きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「ですので、あまり無理をせず大人しくされた方が宜しいか。本日はとても残念ですが、ダンスはこの次で「ダメだ」」

言葉が全て終わらない内にルドルフ様の声が被った。
それも、凄く焦ったような声で。

「貴族には貴族の付き合いがある。たかが風邪ごときで公爵家の嫡男がそんな軟弱な事は言っていられない。ファーストダンスは婚約者のいる貴族の義務だ」

そんな熱意を入れなくても……。
それに、別にファーストダンスなんて踊らなくったって誰も何も言わないと思うんだけどなぁ。

「それに、格式高い王宮の夜会のファーストダンスのパートナーは家族か婚約者と決まっている」

なんでそんなに力説するかな……そんなの知っているけど。

でも、乙女ゲームの場合は言ってはなんだけど悪役令嬢なんて婚約者にファーストダンス処かエスコートもして貰えないのがセオリーだよね。
挙げ句に断罪イベントとか。

べ……別に私は悪役令嬢だと思った時から覚悟はしているんだから良いんだけど。

「えっと……気にしなくて良いですよ。私そう言う事は全然気にしませんから、律儀に私に義理立てしなくても良いんじゃないでしょうか。それに、もしルドルフ様が他の令嬢をエスコートしても、尚且つファーストダンスを踊られたとして……」

私の言葉が終わらない内に今までにない位ルドルフ様の機嫌が悪くなった。

そりゃぁもう氷点下まで空気が凍ったのかと思う程に。
いや、物理的に凍って来ていないかしら?
心無しか床から冷気がほとばしっている。 
多分ルドルフ様は氷魔法に適性があるのだろう。
いや、そんな事を考えている場合じゃない。
なにか私、ルドルフ様の地雷踏んだ?

「ファーストダンスがなに?ねぇ、エリス」

えっと、先程までの『エリス嬢』呼びはどうなったのでしょうか?

何故いきなり呼び捨て?

まさか、既に断罪イベントが始まっている?

ファーストダンスが終わった後に別行動しようなんて、きっと意中のヒロインの元へ行くためで、きっと殿下はダシに使ったんであって……あれ……頭が……回転しない。

「あっ……あの……わた……し……」

覚悟はしていたはずなのに、冷たい眼差しで見つめられると何も言えない。

カタカタと震える肩。

決して寒い訳だけが原因じゃない。
治まらない震え。

「……ぅっ……」

何で何も言えないのかしら……あれほど断罪イベントはイメージしていたはずなのに。
こんな初盤で来るとは思っていなかったから?

思わず目を瞑るとポンポンと頭にルドルフ様の手が乗った。

「ごめん。責めている訳じゃないんだ。あーっ!一体何がしたいんだ。自分の事が全然分からない。だから……その……泣くなエリス」

ツーっと流れた涙に初めて気付いた。

「折角の化粧が落ちてしまったな。悪い。夜会に行く前に姉上の所で直して貰おう。なっ」

そっと私の頬に添えられたルドルフ様の手がほんのりと温かかった。
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