19 / 97
16 夢の中で
しおりを挟む
うっすらと靄のような物が漂っている。
コツコツと私に近づく足音。
気付けば自宅の庭にいた。
そこは小さい時に遊んだ庭。
色々な遊具が置かれており、私は一人ブランコに乗っていた。
「幼い頃は良くここでお兄様と遊んだな」
昔からわんぱくだった私はお兄様に引っ付いて遊んでいた。
だけど、一度木から落ちてしまった私は母の強い要望で危ない事をする事を禁止されたのだ。
だから馬にも乗れないし、剣の稽古も出来なかったので見よう見真似で一人でやっていた。
そんな時にお兄様がこっそり剣を教えてくれたり、たまにお馬にも乗せてくれた。
そんな映像が目の前で繰り広げられている。
「懐かしいなぁ」
心配性なお母様。
教育には厳しいけど甘えさせてくれるお父様。
そして、いつも私に優しいお兄様。
大切な私の家族。
こんなに優しい家族を悪役令嬢のバッドエンドに巻き込むなんて出来ないわ。
ゆっくりと場面は変わって行き。
やがて映像は現在を移す。
私の我が儘でお兄様もお母様もお父様のお仕事に着いて行って今はいない。
こんなに寂しいなんて思わなかった。
「お兄様……」
ユラユラとブランコを揺らしていると
「こんなに所に何処の子供がいるのかと思えば」
お兄様が笑いながら私を見ている。
「エリスは18なのに、まだブランコで遊ぶ歳?まだまだ私の可愛い妹はお子ちゃまだねぇ」
悪戯っぽいお兄様の声。
「私はもうお子ちゃまじゃないよ」
何時もの慣れあい。
嬉しい。
「男装したいだなんて、私に成り済ましてルドルフ殿と兄弟ごっこ?」
何故こんな嬉しい時にルドルフ様の事を言われるのか。
彼は攻略対象で悪役令嬢をヒロインと共に糾弾する存在。
「それは、この世界が乙女ゲームで、私が悪役令嬢だから……」
本当はこんな事したい訳じゃない。
全てはバッドエンド回避の為にしている事だ。
大体、ルドルフ様の第一印象は最悪だった。
機嫌が悪いのが目に見えるようで……。
第二王子の側近で見目麗しい貴公子との噂のルドルフ様。
楽しみにしていたはずの婚約者との初顔合わせは、前世との記憶も相まって無惨な結末だった。
あの初めて婚約者の女性を見るルドルフ様の目。
軽蔑の眼差し。
故に、自分が悪役令嬢なのではないか?と思い至ったのだ。
「エドワードに成り済まして、何かあったら逃げるの?全てを私のせいにして」
それは、自身の心の何処かで『お兄様にそう思われたらどうしよう』と思っていた事だ。
「そんなこと……しない。思ってもいない」
だって、私は破滅エンドしかないだろう悪役令嬢なのだから、家族を巻き込んでまでの破滅は望んでいない。
「だから……自分で責任を負うから許して……お兄様」
「私に成り済ましてルドルフ殿に嘘をついているのに?」
「ルドルフ様の事……私が責任持つから……」
だから
「全部、家族の為に私が……必ずお父様もお母様もそしてお兄様もお救い致します」
だから……
「だから……もう少し待っていて下さい。お兄様」
そう、それが私の思い。
全ては家族を守る為だ。
せめて、バッドエンドを迎えるのが私だけであるように、切に願って……。
すると、お兄様が微笑んだ。
「エリスは昔っから無茶をするから目が離せないんだ」
そう言って私の頭を撫でてくれた。
「お兄様……私……」
コツコツと私に近づく足音。
気付けば自宅の庭にいた。
そこは小さい時に遊んだ庭。
色々な遊具が置かれており、私は一人ブランコに乗っていた。
「幼い頃は良くここでお兄様と遊んだな」
昔からわんぱくだった私はお兄様に引っ付いて遊んでいた。
だけど、一度木から落ちてしまった私は母の強い要望で危ない事をする事を禁止されたのだ。
だから馬にも乗れないし、剣の稽古も出来なかったので見よう見真似で一人でやっていた。
そんな時にお兄様がこっそり剣を教えてくれたり、たまにお馬にも乗せてくれた。
そんな映像が目の前で繰り広げられている。
「懐かしいなぁ」
心配性なお母様。
教育には厳しいけど甘えさせてくれるお父様。
そして、いつも私に優しいお兄様。
大切な私の家族。
こんなに優しい家族を悪役令嬢のバッドエンドに巻き込むなんて出来ないわ。
ゆっくりと場面は変わって行き。
やがて映像は現在を移す。
私の我が儘でお兄様もお母様もお父様のお仕事に着いて行って今はいない。
こんなに寂しいなんて思わなかった。
「お兄様……」
ユラユラとブランコを揺らしていると
「こんなに所に何処の子供がいるのかと思えば」
お兄様が笑いながら私を見ている。
「エリスは18なのに、まだブランコで遊ぶ歳?まだまだ私の可愛い妹はお子ちゃまだねぇ」
悪戯っぽいお兄様の声。
「私はもうお子ちゃまじゃないよ」
何時もの慣れあい。
嬉しい。
「男装したいだなんて、私に成り済ましてルドルフ殿と兄弟ごっこ?」
何故こんな嬉しい時にルドルフ様の事を言われるのか。
彼は攻略対象で悪役令嬢をヒロインと共に糾弾する存在。
「それは、この世界が乙女ゲームで、私が悪役令嬢だから……」
本当はこんな事したい訳じゃない。
全てはバッドエンド回避の為にしている事だ。
大体、ルドルフ様の第一印象は最悪だった。
機嫌が悪いのが目に見えるようで……。
第二王子の側近で見目麗しい貴公子との噂のルドルフ様。
楽しみにしていたはずの婚約者との初顔合わせは、前世との記憶も相まって無惨な結末だった。
あの初めて婚約者の女性を見るルドルフ様の目。
軽蔑の眼差し。
故に、自分が悪役令嬢なのではないか?と思い至ったのだ。
「エドワードに成り済まして、何かあったら逃げるの?全てを私のせいにして」
それは、自身の心の何処かで『お兄様にそう思われたらどうしよう』と思っていた事だ。
「そんなこと……しない。思ってもいない」
だって、私は破滅エンドしかないだろう悪役令嬢なのだから、家族を巻き込んでまでの破滅は望んでいない。
「だから……自分で責任を負うから許して……お兄様」
「私に成り済ましてルドルフ殿に嘘をついているのに?」
「ルドルフ様の事……私が責任持つから……」
だから
「全部、家族の為に私が……必ずお父様もお母様もそしてお兄様もお救い致します」
だから……
「だから……もう少し待っていて下さい。お兄様」
そう、それが私の思い。
全ては家族を守る為だ。
せめて、バッドエンドを迎えるのが私だけであるように、切に願って……。
すると、お兄様が微笑んだ。
「エリスは昔っから無茶をするから目が離せないんだ」
そう言って私の頭を撫でてくれた。
「お兄様……私……」
0
お気に入りに追加
168
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

