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「ではエリス様。此方へ」
侍女さんに促され鏡の前までやって来る。
椅子にちょこんと座れば両脇からメイク道具を持った侍女さんに挟まれニコリと微笑まれた。
「睫毛をもう少し増やして、アイラインを入れましょうか。目を閉じて下さいね」
言われた通りに目を瞑るとパタパタと目以外のの所へも筆が乗る。
「色味は此方で如何でしょうか?」
「そうね。此方の方が良いんじゃなくって」
カナリア様と侍女さん達があ~だこ~だと楽しそうに化粧品を選んでは私の顔にメイクを施して行く。
「あのバカは女を軽蔑している所もあるからギャフンと言わせなきゃね。こっちの色も少し乗せてやって」
女を軽蔑って……だから婚約者の私にも態度悪いのかしら?
悪役令嬢抜きにしても最初から私の印象が悪いみたいだし。
「あの子、エリスにも態度悪いでしょう?昔から私達姉妹を冷めた目で見て来るのよね。何か言われたら言いなさい。何時ものように凝らしめてやるから」
カナリア様はそう言うとポンと私の肩に手を置いた。
「エリス。スッゴク綺麗よ。フフフ、これはあの子の顔が見物ね。フフフ」
妖しく笑うカナリア様。
鏡の中では「これいったい誰だ?」と思う程の美女がいた。
流石に王太子妃殿下付きの侍女なだけありメイク技術が神がかっていた。
「ありがとうございます。勉強になりました」
そう言ってお礼を述べると「フフフ面白い子」と何故か抱き締められる。
抱き癖があるのはお家芸なのか?
そんな事を思った。
包容が終わるとカナリア様が「エドの姿も楽しみにしてますからね」と楽しそうに微笑む。
「はい。宜しくお願い致します」
勿論この化粧を落とすのをお願いしているのだ。
こんな化粧でエドになったらそれこそ某劇団になるよね。
まぁ、好きですけどね。
ーーーーーーー
侍女さんの道案内で無事にルドルフ様と合流した私は、今現在絶賛混乱中です。
それと言うのも、私を見たルドルフ様が「胸が」と言って苦しみだしたからです。
「あの、ルドルフ様。如何なさいましたか?」
苦しそうにされるルドルフ様。
ギュッと胸を押さえて屈まれる姿は本当に痛々しい。
こんなのもう風邪の症状じゃない。
もしかしたら、心臓の発作かもしれない。
それも緊急を要するようなやつだよ。
どうしよう。
「ルドルフ様、今直ぐに医務室に行きましょう」
そう進言するも
「いや……大丈夫」
と私の肩に手を置くルドルフ様。
「少し落ち着かせて欲しいんだ。多分君の匂いを嗅いだら落ち着くから」
切なそうにそう言うルドルフ様。
しかし、
「は?」
何ですか?
その変態発言は?
勿論そんな事は言わない。
言ったら変なフラグが立つ。
代わりにガッシリと抱き締められて私の首筋にに顔を埋めるルドルフ様。
「あぁ。エドと同じ匂いだ……落ち着く」
意味が分かりません。
私は何ですか?
ラベンダーとかカモミールとか?
精神安定剤?
まぁ、この場合エドの代替えなのでしょうが。
私の首元で私の匂いを嗅ぐルドルフ様。
大分変態チックです。
挙げ句「エド、エド」と囁くものだから尚キモい。
通りがかる人達から絶対変な目で見られているよ。
ほら、あそこに立っている紳士もガン見しているから。
正直もう恥ずかしい。
大体にして、この距離は男女の距離として如何なものか?
今は男装しているのではなく女の姿のままなのだから。
「エド……エド……」
そして、再びお兄様の事を呼ぶルドルフ様。
何故婚約者の私を抱き締めてお兄様のお名前を連呼するのだろうか?
