きっと私は悪役令嬢

麻生空

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王宮に着くとルドルフ様は直ぐに王太子妃殿下へ伝言を頼んだ。

ものの10分程で返事が来る。
流石は姉弟だけあり融通が効くようである。

「迎えを寄越すから直ぐに来てくれて大丈夫だそうだ。流石に男の僕ではこんな時間に伺うのは良くないからね。エリス、一人でも行けますか?」
確かに、いくら姉弟だからと言っても王太子妃の部屋へ突然こんな時間に男の人が訪問するのは不味いよね。
「勿論、大丈夫ですよ。気になさらないで下さい」
大体いつも私のことなんて気にもしないくせに、どういう風の吹き回しか?

「僕はその間に第二王子殿下に挨拶して来るからゆっくり化粧を直して貰って大丈夫だから」
 いやいや、流石に夜会を控えたこの時間に王太子妃殿下の部屋でゆっくりなんてしたらどんな嫌がらせかと思われるよ。
もしかしてそれが・・・狙い?
後で常識のない女とか言う為にとか?
……。
何処まで私を陥れたいのか。

そんな事を考えていると王太子妃殿下付きの侍女が迎えに現れた。

故に、どんな意図があっての言葉だったのか考える余裕もなく王宮の入口で一旦別れる事になった私達。

私は王太子妃殿下付きの侍女に連れられて王太子妃殿下の部屋へと移動した。

ルドルフ様の家族とは初対面になる。

ドキドキするなぁ。

侍女が扉の前で入室の挨拶をする。

「どうぞ入って」

鈴を転がしますような美しい声が聞こえる。

「失礼致します」

そうして入った部屋はとても華美で居心地が悪かった。

『あのテーブルいくらするの?あのツボは?』

目の前の高級品に眩暈がする。
何せ、先日来客楊の部屋をリフォームする時に色々な家具等を見学した為に物を見ると値段が頭に浮かぶのだ。
肝心の王太子妃殿下は鏡の前で最終チェックをしている様子だ。

しかし、ここで失敗は許されない。

「お初にお目にかかります王太子妃殿下。わたくしリトラー公爵が娘エリスでございます」

そう言って恭しくカーテーシーをする。

家を出る前にルドルフ様にした挨拶以上に丁寧に挨拶をした。

「まぁ、貴女がルドルフの婚約者のエリスね。初めまして、私はルドルフの姉のカナリアよ。顔を見せて」

頭を上げて良く王太子妃殿下を観察する。
ルドルフ様と良く似た綺麗な美女がそこには居た。
さすが王太子が堕ちるだけあり絶世の美女。
それを分かっているかのような自信に満ちた瞳。

王太子妃殿下が体を動かす度にふんだんにあしらわれたシフォンの生地がサラサラと音を立てて揺らめいている。
とても幻想的で美しいドレス
金で縁取りされた白の生地はスカートの部分から下へ行く程に青色になるグラデーションカラーだ。

そこにも、至る所に金糸で蔦のような刺繍が施されており、とても幻想的な雰囲気だ。

私の来ているドレスのさらにグレードアップした装いになっている。

流石ミランダさん。
変態だけど貴族の上下関係を熟知したような服の仕立てだ。
これなら王太子妃殿下の機嫌は損ねない。
私はにこやかに微笑むと
「ありがとうございます」
とお礼を述べた。
「所でエリス。その涙の後はもしやルドルフに虐められたのではないでしょうね?」
きらびやかな七色に輝く扇を開いて王太子妃殿下は目を細めながら問い掛ける。

「滅相もございません。初めての王宮での夜会に緊張してしまい。こんな不作法な真似をしてしまい申し訳ございません」

まさか、本当の事は言えない。
私がルドルフ様に嫌われていて、悪役令嬢だからその内婚約破棄されると言うことを。
「そう?貴女そんな玉には見えないんだけど、まぁ良いわ。わたくし貴女を気に入ったわ。これからはお姉様と呼ぶ事を許します。宜しくお願いね。エリス」
ニコリと微笑まれる王太子妃殿下。
「はい。お姉様」
一応ご要望通りに「お姉様」とは言っておいた。

その後、素早い侍女さん達のお陰で更に綺麗にメイクをして頂いた。

「大丈夫よ。大体の事情はミランダから話は聞いているから。でも、折角の夜会。薄化粧じゃ勿体無いわよね」

そう言ってウインクされた。

「ありがとうございます」

「そうそう。貴女の秘密はルドルフは知らないから安心して」

満面の笑みでそう言う王太子妃殿下。
心無しか口角が微妙に上がっている。
「だって、その方が面白いものが見れるでしょう。オホホホ」

軽快に笑う王太子妃殿下。
ちょっと一癖も二癖もありそうなお姉様。
こんなお姉様と暮らしていたなんて、色々な意味で少しルドルフ様に同情してしまった。
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