悲恋 (一部BL要素含む)
樺純
恋愛
王が世を支配する時代。
トナとコハクは愛し合いながら穏やかな日々を過ごしていました。
そんな時、トナとコハクの住む町に王が現れます。
トナは王に身染められ、愛するコハクと別れ胸を痛めながら王宮に入る事になります。
王宮に入ったトナに次々と起こる試練。
トナを失い悲しみに暮れるコハク。
そんな二人に幸せな日々は訪れるのでしょうか…?

すり替えられた公爵令嬢
鈴蘭
恋愛
帝国から嫁いで来た正妻キャサリンと離縁したあと、キャサリンとの間に出来た娘を捨てて、元婚約者アマンダとの間に出来た娘を嫡子として第一王子の婚約者に差し出したオルターナ公爵。
しかし王家は帝国との繋がりを求め、キャサリンの血を引く娘を欲していた。
妹が入れ替わった事に気付いた兄のルーカスは、事実を親友でもある第一王子のアルフレッドに告げるが、幼い二人にはどうする事も出来ず時間だけが流れて行く。
本来なら庶子として育つ筈だったマルゲリーターは公爵と後妻に溺愛されており、自身の中に高貴な血が流れていると信じて疑いもしていない、我儘で自分勝手な公女として育っていた。
完璧だと思われていた娘の入れ替えは、捨てた娘が学園に入学して来た事で、綻びを見せて行く。
視点がコロコロかわるので、ナレーション形式にしてみました。
お話が長いので、主要な登場人物を紹介します。
ロイズ王国
エレイン・フルール男爵令嬢 15歳
ルーカス・オルターナ公爵令息 17歳
アルフレッド・ロイズ第一王子 17歳
マルゲリーター・オルターナ公爵令嬢 15歳
マルゲリーターの母 アマンダ
パトリシア・アンバタサー エレインのクラスメイト
アルフレッドの側近
カシュー・イーシヤ 18歳
ダニエル・ウイロー 16歳
マシュー・イーシヤ 15歳
帝国
エレインとルーカスの母 キャサリン帝国の侯爵令嬢(皇帝の姪)
キャサリンの再婚相手 アンドレイ(キャサリンの従兄妹)
隣国ルタオー王国
バーバラ王女
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「結婚しよう」
まひる
恋愛
私はメルシャ。16歳。黒茶髪、赤茶の瞳。153㎝。マヌサワの貧乏農村出身。朝から夜まで食事処で働いていた特別特徴も特長もない女の子です。でもある日、無駄に見目の良い男性に求婚されました。何でしょうか、これ。
一人の男性との出会いを切っ掛けに、彼女を取り巻く世界が動き出します。様々な体験を経て、彼女達は何処へ辿り着くのでしょうか。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

十分我慢しました。もう好きに生きていいですよね。
りまり
恋愛
三人兄弟にの末っ子に生まれた私は何かと年子の姉と比べられた。
やれ、姉の方が美人で気立てもいいだとか
勉強ばかりでかわいげがないだとか、本当にうんざりです。
ここは辺境伯領に隣接する男爵家でいつ魔物に襲われるかわからないので男女ともに剣術は必需品で当たり前のように習ったのね姉は野蛮だと習わなかった。
蝶よ花よ育てられた姉と仕来りにのっとりきちんと習った私でもすべて姉が優先だ。
そんな生活もううんざりです
今回好機が訪れた兄に変わり討伐隊に参加した時に辺境伯に気に入られ、辺境伯で働くことを赦された。
これを機に私はあの家族の元を去るつもりです。

【完】瓶底メガネの聖女様
らんか
恋愛
伯爵家の娘なのに、実母亡き後、後妻とその娘がやってきてから虐げられて育ったオリビア。
傷つけられ、生死の淵に立ったその時に、前世の記憶が蘇り、それと同時に魔力が発現した。
実家から事実上追い出された形で、家を出たオリビアは、偶然出会った人達の助けを借りて、今まで奪われ続けた、自分の大切なもの取り戻そうと奮闘する。
そんな自分にいつも寄り添ってくれるのは……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる