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ルドルフ視点9
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エリスと別れた僕は第二王子ことアレンデル殿下の所へとやって来ていた。
「アレンデル殿下、今日は宜しくお願い致しますね」
勿論エドの事だ。
彼を勧誘して貰う事。
殿下には相当優秀だと嘘をついている。
そうでもしないとこのお人は側に人を寄せ付けないだろうから。
「勿論覚えているさ。ルドルフが珍しくご執心の婚約者の兄だろう」
何時になく含みのある言い方で僕の方を見るアレンデル殿下。
「はい。ですが以前にも申上げましたが、彼は僕のものですので」
何せ、エドは僕の為に男を捨てたのだ。
男色家で名を馳せてしまっているアレンデル殿下の餌食になどさせない。
「分かっているよ」
肩を竦めて同意してくれるアレンデル殿下。
「君こそ、婚約者に不誠実だとは思わないのかい?エドワードは彼女の兄なのだろう?」
勿論殿下から注意されなくても判っている。
けど、エドは……エドワードは僕の為に男を捨てたのだ。
もう彼にはこの先奥さんを貰って子供を作り普通の家庭を作ると言う、その普通の幸せを掴む選択肢は僅かしか残されていないのだ。(つまり、連れ子か養子だ)
だが、エドの気持ちはどうなる?男ならあの兄妹二人の面倒を見る位の気概は必要だろう。
だって、あんなに優しいエドが妹を蔑ろにするはずがない。
「僕が二人の面倒は見ますよ。それが僕なりのけじめですから」
僕の言葉にアレンデル殿下はあからさまに眉間に皺を寄せた。
「ルドルフにはめずらしくゲスな回答だね。まぁ良いよ。私もその『エド』と言う彼には確認しなければならない事があるからね」
何やら思考に落ちて行くアレンデル殿下。
年相応の方ではないのは昔から知っている。
彼がもしもう少し早く生まれたなら。
そんな事を言っている貴族の多い事。
しかし、3年位前から突然殿下のそのような噂は聞かなくなった。
代わりに「美男子だけを侍らせている」とか「女性に興味がない」など、あまり良くない噂が広がっている。
しかし、殿下はその噂を容認している節がある。
敢えて噂を流させているのか?
そう振る舞ってさえいるように思えるのだ。
その最もたるや、彼の側近達だ。
自分で言うのもなんだが、見目麗しい者達だけで固められている。
「ふ~ん。じゃあ、ルドルフがもしその婚約者を捨てても良いっていうのなら私が貰っちゃおうかな」
クスクスと笑いながらそんな事を提案して来る殿下。
「ご冗談を」
そう言って牽制しておく。
何処までが本気で何処からが冗談か分からない人だ、故に下手な事が言えない。
「では、僕はそろそろ戻ります。アレンデル殿下。会場でお会い致しましょう」
だから、それだけを言って退出して来たのだ。
ーーーーーーー
姉上の所から帰って来たエリスを見た時。
自分の気持ちに気付かされた。
美しく装われたその姿。
「夜会なのにって、薄化粧を叱られちゃいました」
テヘと笑うエリス。
通り過ぎる男達全てが振り返り、足を止めて行く。
「何処のご令嬢だ」とか「天使だ」とか「まさかルドルフ様の婚約者か?」とか「女に興味がない振りをして上手くやったよな」とか。
よし。
最後に言ったヤツの顔は覚えたからな。
しかし、改めてエリスを見るとあまりにも綺麗で、それでいて可愛くて胸が締め付けられるようだ。
何なんだこの思いは……。
……。
まさかこれが俗に聞くあれか?あれなのか?
