きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「えっ……何でルディがここに?今日は来ないようにって手紙を送ったよね」

慌てた私はルドルフ様に苦情を言う。

そんな私の言葉にルドルフ様は益々眉間のシワを深くする。

「君に『ルディ』と呼ぶ事を許可した覚えはない」

………………確かに。

あれは兄であるエドワードに許可したのであって婚約者の私に許可した事なんてない。
私は一瞬で渋面を作った。

「申し訳ございません。私の勘違いです」

一応謝ったものの、心の中は滅茶苦茶モヤモヤする。
元はと言えばルドルフ様がエドに『ルディ』呼びを強要するからこんな事になったのだ。
何度も何度も『ルディ』って訂正されて……。
私だって言いたくって言ったんじゃない。
確かに今のは言い間違った自分も悪いけど、気持ち的には全然納得出来ない。
そんな私に再び不機嫌なルドルフ様の声が頭上に振りかかった。

「エドは?」

そして、執務室をまんべんなく見渡したルドルフ様はやはりと言うべきか兄を探していたのだ。

「お兄様は今朝から領地の視察に向かっています」

兎に角、今をやり過ごさねば。
当たり障りのない回答をルドルフ様に投げ掛けると再びルドルフ様の眉間にシワが寄る。

「何?今日は日曜日だぞ。僕が来る日に何故出掛けたんだ」

その言い分こそ納得いかない。
元々両家で取り決めていたのは月に一度の婚約者同士の顔合わせのみ。
何勝手に毎週日曜日に来ているのか?
それも、婚約者のエリスに会いに来るのではなく、その兄のエドワードに会いに来るのだ。
可笑しいだろう!?

「前触れもなしに突然いらっしゃったようですので、流石のお兄様も対処出来なかったのかと思われますわ。それに、最初のお約束ではルドルフ様のご訪問は月に一回だけのはず。それに、それは私のお兄様とお茶をする事では決してなかったはず。大体、本来ならお兄様より婚約者の私の方を立てるのが筋ではないのですか?それを毎回毎回『エド、エド』と、正直婚約者をないがしろにしていると言われても仕方がないのではないのですか?」

何となく理不尽な攻め句に今までの鬱憤うっぷんを晴らすように最大の嫌味で返しておく。

案の定ルドルフ様は不機嫌な顔を更に不機嫌にさせて私に詰め寄って来た。

「一昨日は可愛い所もあると思ったのに、やはり女などろくでもない」

そう言って私の肩を強く掴む。

「痛い」

あまりの痛さに手に持っていた手紙を落としてしまった。

「あっ」

と思い、手紙を拾おうとするとルドルフ様の指が先に手紙に触れた。

「姉上から?」

ルドルフ様はそう言うと私宛に届いたカナリア様からの手紙を封筒から出して読み始める。

「ちょっと、人に来た手紙勝手に読まないでよ。返して」

手紙を読み進めるルドルフ様は読み終わったのか手紙を持った腕を下に下ろした。
私はその隙に手紙を奪い返す。

「始めてお会いした時から最低だと思っていましたが、今のはそれ以上に最低ですわ。お帰り下さい」

私の言葉にルドルフ様は傷付いたような顔になる。

勿論今の私にはそんなルドルフ様を思いやれるだけの心のゆとりはなかった。

「分かった。帰るよ」

苛立たし気にルドルフ様は私を一瞬見た後、書斎から出て行った。

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