最強勇者の最弱物語

暗黒魔界大帝国王リク@UNKnown_P

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第二章~勇者修行編~

4.最弱からの離脱...

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 やあみんな!!俺の名前は勇者!!わーい。たのしーねー。ン?何でこんなにテンションが高いかって?ヴァニラたんとの初デートだからさ!!今は朝の五時半、あと三十分で来るよ!



 一時間後
 「...来なかった。」
なんでなんだよ!!期待して損した!!あの夜のムードは何処に!?
「ヴァニラ―!!!!!」
怒りが込み上げてきたので叫んでみた。

 「勇者どの。助けて...。」

 遠くからヴァニラの声が聞こえた。俺がいるのはこの前の小屋の前、声の方向は公園の中、やっぱり来てくれていたんだ!!確かに場所は伝えていなかったな。
...ん?まてまてまて。助けてだって?ようやく出番が来たな!!
 「ヴァニラ!!今行くぞ!って何処!?」
「公園のクリスタルのところ...。」
「おう!」

 クリスタルのところといえば、あそこだ。昨日は暗くてよく見えなかったが今日はとてもよく魅える。約五十メートルくらいの巨大クリスタル。斜めに刺さっており、紫と青とピンクの色が絶妙におしゃれ。
 周囲の状況を確認しながら入り口に向ていたらもう着いた。十メートルもないから当たり前だけど...。

 入り口には特に装飾がなく、『グランドドイッス西国立公園』と書かれた看板があるだけだ。
「やあ、昨日の人間。案内必要?」
リゲルだ。しかし、それどころではない。
「いらん。」
この一言に限る。そして俺は走り出した。

 ヴァニラのもとについた。
「はぁはぁ。どうした!?ヴァニラ。」
「こ、こいつが強すぎ。」
 この公園にはモンスターは基本入ってこないはずだ。
おかしいな。と思った俺はヴァニラの目の前の生物に目を向けた。しかし、それはモンスターではなかった。

 「クソミミ。てめぇのために五分も待ったんだぞ。ありがとうございますの一つもねぇのかよ!!」
「...。妾。王じゃぞ?」
「知るかボケェ!!ここはグランドドイッス地区だからてめぇには何の権限もねえんだよ!!」
その生物は人間だった。それも、腕にタトゥーを入れ、鎖をジャラジャラとつらしているかなりのチンピラだ。っていうか、こいつどこかで...。

 「勇者どの!!助けて!!こいつどうにかしてよ!うざい!」
「俺は守ると誓った。そして、悪を片付けるとも誓った。」
と、このように格好つけているとチンピラはずかずかと俺の前に近寄ってきた。
 
 「誰だてめぇ。」
彼は首を四十五度傾けながら俺を煽ってくる。
「お前こそ誰だ...。」
「あぁ!?俺の名はライアンッ!!世間では『ケモミミ潰しのライアン』と呼ばれている。」

 俺は思い出した。こいつ。あの時ケモ耳の少女をいじめてたやつらの一人じゃねえか...。
「ライアン!ケモミミいじめて何が楽しいんだよ!?」
俺はどちらかというとケモミミ愛好家だ。一部の人間はケモミミを迫害しているらしいが、俺はそれが気に入らない。

 「そうじゃ。妾、別にこの人を探してうろちょろしていただけで別に悪いことはなんもしていないと思うけど。」
ヴァニラのその言葉に反応したライアンは左手を胸の前に置き、さっきより態度が落ち着いた様子だ。
 
 「俺の進行している宗教では獣人はゴミ以下の価値しかないんだよ。」
ライアンが言った。俺とヴァニラはせーのと息を合わせる。
「「意味わからんっ!!」」
「は?俺の教祖をバカにすんじゃねえ!!」

 ライアンブチ切れ案件。俺はひとつの疑問を投げかける。
「どっかの知らないカルト宗教に入ったんだろ?」
「は!?っざけんじゃねえぞ!てめぇもネコミミもブチ殺すッァ!!!!!」

