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あれから再び沈黙が訪れた馬車の中で、私は乙女ゲームの事を考えていた。
ルドルフ様の他の攻略対象。
つまり、第二王子の側近達だ。
どう対応して良いのか。
悩む所でもある。
何せ、本当に思い出せないのが痛い。
ルドルフ様の事だって顔を見るまで思い出さなかったんだし。
……?
あれ?
もしかして、顔を見れば思い出すのかもしれない。
ルドルフ様に他の人に預けられる前に、是非とも第二王子を見ておいた方が良いかもしれないわね。
やっぱり情報は大事だし、それが、自身の進退に関わる事なら尚更だ。
よし。
ファーストダンスが終わったら話してみよう。
そう思ってルドルフ様の方を見た。
流石は攻略対象なだけあって眼福ものなんだよね。
見ていて飽きないわ。
外を見ているルドルフ様。
多分ゲームの攻略対象で言えば好みの容姿かもしれない。
しかし、ただそれだけだ。
大体、婚約者の私を嫌いなのは百も承知なんだから。
でも、お兄様の事は友人位には思っていてくれているはず。
お兄様にはあんなに優しいのに……それほど婚約者が嫌なのね。
そんなルドルフ様はさっきから不機嫌な顔を度々する。
お兄様が居なかった事に拗ねているのかしら、婚約者の私を無視して何時もエドをご指名だったしそんな子供みたいな行動に「フフフ可愛いものだなぁ」と思ってしまった。
かと言って邪魔な悪役令嬢である私に何かして来る訳でもないし。
じっとりと眺めていると視線に気付いたルドルフ様がこちらを見る。
「なに?」
「いえ、別に」
そう言ってニッコリとスマイルを顔に張り付ける。
困った時は笑顔に限る。
ただだしね。
通称『0円スマイル』だ。
すると、何故かルドルフ様は目を見開き、その後外を向かれてしまった。
心なしか耳が赤いような気もする。
まさかとは思いますが、あのブラック企業こと第二王子に良いようにこき使われて体調を崩されたのでわ?
前回の話を考えると13勤ですよね。
「ルドルフ様。耳が赤いようですが、もしやお体の調子がお悪いのではないですか?」
攻略対象と言っても生身の人間だ。
無理をすれば体調だって悪くなる。
その証拠に悪役令嬢の私だって風邪位はひくんだし。
すると、私の方を向いたルドルフ様は困ったような顔をする。
意外だが、今日は何時も見ないような顔が多い。
つまり、何時もと調子が違うと言う事ではないだろうか?
「実は、僕もそうかもしれないと先ほどから思っていました」
眉を提げてそんな事を言うルドルフ様。
捨てられた子犬のようで可愛らしいと思ってしまった。
「まぁ、そうでしたの」
まるで秘密を証すように話し出すルドルフ様は何故か瞳を潤ませている。
「動悸はするし、モヤモヤするし、顔が火照るし、イライラもする。これは何なのだろうか?」
真剣な眼差しで見つめて来るルドルフ様。
そんなの答えは簡単ですわ。
流石の攻略対象もこんな簡単な事に気付かないだなんて、なんてバカなのかしら。
目が潤んで熱があり動悸がする。
そんな症状は一つしかない。
「ルドルフ様。その症状には覚えがございます」
真剣な相手には真剣に対応しなければならない。
ましてや相手は病人。
私は至って真剣にルドルフ様を見た。
「本当か?して、その病名は?」
固唾を飲んで私の答えを待つルドルフ様。
私は得意気な顔になり答えを述べたのだ。
「急性上気道炎ですわ」
「急性上気道炎?」
ルドルフ様は初めてその言葉を聞いたように聞き返す。
「はい。良く聞く名前ですと『風邪』ですわね」
私の言葉に成る程と頷くルドルフ様。
「……やはり、そうか……」
ルドルフ様の他の攻略対象。
つまり、第二王子の側近達だ。
どう対応して良いのか。
悩む所でもある。
何せ、本当に思い出せないのが痛い。
ルドルフ様の事だって顔を見るまで思い出さなかったんだし。
……?
あれ?
もしかして、顔を見れば思い出すのかもしれない。
ルドルフ様に他の人に預けられる前に、是非とも第二王子を見ておいた方が良いかもしれないわね。
やっぱり情報は大事だし、それが、自身の進退に関わる事なら尚更だ。
よし。
ファーストダンスが終わったら話してみよう。
そう思ってルドルフ様の方を見た。
流石は攻略対象なだけあって眼福ものなんだよね。
見ていて飽きないわ。
外を見ているルドルフ様。
多分ゲームの攻略対象で言えば好みの容姿かもしれない。
しかし、ただそれだけだ。
大体、婚約者の私を嫌いなのは百も承知なんだから。
でも、お兄様の事は友人位には思っていてくれているはず。
お兄様にはあんなに優しいのに……それほど婚約者が嫌なのね。
そんなルドルフ様はさっきから不機嫌な顔を度々する。
お兄様が居なかった事に拗ねているのかしら、婚約者の私を無視して何時もエドをご指名だったしそんな子供みたいな行動に「フフフ可愛いものだなぁ」と思ってしまった。
かと言って邪魔な悪役令嬢である私に何かして来る訳でもないし。
じっとりと眺めていると視線に気付いたルドルフ様がこちらを見る。
「なに?」
「いえ、別に」
そう言ってニッコリとスマイルを顔に張り付ける。
困った時は笑顔に限る。
ただだしね。
通称『0円スマイル』だ。
すると、何故かルドルフ様は目を見開き、その後外を向かれてしまった。
心なしか耳が赤いような気もする。
まさかとは思いますが、あのブラック企業こと第二王子に良いようにこき使われて体調を崩されたのでわ?
前回の話を考えると13勤ですよね。
「ルドルフ様。耳が赤いようですが、もしやお体の調子がお悪いのではないですか?」
攻略対象と言っても生身の人間だ。
無理をすれば体調だって悪くなる。
その証拠に悪役令嬢の私だって風邪位はひくんだし。
すると、私の方を向いたルドルフ様は困ったような顔をする。
意外だが、今日は何時も見ないような顔が多い。
つまり、何時もと調子が違うと言う事ではないだろうか?
「実は、僕もそうかもしれないと先ほどから思っていました」
眉を提げてそんな事を言うルドルフ様。
捨てられた子犬のようで可愛らしいと思ってしまった。
「まぁ、そうでしたの」
まるで秘密を証すように話し出すルドルフ様は何故か瞳を潤ませている。
「動悸はするし、モヤモヤするし、顔が火照るし、イライラもする。これは何なのだろうか?」
真剣な眼差しで見つめて来るルドルフ様。
そんなの答えは簡単ですわ。
流石の攻略対象もこんな簡単な事に気付かないだなんて、なんてバカなのかしら。
目が潤んで熱があり動悸がする。
そんな症状は一つしかない。
「ルドルフ様。その症状には覚えがございます」
真剣な相手には真剣に対応しなければならない。
ましてや相手は病人。
私は至って真剣にルドルフ様を見た。
「本当か?して、その病名は?」
固唾を飲んで私の答えを待つルドルフ様。
私は得意気な顔になり答えを述べたのだ。
「急性上気道炎ですわ」
「急性上気道炎?」
ルドルフ様は初めてその言葉を聞いたように聞き返す。
「はい。良く聞く名前ですと『風邪』ですわね」
私の言葉に成る程と頷くルドルフ様。
「……やはり、そうか……」
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