44 / 97
ルドルフ視点9
しおりを挟む
エリスと別れた僕は第二王子ことアレンデル殿下の所へとやって来ていた。
「アレンデル殿下、今日は宜しくお願い致しますね」
勿論エドの事だ。
彼を勧誘して貰う事。
殿下には相当優秀だと嘘をついている。
そうでもしないとこのお人は側に人を寄せ付けないだろうから。
「勿論覚えているさ。ルドルフが珍しくご執心の婚約者の兄だろう」
何時になく含みのある言い方で僕の方を見るアレンデル殿下。
「はい。ですが以前にも申上げましたが、彼は僕のものですので」
何せ、エドは僕の為に男を捨てたのだ。
男色家で名を馳せてしまっているアレンデル殿下の餌食になどさせない。
「分かっているよ」
肩を竦めて同意してくれるアレンデル殿下。
「君こそ、婚約者に不誠実だとは思わないのかい?エドワードは彼女の兄なのだろう?」
勿論殿下から注意されなくても判っている。
けど、エドは……エドワードは僕の為に男を捨てたのだ。
もう彼にはこの先奥さんを貰って子供を作り普通の家庭を作ると言う、その普通の幸せを掴む選択肢は僅かしか残されていないのだ。(つまり、連れ子か養子だ)
だが、エドの気持ちはどうなる?男ならあの兄妹二人の面倒を見る位の気概は必要だろう。
だって、あんなに優しいエドが妹を蔑ろにするはずがない。
「僕が二人の面倒は見ますよ。それが僕なりのけじめですから」
僕の言葉にアレンデル殿下はあからさまに眉間に皺を寄せた。
「ルドルフにはめずらしくゲスな回答だね。まぁ良いよ。私もその『エド』と言う彼には確認しなければならない事があるからね」
何やら思考に落ちて行くアレンデル殿下。
年相応の方ではないのは昔から知っている。
彼がもしもう少し早く生まれたなら。
そんな事を言っている貴族の多い事。
しかし、3年位前から突然殿下のそのような噂は聞かなくなった。
代わりに「美男子だけを侍らせている」とか「女性に興味がない」など、あまり良くない噂が広がっている。
しかし、殿下はその噂を容認している節がある。
敢えて噂を流させているのか?
そう振る舞ってさえいるように思えるのだ。
その最もたるや、彼の側近達だ。
自分で言うのもなんだが、見目麗しい者達だけで固められている。
「ふ~ん。じゃあ、ルドルフがもしその婚約者を捨てても良いっていうのなら私が貰っちゃおうかな」
クスクスと笑いながらそんな事を提案して来る殿下。
「ご冗談を」
そう言って牽制しておく。
何処までが本気で何処からが冗談か分からない人だ、故に下手な事が言えない。
「では、僕はそろそろ戻ります。アレンデル殿下。会場でお会い致しましょう」
だから、それだけを言って退出して来たのだ。
ーーーーーーー
姉上の所から帰って来たエリスを見た時。
自分の気持ちに気付かされた。
美しく装われたその姿。
「夜会なのにって、薄化粧を叱られちゃいました」
テヘと笑うエリス。
通り過ぎる男達全てが振り返り、足を止めて行く。
「何処のご令嬢だ」とか「天使だ」とか「まさかルドルフ様の婚約者か?」とか「女に興味がない振りをして上手くやったよな」とか。
よし。
最後に言ったヤツの顔は覚えたからな。
しかし、改めてエリスを見るとあまりにも綺麗で、それでいて可愛くて胸が締め付けられるようだ。
何なんだこの思いは……。
……。
まさかこれが俗に聞くあれか?あれなのか?
今なら分かる。
今日初めて会った時からエリスに惹かれているんだ。
初顔合わせは婚約事態が不本意だった為にそう言う色眼鏡で見てしまっていたのだ。
綺麗だけど可愛い。
もろ僕好みだ。
『なんて事だ。僕はエリスとエド兄妹二人を愛してしまったのだ。なんて罪なんだろう』
しかし、今までの彼女の言動と己の今までの所業が更に己の首を締める。
胸が苦しくって思わずエリスを抱き締めた。
エドと同じ匂いに頭が痺れるようだ。
本来なら婚約者のエリスを取るべきなのだろうが、何せエドは初恋の君だし、それに彼は僕の為に男を捨てたのだ。
簡単に「じゃあそう言う事で」とは忘れられない。
いや、忘れてはならないのだ。
それに、きっとエリスは僕に嫌われていると思っている。
いや、実際にさっきまでは僕もエリスを嫌いだと思っていたくらいだ。
だから『エリスは僕が嫌いだと』そう考えた方が普通だ。
小さく柔らかなエリス。
自分の気持ちに気付いた今ならアレンデル殿下に渡す気は失せた。
しかし、今の自分はエリスとエドの間で揺れ動くのみ。
どちらも選べないけど、どちらも欲しい。
なんて欲深いのか。
アレンデル殿下にゲス呼ばわりされようともこの気持ちは消えないだろう。
「アレンデル殿下、今日は宜しくお願い致しますね」
勿論エドの事だ。
彼を勧誘して貰う事。
殿下には相当優秀だと嘘をついている。
そうでもしないとこのお人は側に人を寄せ付けないだろうから。
「勿論覚えているさ。ルドルフが珍しくご執心の婚約者の兄だろう」
何時になく含みのある言い方で僕の方を見るアレンデル殿下。
「はい。ですが以前にも申上げましたが、彼は僕のものですので」
何せ、エドは僕の為に男を捨てたのだ。
男色家で名を馳せてしまっているアレンデル殿下の餌食になどさせない。
「分かっているよ」
肩を竦めて同意してくれるアレンデル殿下。
「君こそ、婚約者に不誠実だとは思わないのかい?エドワードは彼女の兄なのだろう?」
勿論殿下から注意されなくても判っている。
