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気持ち少し長めの抱擁は、アレンデル殿下の「ありがとう。思わず抱き付いてしまったね」と、少し照れた顔でそう言われるとそっと腰に回したその手を解いてくれた。
「いえいえ、役得と言う事にしておきます」
そう言うと、二人で笑いあう。
アレンデル殿下の前では、まるで息をするように話が出来るから不思議である。
「じゃあ、恋人の振りは少し細かい設定が必要だよね。はい、これ」
そう言って渡された紙には細かい設定が書かれていた。
それも、題して『私とエリスのプロフィール』と、意味不明な事が書かれている。
「一応恋人の事は知っておかないとね」
そして、もう一枚の質問が書かれている用紙もペンと共に寄越された。
それは主に好きな食べ物とか嫌いな食べ物から始まり100余りの質問が書かれていた。
いったい何時準備をしたのか疑問である。
アレンデル殿下は最初の紙を二人の間に置くと説明を始めた。
『出会ったのは三年前、たまたまルトラー公爵家に極秘訪問した時に会っている。』
「三年前だとエリスは15歳だね。エドワードが成人した頃だから、そのお祝いで内緒の訪問をした事にしよう。因みに、エドワードとは親しくしているので誰も疑わないと思うよ」
アレンデル殿下の言葉で何故エドワードでないのがバレていたのか納得した。
「お兄様と面識があったから私が偽物だと分かったんですね」
そう言われれば納得だ。
けど、アレンデル殿下は「ん~」と軽く唸るとそうではない事を話される。
「確かに、偽物だとは思っていたけど、エリスのその腕に着けている時計でエリスとルドルフの言うエドが同一人物だと言う事が分かったんだ」
アレンデル殿下はそう言うと私の腕に付けてある腕時計に触れた。
「私と恋人の振りをするのだから、その間だけ私の腕時計をして欲しいんだ。交換して貰えないだろうか?」
アレンデル殿下はそういうと、自身の腕に着けた男性用の腕時計を外して私の方へと寄越した。
流石は王族の持ち物と言うべきか、私が着けている腕時計より宝飾の数が半端ない。
文字盤の所へも惜しみ無く幾つもの宝石が散りばめられていた。
「父上に昨年の誕生日に頂いた物だけど、ダメかな?」
何故か下から覗く用に私を伺い見るアレンデル殿下。
滅茶苦茶可愛くってノーとは言えない。
しかし、絶対これお高い品物だよね。
陛下が息子の誕生日に贈った品物なのだから。
「正直、傷付けそうで怖いです」
そう言って恐る恐る腕時計を手に取る。
「じゃあ、気後れしない程度の腕時計を後でプレゼントするね。それまでは交換と言う事で、来週位には届くから」
事も無げに言うアレンデル殿下。
しかし、腕時計はまだそれ程主流ではないので金額が張るんだよ。
「貰う理由がありません」
そう言うとアレンデル殿下は「成功報酬の前払いだから」と良い笑顔で応えた。
あれ?
何か可笑しくない?
何か色々と準備が良くない?
それとも、これが優秀な王子様の普通なの?
勿論ジト目でアレンデル殿下を見てしまったが、次の瞬間アレンデル殿下に蕩けるような笑顔を向けられ、単純な私はそんな疑問を頭の外に直ぐに飛ばしてしまった。
「それと、エドワードの名前は後でややこしくなると大変だからそのままエリスの名前で通すのはどうだろう」
勿論、お兄様にまで男色家と言う汚名を着せなくなかった私としては大変助かる申し出であるのだが。
「もともとエリスって名前は男の子にもつける事がある名前だから良いんじゃないかな?ルドルフに聞かれたら父に内緒でアルバイトしているから妹の名前を使っているって言えば良いよ」
そう言って何でもない事のように笑うアレンデル殿下。
優秀だと御輿を担がれそうになるだけあり、アレンデル殿下には敵わないと思ってしまった。
「いえいえ、役得と言う事にしておきます」
そう言うと、二人で笑いあう。
アレンデル殿下の前では、まるで息をするように話が出来るから不思議である。
「じゃあ、恋人の振りは少し細かい設定が必要だよね。はい、これ」
そう言って渡された紙には細かい設定が書かれていた。
それも、題して『私とエリスのプロフィール』と、意味不明な事が書かれている。
「一応恋人の事は知っておかないとね」
そして、もう一枚の質問が書かれている用紙もペンと共に寄越された。
それは主に好きな食べ物とか嫌いな食べ物から始まり100余りの質問が書かれていた。
いったい何時準備をしたのか疑問である。
アレンデル殿下は最初の紙を二人の間に置くと説明を始めた。
『出会ったのは三年前、たまたまルトラー公爵家に極秘訪問した時に会っている。』
「三年前だとエリスは15歳だね。エドワードが成人した頃だから、そのお祝いで内緒の訪問をした事にしよう。因みに、エドワードとは親しくしているので誰も疑わないと思うよ」
アレンデル殿下の言葉で何故エドワードでないのがバレていたのか納得した。
「お兄様と面識があったから私が偽物だと分かったんですね」
そう言われれば納得だ。
けど、アレンデル殿下は「ん~」と軽く唸るとそうではない事を話される。
「確かに、偽物だとは思っていたけど、エリスのその腕に着けている時計でエリスとルドルフの言うエドが同一人物だと言う事が分かったんだ」
アレンデル殿下はそう言うと私の腕に付けてある腕時計に触れた。
「私と恋人の振りをするのだから、その間だけ私の腕時計をして欲しいんだ。交換して貰えないだろうか?」
アレンデル殿下はそういうと、自身の腕に着けた男性用の腕時計を外して私の方へと寄越した。
流石は王族の持ち物と言うべきか、私が着けている腕時計より宝飾の数が半端ない。
文字盤の所へも惜しみ無く幾つもの宝石が散りばめられていた。
「父上に昨年の誕生日に頂いた物だけど、ダメかな?」
何故か下から覗く用に私を伺い見るアレンデル殿下。
滅茶苦茶可愛くってノーとは言えない。
しかし、絶対これお高い品物だよね。
陛下が息子の誕生日に贈った品物なのだから。
「正直、傷付けそうで怖いです」
そう言って恐る恐る腕時計を手に取る。
「じゃあ、気後れしない程度の腕時計を後でプレゼントするね。それまでは交換と言う事で、来週位には届くから」
事も無げに言うアレンデル殿下。
しかし、腕時計はまだそれ程主流ではないので金額が張るんだよ。
「貰う理由がありません」
そう言うとアレンデル殿下は「成功報酬の前払いだから」と良い笑顔で応えた。
あれ?
何か可笑しくない?
何か色々と準備が良くない?
それとも、これが優秀な王子様の普通なの?
勿論ジト目でアレンデル殿下を見てしまったが、次の瞬間アレンデル殿下に蕩けるような笑顔を向けられ、単純な私はそんな疑問を頭の外に直ぐに飛ばしてしまった。
「それと、エドワードの名前は後でややこしくなると大変だからそのままエリスの名前で通すのはどうだろう」
勿論、お兄様にまで男色家と言う汚名を着せなくなかった私としては大変助かる申し出であるのだが。
「もともとエリスって名前は男の子にもつける事がある名前だから良いんじゃないかな?ルドルフに聞かれたら父に内緒でアルバイトしているから妹の名前を使っているって言えば良いよ」
そう言って何でもない事のように笑うアレンデル殿下。
優秀だと御輿を担がれそうになるだけあり、アレンデル殿下には敵わないと思ってしまった。
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