今なら分かる。
今日初めて会った時からエリスに惹かれているんだ。
初顔合わせは婚約事態が不本意だった為にそう言う色眼鏡で見てしまっていたのだ。
綺麗だけど可愛い。
もろ僕好みだ。
『なんて事だ。僕はエリスとエド兄妹二人を愛してしまったのだ。なんて罪なんだろう』
しかし、今までの彼女の言動と己の今までの所業が更に己の首を締める。
胸が苦しくって思わずエリスを抱き締めた。
エドと同じ匂いに頭が痺れるようだ。
本来なら婚約者のエリスを取るべきなのだろうが、何せエドは初恋の君だし、それに彼は僕の為に男を捨てたのだ。
簡単に「じゃあそう言う事で」とは忘れられない。
いや、忘れてはならないのだ。
それに、きっとエリスは僕に嫌われていると思っている。
いや、実際にさっきまでは僕もエリスを嫌いだと思っていたくらいだ。
だから『エリスは僕が嫌いだと』そう考えた方が普通だ。
小さく柔らかなエリス。
自分の気持ちに気付いた今ならアレンデル殿下に渡す気は失せた。
しかし、今の自分はエリスとエドの間で揺れ動くのみ。
どちらも選べないけど、どちらも欲しい。
なんて欲深いのか。
アレンデル殿下にゲス呼ばわりされようともこの気持ちは消えないだろう。
「アレンデル殿下、今日は宜しくお願い致しますね」
勿論エドの事だ。
彼を勧誘して貰う事。
殿下には相当優秀だと嘘をついている。
そうでもしないとこのお人は側に人を寄せ付けないだろうから。
「勿論覚えているさ。ルドルフが珍しくご執心の婚約者の兄だろう」
何時になく含みのある言い方で僕の方を見るアレンデル殿下。
「はい。ですが以前にも申上げましたが、彼は僕のものですので」
何せ、エドは僕の為に男を捨てたのだ。
男色家で名を馳せてしまっているアレンデル殿下の餌食になどさせない。
「分かっているよ」
肩を竦めて同意してくれるアレンデル殿下。
「君こそ、婚約者に不誠実だとは思わないのかい?エドワードは彼女の兄なのだろう?」
勿論殿下から注意されなくても判っている。
けど、エドは……エドワードは僕の為に男を捨てたのだ。
もう彼にはこの先奥さんを貰って子供を作り普通の家庭を作ると言う、その普通の幸せを掴む選択肢は僅かしか残されていないのだ。(つまり、連れ子か養子だ)
だが、エドの気持ちはどうなる?男ならあの兄妹二人の面倒を見る位の気概は必要だろう。
だって、あんなに優しいエドが妹を蔑ろにするはずがない。
「僕が二人の面倒は見ますよ。それが僕なりのけじめですから」
僕の言葉にアレンデル殿下はあからさまに眉間に皺を寄せた。
「ルドルフにはめずらしくゲスな回答だね。まぁ良いよ。私もその『エド』と言う彼には確認しなければならない事があるからね」
何やら思考に落ちて行くアレンデル殿下。
年相応の方ではないのは昔から知っている。
彼がもしもう少し早く生まれたなら。
そんな事を言っている貴族の多い事。
しかし、3年位前から突然殿下のそのような噂は聞かなくなった。
代わりに「美男子だけを侍らせている」とか「女性に興味がない」など、あまり良くない噂が広がっている。
しかし、殿下はその噂を容認している節がある。
敢えて噂を流させているのか?
そう振る舞ってさえいるように思えるのだ。
その最もたるや、彼の側近達だ。
自分で言うのもなんだが、見目麗しい者達だけで固められている。
「ふ~ん。じゃあ、ルドルフがもしその婚約者を捨てても良いっていうのなら私が貰っちゃおうかな」
クスクスと笑いながらそんな事を提案して来る殿下。
「ご冗談を」
そう言って牽制しておく。
何処までが本気で何処からが冗談か分からない人だ、故に下手な事が言えない。
「では、僕はそろそろ戻ります。アレンデル殿下。会場でお会い致しましょう」
だから、それだけを言って退出して来たのだ。
ーーーーーーー
姉上の所から帰って来たエリスを見た時。
自分の気持ちに気付かされた。
美しく装われたその姿。
「夜会なのにって、薄化粧を叱られちゃいました」
テヘと笑うエリス。
通り過ぎる男達全てが振り返り、足を止めて行く。
「何処のご令嬢だ」とか「天使だ」とか「まさかルドルフ様の婚約者か?」とか「女に興味がない振りをして上手くやったよな」とか。
よし。
最後に言ったヤツの顔は覚えたからな。
しかし、改めてエリスを見るとあまりにも綺麗で、それでいて可愛くて胸が締め付けられるようだ。
何なんだこの思いは……。
……。
まさかこれが俗に聞くあれか?あれなのか?
今なら分かる。
今日初めて会った時からエリスに惹かれているんだ。
初顔合わせは婚約事態が不本意だった為にそう言う色眼鏡で見てしまっていたのだ。
綺麗だけど可愛い。
もろ僕好みだ。
『なんて事だ。僕はエリスとエド兄妹二人を愛してしまったのだ。なんて罪なんだろう』
しかし、今までの彼女の言動と己の今までの所業が更に己の首を締める。
胸が苦しくって思わずエリスを抱き締めた。
エドと同じ匂いに頭が痺れるようだ。
本来なら婚約者のエリスを取るべきなのだろうが、何せエドは初恋の君だし、それに彼は僕の為に男を捨てたのだ。
簡単に「じゃあそう言う事で」とは忘れられない。
いや、忘れてはならないのだ。
それに、きっとエリスは僕に嫌われていると思っている。
いや、実際にさっきまでは僕もエリスを嫌いだと思っていたくらいだ。
だから『エリスは僕が嫌いだと』そう考えた方が普通だ。
小さく柔らかなエリス。
自分の気持ちに気付いた今ならアレンデル殿下に渡す気は失せた。
しかし、今の自分はエリスとエドの間で揺れ動くのみ。
どちらも選べないけど、どちらも欲しい。
なんて欲深いのか。
アレンデル殿下にゲス呼ばわりされようともこの気持ちは消えないだろう。
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