 (ボゴッ)

 そう言って奴は俺の顔を殴った。
「ゲホッ!!ぐおお。くはっ。」
「勇者どのー!!大丈夫かや!?」
痛ぇ。いきなり殴るとか。過激すぎる。そうか、こんな謎宗教があるから一部の奴がケモミミを虐げてるんだな。ていうか痛ぇ。
 
 「うおおおおおおおおお!!!!」
その瞬間だけ時の経過がゆっくりに感じた。ライアンがヴァニラを殴ろうと、叫んだ。誓ったのだ。守らなければ、そう思い、フラニック・オブ・クライネスを鞘から引き抜いた。
でも、行くと痛い。しかし、行かないと心が痛い。早くしないと。でも、覚悟が決まらない。
―気づいたら、俺は何も行動していなかった。

 (ボゴッ!!ドドドッゴッ!!)

 さっきよりも鈍い音がした。...また、やってしまった。いったい何回目なのだろうか。

 しかし、殴られたのはヴァニラではなく紳士服の男だった。

「0.1秒だ。」

 紳士服のその男が言葉を放った途端。本当に0.1秒ほどしかたっていないというのに、ライアンはその場に倒れこんでしまった。
「勇者どの...。」
 ヴァニラは俺に向ってそう言った。その目は呆れと絶望と驚愕。様々な感情が入り混じっており、一言では説明できない後悔を俺に与えてくれた。

 「...勇者氏。フラニック・オブ・クライネスを持つ資格は強さじゃなくてヴぁにらさまとのやくそくをまもれるかですよ。それでは私はここで。ちなみにこのライアン氏は殺しておきました。」

 紳士服の男はそう言いながら、公園の外へと消えていった。
「ヴァニラ...ごめん。」
...謝る以外の選択肢は俺にはない。あるなら教えてほしいくらいだ。
「...。実はあの人、私の執事なの。たしかクリストファーだったっけ?そして、あなたは動かなかった。...確信した。勇者どの?あなたは最強勇者ではない...。」

 「そんなの。分かってるよ!!最弱勇者だよ!!」
俺は最弱だ!!変に考えさせないでくれ!!と思って強くいってしまった。

 「勇者どの。だよ。切り替えが大切だよっ、せっかくなんだし、観光を続けよう。」
「そ、そうだな。」
俺は無意識に笑顔になっていた。名すらない俺はこの人生、あまりやさしさというものに触れてこなかった。むしろ他人の死のほうがよっぽぢたくさん見た気がする。

 「キミ。公園内で人殺しされても困るよ。」
リゲルだ。どこからともなく現れた。
「あ!?私...ライアンが殺害されたの完全に忘れてた。ていうかあなたはどちらさま?」
「聖・リゲルです。でもコイツ、有名な犯罪者だから死んだところで何の問題もない。むしろしんでよかったよ~。ハハハッ!」
リゲルは顔を上にあげライアンの死を嘲笑した。

 「...あなたまで死を軽く見ているの...?」
ヴァニラの口調がゆっくりになった。
「おもしろいこときくねぇ。キミ。この世界は殺すか殺されるかだ。この街は平和なほうだヨ。この前までは戦争していたしネ。」

 正直、リゲルの言っていることは正しいと思う。世間から見ればこの乱世で死が怖いとか言っているのはおバカな平和主義者だけだ。
 「私は戦争では一人も殺していませんっ!!」
「...まあ、平和主義もいいよネ。死体に関してはこっちでどうにかするからキミたちは観光を楽しむといいヨ。」

 こわいことに、死を見すぎたせいか、悪い奴だからかは知らないが、俺の目の前で人が死んだという事実に何にも感じなくなっていた。

 「キミたち。案内いる?」
「いらん。」
この日床に限る。だってこのキツネ野郎、色々うざいもん。

 「さあ、観光を始めよう!!」
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