。
それさえも選択の余地はなかったのだ。
三人の間に入って来たのはこの国の宰相を勤めるウィリアム・ハルスである。
額から大きな汗をかきながらチラチラと王太子を気にしながら話をする様はどう見ても王太子の意に沿うよう聖女様を促しているに過ぎない。
「王族?……まさか、王子様と……」
宰相の話に麗美那はそう言うと優希の顔を見て思案する。
つまり、爽やかで優しい美青年をとるか、はたまた、王子をとるか。
「現在我が国の王子は王太子殿下唯一人しかおりません。つまり、貴女様が王太子妃になりますと、将来のファーストレディになられます」
なんと甘美な響きだろうか?
噂では宰相は口から生まれて来たのではないかと囁かれる程に人を騙くらかすのが得意だ。
「ファーストレディ……」
ほら、その口車に乗ってしまった者が一名いるぞ。
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「まぁ」
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そして、聖霊魔法使いが魅了の妖精を召喚し、再び王太子の回りに光の粒子を漂わせた。
「麗美那。どうぞ私の妃に」
麗美那の手を取り深々と膝を着く王太子。
光魔法と魅了の妖精の効果抜群。
麗美那は真っ赤な顔でルドルフを見た。
これで頷かない女はいない。
「完全に落ちたな」
案の定、麗美那はコクコクと頷いている。
王太子が麗美那の手の甲に唇を落とすと
「おーっ!!」
と歓声が上がった。
ハッとした麗美那は辺りを見渡して愕然とする。
あ~あ。
魔法が切れたな。
「皆の者。我が妃となる麗美那だ。そして、勇者殿には我が妹と領土を。正式な通達は明日。では宰相、後を頼む」
そう言ってルドルフは麗美那をお姫様抱っこして強制的にその場を離れて行った。
「こほん。では、アリエル姫」
ウィリアムの声に私の肩がピクンとなる。
「はい」
何とか返事が出来た。
「こちらの勇者優希に公爵位を封爵し領土は北の大地とする。また第一王女であるアリエル姫の降嫁先とする。異論はありませんな?」
何の説明もなく宰相は皆の前で言質を取ろうとする。
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そして、ニコリと微笑む。
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そして、何故かすんなりと承諾していた。
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そして、王太子の邪魔者でしかない私と勇者様はこれから三日後、仮の挙式を済ませて荒れくれた北の大地に出発する事になるのだった。
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