きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「では皆様、わたくし少々お色直しをして参りますので、続きは第二部で」

カナリア様はそう言うと美しいく礼を取った。

「楽しみにお待ちしておりますわ。カナリア殿下」

そう言ってこの場で二番目に位の高い婦人がカナリア様へ笑顔で応じる。
お色直し?
第二部って何?

「では、行きますわよエリス」

カナリア様に促され一歩前に出ると何故かルドルフ様に手で制されてしまった。

「何故姉上のお色直しにエリスも同行するのですか?」

えっと、ルドルフ様一応カナリア様は確かにお姉様かもしれませんが、地位的には王太子妃殿下ですよ。
つまり、王族ですよ。

「あらルドルフ、将来の妹と少しゆっくりとお話がしたいだけですわよ」

事もなげにそう言うカナリア様に、渋面のルドルフ様。

「エリスは初めての王宮での夜会で少々疲れております。それを、姉上のお話相手などと……」

ルドルフ様の話し方はどうであれ、一応私の事を心配してくれているようだ。
 
珍しい事もあるのだな。
と、少し感心してしまった。


「まぁルドルフったら、そんなにエリスを取られるのが嫌だなんて可愛い所があるのね。勿論お話は建前ですわ。慣れない夜会で疲れている妹に少しでも休んで貰おうと思う姉心が分からないのかしら」

クスクスと笑うカナリア様。
そこに、カイザル殿下も加わる。
「まぁ、カナリアも将来の妹の事を可愛いと思っての事だ。愛しい婚約者と離れるのが嫌なのは分かるがカナリアの姉としての気持ちも理解してくれ」
「愛しい」とはなんぞや?何処をどう見たらそう思えるのかしら?謎だ。
しかし、流石に王太子殿下の一言は大きい様子。
ルドルフ様は私の前に出していた手を引くと「エリス、くれぐれも無理はするなよ」と言って道を開けてくれた。

何故に捨てられた子犬のような顔をするのか?
疑問である。

さて、やっとの思いでカナリア様の誘導の元会場を後にす事が出来た。
これでやっとエドになれる。

「悪いのだけど、わたくしが先に着替えますので、その後にエリスを整えますわね」

カナリア様はそう言いながら客間がある廊下を歩く。

「そうそう。今から着替えに行く部屋はわたくしがリザーブしましたの。今夜は泊まって行ってね。明日の朝はエドとして一緒に朝食を食べましょう」

何とも怪しい微笑みに『こりゃぁ何かあるな』と思ったが、悲しいかな権力者に楯突くだけの力がない。
故に「ご厚意感謝します」とお礼を述べた。

 そして、やって来た部屋では既にブランデの方達が待機していた。

勿論ミランダさんもである。

そして、扉を開いた瞬間

「エリスしゃま~」

と、飛び掛かって来た物体に思わずラリアートをかましていた。

「あれ?ミランダさん?」

ピクピクと床に沈んだ大女。

「気にせず行きますわよ。時間が惜しいので」

カナリア様はミランダさんを一瞥して部屋へと入って行った。
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