きっと私は悪役令嬢

麻生空

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さてさてあれから一週間、私はハマりにハマって竜王シリーズを半分近く読んでいた。

何せ、数十巻に上る大作で残念ながら未だに完結していないのだ。

ルドルフ様の話していた侍従の死を知っているだけに、読めば読む程居たたまれない思いがする。

昔、映画を見ている時にカップルと思わしき男女の男の方が得意気にネタバレを話す事とかあって殺意を覚えたのは良くある話しだが、まさに今の私は「余計な事をネタバレして」と軽くルドルフ様に殺意を覚えていた。

どの段階かは分からないが、確実に死んでしまう侍従。

どのシーンを読んでも「こいつ死んでしまうんだよな」って思うと涙が出てしまう。

本当なら、すっごい、流石、二人の友情は永遠だ!的な思いを抱かせる爽快な内容も「死んでしまう」の一言で泣けてしまう。
だって、こいつは途中で死んでしまうんだから……。

本当ルドルフ様、余計な事を(怒)。


話は戻るが、彼と会った丁度一週間後の朝に先触れの手紙が届いた。

『親愛なるエドへ
先日話していたように今日は天気が良い。
今日は遠乗りに出掛けよう10時にお邪魔する。

                                    ルディより』

「……へ?」

何、この手紙。
遠乗り?
何で?

時計を見ると今は9時30分になった頃。

彼の家から考えると既に家は出ている頃だ。

「ってか、普通は婚約者の私を誘うんじゃないのか?」

そこだ。

そこが肝心なとこだ。

まぁ、誘われてもエリスで会う気はないんだけど。


それよりも、急いでエドワードを作らなくては

「メアリー。ちょっと緊急事態」

急いで侍女を呼び似非美少年の作成に入る。


簡素なワンピースを脱ぎ、念のため兄の乗馬用の服を着る。

バタバタと慌ただしく準備を進める侍女達。

大体当日に突然予定を捩じ込むってどんだけ?

「お嬢様。ルドルフ様がいらっしゃいました」

丁度着替え終わった所へ玄関で待機していた侍女が部屋へと駆け込んだ。

「ありがとう。では行って来るよ」

姿見で一応全身を確認する。

360度安定の美少年振りだ。

玄関へ赴くとそこには乗馬服を綺麗に着こなしたルドルフ様が立っていた。

紫の薔薇の君と言われるだけあり安定の紫の乗馬服だ。

紫の色味の違う色でアクセントの付いた乗馬服。

ボタンは金が使われており、所々にある金のチェーンが何とも言えない色気を出している。

まさに王子様だよ。

思わず見とれてしまう。

「エド」

私を見つけたルドルフ様は足早に私の所まで来る。 

「おはよう。先日話していたように、今日は晴れたから遠乗りに出掛けようか」

えっ、全然覚えていませんが……。
ってか、私馬に乗れませんけど。
何時そんな話になったのだろうか?
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