きっと私は悪役令嬢

麻生空

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公爵領と言われる領地は王都を中心に八つに分かれている。

基本的に代々公爵位をはいする五大公爵家と、王族が一代限り賜る大公家(王族は三名だけが大公として領地を賜れる)。

現在大公家は先代の王弟殿下一名と現在の王弟殿下二名がその任に就いている。

どの時代もそうだが、大公の爵位を持つ王族が亡くなると一代限りの爵位の為に、その家族はその領土を王家に還さなくてはならない。
そして、新たな王族が大公になるが、いない場合は王家直轄地として管理される。
また、王都周辺と国境側に王家の直轄領もある。

故に、王太子以外の男子は将来的に大公となるが、領地に関しては空きがなければ賜る事も出来ず、その場合は年金と言うお金が入る事になる。

領地の管理能力がない王族なら正直年金を貰って暮らす方が責任も少ないし楽なのだが、かと言って領地の空きがあるのに「私は年金で良いです」何て言う馬鹿は今までいなかった。
それに、管理を全て部下に任せて何もしなかった王族は事実何名かいるが、社交だけは欠かさず行っていた。
勿論、年金を貰う方は公務にも出なければならないので、まるっきり何もしないのではないのだ。

つまり、何が言いたいかと言うと、ただで飲み食い出来る訳ではないと言う事だ。

「あのボンクラ伯爵め~」

色々考えれば考える程無能な伯爵に頭に来る。
諸々の鬱憤のまま馬を走らせる。


話は戻るが、王都を中心に公爵領はドーナッツを輪切りしたように分布されている。
そして、王都からその公爵領までは大きな整地された道が通っている為に馬車でも結構な速度が出せるのだ。

変な言い方だが、王都に行くよりラクト伯爵の領地の方が近いのに、道の整備がなっていない為にやたらと時間を食うのだ。
故に、ルトラー家からラクト伯爵家まで馬で一時間位の距離になってしまう。
公爵領から各領地に伸びる一応主流とされている荒れた道をひたすら馬を走らせる。

馬車がやっと通る位の道だが、本当ならもう少し大きく整地して凹凸を減らして流通を良くしたかったのだ。
せめて馬車がすれ違える位には。

ラクト伯爵の領地は確かに税収が良い。
けど、それに特化している為にその他の農業、つまり、食料は自領で賄えないのだ。
その為に他の地域から食料を調達している。
食料はやはり鮮度も大切な為にその運搬の為の手段として陸路と航路が考えられた。

けど、川の水は何時もあるとは限らない。
5年前の水不足の時には船を通せない程水位が下がったのだ。
それ故に三年前から商業用の大きな道を作る話が上がったのだが。
何を考えているのか、今ではそんな声すらない。
本来ならラクト伯爵家の方こそ上にお願いする立場の癖に、話が本決まりのなる
前に何も言って来なくなったらしい。
まぁ、その頃に世代交代があったのだから、あのボンクラ息子がサボっているとしか思えない。
悪態つきつき一直線とは言えない道のりを大分蛇行しながら馬を走らせる。

これがもし直線の道なら30分位でラクト伯爵の家に到着したであろう。

故に、私はショートカットをする。

つまり、道がない所でも多少のショートカットで走る。

馬車だったらこうは行かない。
何のための馬だ。

但し、これはこの本筋の道のみ。

後は途中から伯爵家へ北上する道に入るのだ。

そこからは道なりに走る事にしている。

何せラクト伯爵の家には行った事がないからだ。

ただ、知識として地図では場所を確認している。
その程度だ。
 
そろそろ北上する道が見えてくる頃だと前方を確認すれば、一頭の馬が道端の草を食べていて、その脇の茂みの中に人が横たわっているのが見えた。
道路にちょっとだけ足が出ていて普通に考えて昼寝をしているようには見えない。

『もしや落馬?』

そんな予感がして私は自身の乗っていた馬を静止させた。

「そこの御仁如何されましたか?」

馬から降りながら声を掛けると呻き声が帰って来た。

やはり、落馬したのか?

人命救助は何よりも優先される。

私は倒れた人を助けようとしげみの中へと入って行った。

「大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」

声を掛けつつ茂みを割って入ると突然倒れていた人物が私の腕を引いた。

『しまった。罠か?』
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