『そんなにお兄様が良いのかよ』
頭の奥で辛辣にそう思っていると、ルドルフ様にギュッと更に強く抱き締められる。
くっ苦しい。
「ルドルフ様、そろそろ離して下さい」
押し返すように手でルドルフ様を押すと
「ごめん。でも、ありがとう。お陰で落ち着いたよ」
と微笑まれるルドルフ様。
「それは良かったです。では、これから医務室に行きましょうか」
顔色も大丈夫そうだけど、念のため。
しかし、ルドルフ様は首を横に振る。
「いや、このまま会場へ行こう」
そうして手を取られた私はルドルフ様のエスコートで会場入りを果たすのだった。
侍女さんに促され鏡の前までやって来る。
椅子にちょこんと座れば両脇からメイク道具を持った侍女さんに挟まれニコリと微笑まれた。
「睫毛をもう少し増やして、アイラインを入れましょうか。目を閉じて下さいね」
言われた通りに目を瞑るとパタパタと目以外のの所へも筆が乗る。
「色味は此方で如何でしょうか?」
「そうね。此方の方が良いんじゃなくって」
カナリア様と侍女さん達があ~だこ~だと楽しそうに化粧品を選んでは私の顔にメイクを施して行く。
「あのバカは女を軽蔑している所もあるからギャフンと言わせなきゃね。こっちの色も少し乗せてやって」
女を軽蔑って……だから婚約者の私にも態度悪いのかしら?
悪役令嬢抜きにしても最初から私の印象が悪いみたいだし。
「あの子、エリスにも態度悪いでしょう?昔から私達姉妹を冷めた目で見て来るのよね。何か言われたら言いなさい。何時ものように凝らしめてやるから」
カナリア様はそう言うとポンと私の肩に手を置いた。
「エリス。スッゴク綺麗よ。フフフ、これはあの子の顔が見物ね。フフフ」
妖しく笑うカナリア様。
鏡の中では「これいったい誰だ?」と思う程の美女がいた。
流石に王太子妃殿下付きの侍女なだけありメイク技術が神がかっていた。
「ありがとうございます。勉強になりました」
そう言ってお礼を述べると「フフフ面白い子」と何故か抱き締められる。
抱き癖があるのはお家芸なのか?
そんな事を思った。
包容が終わるとカナリア様が「エドの姿も楽しみにしてますからね」と楽しそうに微笑む。
「はい。宜しくお願い致します」
勿論この化粧を落とすのをお願いしているのだ。
こんな化粧でエドになったらそれこそ某劇団になるよね。
まぁ、好きですけどね。
ーーーーーーー
侍女さんの道案内で無事にルドルフ様と合流した私は、今現在絶賛混乱中です。
それと言うのも、私を見たルドルフ様が「胸が」と言って苦しみだしたからです。
「あの、ルドルフ様。如何なさいましたか?」
苦しそうにされるルドルフ様。
ギュッと胸を押さえて屈まれる姿は本当に痛々しい。
こんなのもう風邪の症状じゃない。
もしかしたら、心臓の発作かもしれない。
それも緊急を要するようなやつだよ。
どうしよう。
「ルドルフ様、今直ぐに医務室に行きましょう」
そう進言するも
「いや……大丈夫」
と私の肩に手を置くルドルフ様。
「少し落ち着かせて欲しいんだ。多分君の匂いを嗅いだら落ち着くから」
切なそうにそう言うルドルフ様。
しかし、
「は?」
何ですか?
その変態発言は?
勿論そんな事は言わない。
言ったら変なフラグが立つ。
代わりにガッシリと抱き締められて私の首筋にに顔を埋めるルドルフ様。
「あぁ。エドと同じ匂いだ……落ち着く」
意味が分かりません。
私は何ですか?
ラベンダーとかカモミールとか?
精神安定剤?
まぁ、この場合エドの代替えなのでしょうが。
私の首元で私の匂いを嗅ぐルドルフ様。
大分変態チックです。
挙げ句「エド、エド」と囁くものだから尚キモい。
通りがかる人達から絶対変な目で見られているよ。
ほら、あそこに立っている紳士もガン見しているから。
正直もう恥ずかしい。
大体にして、この距離は男女の距離として如何なものか?
今は男装しているのではなく女の姿のままなのだから。
「エド……エド……」
そして、再びお兄様の事を呼ぶルドルフ様。
何故婚約者の私を抱き締めてお兄様のお名前を連呼するのだろうか?
『そんなにお兄様が良いのかよ』
頭の奥で辛辣にそう思っていると、ルドルフ様にギュッと更に強く抱き締められる。
くっ苦しい。
「ルドルフ様、そろそろ離して下さい」
押し返すように手でルドルフ様を押すと
「ごめん。でも、ありがとう。お陰で落ち着いたよ」
と微笑まれるルドルフ様。
「それは良かったです。では、これから医務室に行きましょうか」
顔色も大丈夫そうだけど、念のため。
しかし、ルドルフ様は首を横に振る。
「いや、このまま会場へ行こう」
そうして手を取られた私はルドルフ様のエスコートで会場入りを果たすのだった。
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