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ルドルフ視点8
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エドが寝てから僕はエリス……つまり、婚約者の部屋へと向かっていた。
本当は赤い印の鉛筆を引いてしまったのだが、エドはまだ本調子じゃないから自分のベッドの方が良いと思い魔法でちょっと細工をした。
まぁ、そのせいでエリスの部屋で寝る事になったのだが……。
侍女に案内されて着いた部屋。
「それではゆっくりとお休み下さい」
そう言ってお辞儀をして去って行った。
僕はため息を吐きながらエリスの部屋の扉を開いた。
僕の嫌いな婚約者の部屋だ。
開いた先の部屋は淡い乳白色の壁に落ち着いた可愛い家具が置かれた部屋だった。
「もっと女の子らしい部屋を想像していたんだが……」
そう、自身の姉三人の部屋を思い浮かべる。
一面ピンクの部屋とか。
ギラギラした宝飾品が並べられた部屋とか。
兎に角、そんな女の部屋を想像していたのだ。
ベッドだって、乙女らしくレースふんだんのピンクと白のベッドをイメージしていたが、目の前にあるのは白とベージュを基調とした簡素な物だ。
家具だって、良く見れば本棚と机とクローゼットとそして二人用のテーブルセット位しか置かれていない。
「いつも彼女は何を考えて過ごしているのだろう?」
多分、これが初めて自身の婚約者に対して興味を示した瞬間だと思う。
本棚に並べられた本は上に恋愛小説が並んでおり、下の段は意外と専門書だった。
国外の物なども点在しており、彼女の博識具合に初めて触れたようにも思った。
机の椅子を引くと少しだけ空いた引き出しに目が行く。
「何だろう」
悪いとも思ったが、興味の方が勝ってしまった。
すっと引き出されたそれはスケッチブックだ。
「絵も嗜むのか?」
どれだけ多趣味なのだろうか?
そう思い、スケッチブックを開いて手が止まる。
「僕?」
そこに描かれていたのは、決して彼女の前では見せたことのない僕の顔だった。
彼は知らない。
それがエリスが思い出したルドルフの設定資料集のデッサンだと言う事を。
「こんな顔で彼女を見た事なんてないのに……」
何か、自身が覗き見されているような変な感覚がする。
いつ見られたのだろうか?
それとも、これは全て彼女の想像?
デッサンの脇に走り書きのような文字が書かれているが、さっぱり読めない。
何処の言葉なのだろうか?
ペラペラと捲られるスケッチブック。
はっきり言って始末したい物件だった。
けど、それはいけない。
僕が勝手にスケッチブックを見たのがバレてしまう。
気を取り直してスケッチブックを引き出しに仕舞うと、その脇にアルバムらしき物を発見した。
「もしかしてエドが写っているかも」
幼い日のエドが見たいと思い、取り出して開いて見てガッカリする。
家族で撮った写真にも、エリスが遊んでいる所にもエドワードは写っていないのだ。
その代わりに、エドワードに少し面差しが似た男の子は写っているが、何せあの繊細さもなければ男らしい雰囲気の子供だった。
ガッカリして写真を戻して、寝る為にベッドへと移動した。
あの女が寝ているベッドだと思うと気が引けたが、明日の事を考えるとエドとの楽しい一時を万全にする為にとやむ終えずベッドへと入った。
そして、何故かエドの良い香りがする事に気付いた。
何故エドの香りが?
やはり兄妹だから匂いも似るのか?
「スぅーハァースゥーはぁ」
僕はその夜、寝落ちするまでエドの香りを堪能した。
勿論、夢ではエドに抱き締められると言う幸せな夢を見たのは言うに難い。
幸せな夢だった。
本当は赤い印の鉛筆を引いてしまったのだが、エドはまだ本調子じゃないから自分のベッドの方が良いと思い魔法でちょっと細工をした。
まぁ、そのせいでエリスの部屋で寝る事になったのだが……。
侍女に案内されて着いた部屋。
「それではゆっくりとお休み下さい」
そう言ってお辞儀をして去って行った。
僕はため息を吐きながらエリスの部屋の扉を開いた。
僕の嫌いな婚約者の部屋だ。
開いた先の部屋は淡い乳白色の壁に落ち着いた可愛い家具が置かれた部屋だった。
「もっと女の子らしい部屋を想像していたんだが……」
そう、自身の姉三人の部屋を思い浮かべる。
一面ピンクの部屋とか。
ギラギラした宝飾品が並べられた部屋とか。
兎に角、そんな女の部屋を想像していたのだ。
ベッドだって、乙女らしくレースふんだんのピンクと白のベッドをイメージしていたが、目の前にあるのは白とベージュを基調とした簡素な物だ。
家具だって、良く見れば本棚と机とクローゼットとそして二人用のテーブルセット位しか置かれていない。
「いつも彼女は何を考えて過ごしているのだろう?」
多分、これが初めて自身の婚約者に対して興味を示した瞬間だと思う。
本棚に並べられた本は上に恋愛小説が並んでおり、下の段は意外と専門書だった。
国外の物なども点在しており、彼女の博識具合に初めて触れたようにも思った。
机の椅子を引くと少しだけ空いた引き出しに目が行く。
「何だろう」
悪いとも思ったが、興味の方が勝ってしまった。
すっと引き出されたそれはスケッチブックだ。
「絵も嗜むのか?」
どれだけ多趣味なのだろうか?
そう思い、スケッチブックを開いて手が止まる。
「僕?」
そこに描かれていたのは、決して彼女の前では見せたことのない僕の顔だった。
彼は知らない。
それがエリスが思い出したルドルフの設定資料集のデッサンだと言う事を。
「こんな顔で彼女を見た事なんてないのに……」
何か、自身が覗き見されているような変な感覚がする。
いつ見られたのだろうか?
それとも、これは全て彼女の想像?
デッサンの脇に走り書きのような文字が書かれているが、さっぱり読めない。
何処の言葉なのだろうか?
ペラペラと捲られるスケッチブック。
はっきり言って始末したい物件だった。
けど、それはいけない。
僕が勝手にスケッチブックを見たのがバレてしまう。
気を取り直してスケッチブックを引き出しに仕舞うと、その脇にアルバムらしき物を発見した。
「もしかしてエドが写っているかも」
幼い日のエドが見たいと思い、取り出して開いて見てガッカリする。
家族で撮った写真にも、エリスが遊んでいる所にもエドワードは写っていないのだ。
その代わりに、エドワードに少し面差しが似た男の子は写っているが、何せあの繊細さもなければ男らしい雰囲気の子供だった。
ガッカリして写真を戻して、寝る為にベッドへと移動した。
あの女が寝ているベッドだと思うと気が引けたが、明日の事を考えるとエドとの楽しい一時を万全にする為にとやむ終えずベッドへと入った。
そして、何故かエドの良い香りがする事に気付いた。
何故エドの香りが?
やはり兄妹だから匂いも似るのか?
「スぅーハァースゥーはぁ」
僕はその夜、寝落ちするまでエドの香りを堪能した。
勿論、夢ではエドに抱き締められると言う幸せな夢を見たのは言うに難い。
幸せな夢だった。
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