けど、エドは……エドワードは僕の為に男を捨てたのだ。
もう彼にはこの先奥さんを貰って子供を作り普通の家庭を作ると言う、その普通の幸せを掴む選択肢は僅かしか残されていないのだ。(つまり、連れ子か養子だ)
だが、エドの気持ちはどうなる?男ならあの兄妹二人の面倒を見る位の気概は必要だろう。
だって、あんなに優しいエドが妹を蔑ろにするはずがない。
「僕が二人の面倒は見ますよ。それが僕なりのけじめですから」
僕の言葉にアレンデル殿下はあからさまに眉間に皺を寄せた。
「ルドルフにはめずらしくゲスな回答だね。まぁ良いよ。私もその『エド』と言う彼には確認しなければならない事があるからね」
何やら思考に落ちて行くアレンデル殿下。
年相応の方ではないのは昔から知っている。
彼がもしもう少し早く生まれたなら。
そんな事を言っている貴族の多い事。
しかし、3年位前から突然殿下のそのような噂は聞かなくなった。
代わりに「美男子だけを侍らせている」とか「女性に興味がない」など、あまり良くない噂が広がっている。
しかし、殿下はその噂を容認している節がある。
敢えて噂を流させているのか?
そう振る舞ってさえいるように思えるのだ。
その最もたるや、彼の側近達だ。
自分で言うのもなんだが、見目麗しい者達だけで固められている。
「ふ~ん。じゃあ、ルドルフがもしその婚約者を捨てても良いっていうのなら私が貰っちゃおうかな」
クスクスと笑いながらそんな事を提案して来る殿下。
「ご冗談を」
そう言って牽制しておく。
何処までが本気で何処からが冗談か分からない人だ、故に下手な事が言えない。
「では、僕はそろそろ戻ります。アレンデル殿下。会場でお会い致しましょう」
だから、それだけを言って退出して来たのだ。
ーーーーーーー
姉上の所から帰って来たエリスを見た時。
自分の気持ちに気付かされた。
美しく装われたその姿。
「夜会なのにって、薄化粧を叱られちゃいました」
テヘと笑うエリス。
通り過ぎる男達全てが振り返り、足を止めて行く。
「何処のご令嬢だ」とか「天使だ」とか「まさかルドルフ様の婚約者か?」とか「女に興味がない振りをして上手くやったよな」とか。
よし。
最後に言ったヤツの顔は覚えたからな。
しかし、改めてエリスを見るとあまりにも綺麗で、それでいて可愛くて胸が締め付けられるようだ。
何なんだこの思いは……。
……。
まさかこれが俗に聞くあれか?あれなのか?
今なら分かる。
今日初めて会った時からエリスに惹かれているんだ。
初顔合わせは婚約事態が不本意だった為にそう言う色眼鏡で見てしまっていたのだ。
綺麗だけど可愛い。
もろ僕好みだ。
『なんて事だ。僕はエリスとエド兄妹二人を愛してしまったのだ。なんて罪なんだろう』
しかし、今までの彼女の言動と己の今までの所業が更に己の首を締める。
胸が苦しくって思わずエリスを抱き締めた。
エドと同じ匂いに頭が痺れるようだ。
本来なら婚約者のエリスを取るべきなのだろうが、何せエドは初恋の君だし、それに彼は僕の為に男を捨てたのだ。
簡単に「じゃあそう言う事で」とは忘れられない。
いや、忘れてはならないのだ。
それに、きっとエリスは僕に嫌われていると思っている。
いや、実際にさっきまでは僕もエリスを嫌いだと思っていたくらいだ。
だから『エリスは僕が嫌いだと』そう考えた方が普通だ。
小さく柔らかなエリス。
自分の気持ちに気付いた今ならアレンデル殿下に渡す気は失せた。
しかし、今の自分はエリスとエドの間で揺れ動くのみ。
どちらも選べないけど、どちらも欲しい。
なんて欲深いのか。
アレンデル殿下にゲス呼ばわりされようともこの気持ちは消えないだろう。
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
恋歌(れんか)~忍れど~
ふるは ゆう
恋愛
大学三年の春、京極定家は親友の有田業平の手伝いで大学の新入生歓迎会を手伝うことになる。そこで知り合った文学部の賀屋忍と北家高子、この二人との出会いが京極にとって、とても大切な一年になっていく。

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女

悲恋 (一部BL要素含む)
樺純
恋愛
王が世を支配する時代。
トナとコハクは愛し合いながら穏やかな日々を過ごしていました。
そんな時、トナとコハクの住む町に王が現れます。
トナは王に身染められ、愛するコハクと別れ胸を痛めながら王宮に入る事になります。
王宮に入ったトナに次々と起こる試練。
トナを失い悲しみに暮れるコハク。
そんな二人に幸せな日々は訪れるのでしょうか…?

「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。

「君を愛するつもりはない」と言ったら、泣いて喜ばれた
菱田もな
恋愛
完璧令嬢と名高い公爵家の一人娘シャーロットとの婚約が決まった第二皇子オズワルド。しかし、これは政略結婚で、婚約にもシャーロット自身にも全く興味がない。初めての顔合わせの場で「悪いが、君を愛するつもりはない」とはっきり告げたオズワルドに、シャーロットはなぜか歓喜の涙を浮かべて…?
※他サイトでも掲載中しております。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる