きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「では、エリス。わたくしは先に戻りますわね。麗しのエド、楽しみにしておりますわよ。ミランダ宜しくお願いしますね」

「勿論でございますわん」

先に支度を整えたカナリア様が一足先に夜会へと戻って行く。  

「さて、エリス様ぁ。わたくしがぁ今夜一番の貴公子にぃ仕上げてご覧にいれますわん」

そう言ってメイク道具を持つのはミランダさん。

「どんな男も美女に出来るわたくしの腕をぉ存分に体験して頂きますわん」 

うん。
確かにミランダさんは外見だけは美女だ。

しかし、声を聞けば皆が皆その性別に気付いてしまい近付く事はないだろう。

私も初めて見た時はスッゴくがたいの良い美女だと思った位なのだから。

「あの……エリス様ぁ、もし宜しければぁわたくしの事をぉ夜会でエスコートして頂けないかしらん」

化粧を施しながらそんな事を言って来るミランダさん。

「わたくし、身も心も女になった時にぃ素敵な殿方にエスコートされてぇ夜会に出るのが夢でしたのよん」
 うっとりとそんな事を言うミランダさん。

「別に良いですけど、条件が一つ」

私の言葉に目を輝かせるミランダさん。

「皆に男だと悟られないように声は控えめにお願いします。それと、そのオネェ言葉も禁止です」

別にミランダさんが嫌いな訳ではないし、今回も色々と協力して貰っているのだからそれ位は良いだろう。
けど、何故だかその口調を聞いたいると反射的に体が動きそうになるのだ。

「エリス様、分かりましたわん。では、わたくし好みの貴公子に仕上げちゃいますわねん」

多少まだ言葉が治っていないようだが、努力は見受けられる。
取り敢えず『良し』としておこう。
夜会にエスコートして貰える事が決まったミランダさん。
故に、改心の一撃のミランダさんのメイク技がまさかあんな事になるだなんて、この時の私は理解していなかった。



ーーーーーーー


完璧な美男美女が完成して再度会場へと向かう。

「ああ、わたくしの夢がとうとう叶うのね」

何処から持ってきたのかミランダさんはエリスが着ていた服と同じドレスを着ていた。

勿論私とミランダさんではサイズが違うので別に用意しておいたドレスだろう。

髪型も何となくエリスと似ていて、下手すると後ろから見たら兄妹で来たと勘違いされてしまうと思う。

それに、ミランダさんは今はヒールのない靴を履いており、私との身長差を少しでも埋めようとしていた。

しかし、元々の身長差もあるのでデカイ女には変わりないんだけど。

今の時間は丁度12時を回って少しした所だ。

会場からは盛大な拍手が鳴り響いている事から第二部が始まったのだろう。

しかし、夜会で第二部ってなんだろう?

「さぁ、エリス様。行きますわよ」

扇で口元を隠したミランダさんが「グフフフ」と嬉しそうに笑う。 
どうやらあの口調も直しているようだ。

喋らなきゃ綺麗なのに本当にミランダさん勿体ない。

「ミランダさん、少し声のトーンを落としてくださいね。口調はOKです」

そう耳元で囁いてやる。
すると、ミランダさんは顔を赤らめながらコクコクと頷いた。

それを合図に私達は会場入りを果たしたのだった。
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