最強勇者の最弱物語

暗黒魔界大帝国王リク@UNKnown_P

文字の大きさ
上 下
6 / 24
第一章~魔王討伐編~

5.フラニック・オブ・クライネス

しおりを挟む
 どうやら魔王の奴は自分に一人の力で世界を支配しようとしているらしいのだ。
そのため、部下は一人たりとも必要がないらしい。ちなみになぜ知っているかというと、入口の注意書きが書いてある看板があったからだ。
しかも、それは事実でだった。魔王城に入って時は長く過ぎたが、まだ敵には出くわしていない。

 「パンフレットによると、こっちの廊下だね?」
先頭のヴァニラが静かにつぶやく。
「そうだな。入口に案内板や注意書きそしてパンフレットがおいてあって助かったな。」
「そうだね、ご親切な魔王様だね...。なんか、裏がありそうだけど...。」
きれいなレンガの廊下には、ところどころにお茶が置いてある。確かにヴァニラの言う通り裏があるのかもしれないが単にいい奴だとするとこれから殺すのがなんか悪いなあと思ってしまう。

 「あ、もうそろそろかな?」
と、ヴァニラは静かに呟いた。
「そうかも...知れないな......」
俺は普段、パーティーメンバーとの会話は弾ませることが多いが、なぜだか今は即座に会話を切り上げていた。

 その理由は目の前にある。
 おそらく魔王の部屋と思われる扉の横の不自然に、そして意図的に置かれたであろう巨大な木の板がある。
「勇者様、これはいったい...?」
俺の背後から声が聞こえた。

 「俺も気になっていたところだ。時間はまだまだあるしどかしてみようか。」
俺がそういうと、ヴァニラ、ソフィア、クラリアの三人は木の板をどかし始めた。
 「......抜け穴か...?」
「私が...行ってくるよ!」
ヴァニラは静かにそう言い、俺の前に立った。
 「ホントに?何がおかるかわからんぞ。」
「大丈夫、大丈夫よ。」
俺の忠告をガン無視しずかずかと進んでいくヴァニラ。そじて、ほかのパーティーメンバー二人もそれに続く。
「ええ!?少しは警戒しろよ!!!」


 それから、少しだけ刻が過ぎた気がする。

 「ニャんですか!?これ...。」

中は広いのだろうか。誰かの声が大きく響く。
「勇者様!ちょっとこっちに来てください!!」
誰かが俺を呼ぶ。
「はいはい。今行きますよ!」
 俺が空洞を奥へと進むと三人。...いや、四人が固まっていた。
 一人は微動だにしていない。なぜなら...死んでいるからだ。

   剣と共に。

 「待って待って!?俺、今の状況が全く理解できないんだが......。」
「これを見て。」
四人の中の微動だにしない一人、つまり...死体。その人の横にある魔法言語らしきものが彫られている石碑を指さしたのはヴァニラだ。

「魔法言語か...?」
そう。魔法言語というのは文字通り、魔法を使うときにのみ使われている言語であり、筆記されることなどほとんどない。そのため、一部の人々は暗号として使うことが多いのだという。
「わたし、魔法言語読めますわ。どれどれ...。」
クラリアその場に座り込み、石碑を眺めている。

 「すげえや。今までキャラが薄いことで有名だったクラリアに活躍の女神がほほ笑んだみたいだな...!」
それまでじっくりと石碑を眺めていたクラリアであったが、俺がからかったとたんにぎろっとこっちをにらみつけてきた。
「冗談だよ、冗談。」
「...まあいいわ、邪魔しないでちょうだい。」
「おう...。がんばれ。」


 クラリアが石碑に近づいてから約十五分くらい経過したのかもしれない。ヴァニラはあまりの暇さに袋に詰めて持ってきていた大量のマタタビを使い切っていた。
 「にゃへ?クラリアたん...?終わったかや?ヒクッ。」
クラリアが石碑からひょおいっと離れたタイミングを見計らって酔いつぶれたヴァニラが呼びかけた。ソフィアはいったい何をしているのだろうか。
ちなみに、この世界(グランドドイッス大帝国だけかもしれない)ではマタタビには酔っ払い作用があると思われているため、13歳以上にしか使用してはいけないという法律があるらしい。
今更思ったがこのヴァニラ、いったい何歳なんだろうか。

 「まだ終わってない...。」
「もー!長いよ!」
座り込んでいるクラリアは魔法所片手に何かブツブツ言っている。

 「ヴァニラ、暇だし改めて自己紹介してくれないか?」
もうソフィアなんか知らない。放置して可哀そうかなと思った俺がバカでした。なぜならこの小さな隠し部屋を囲う石のレンガに入り口で配布されたお茶を塗りたくっているからだ。頭おかしいぞ...。
「勇者どの。なにソフィアのほうを見ている?気になるかや?」
「いやいや!違うよ!...じゃあ、さっそくお願い。」

 「まあいいや、私...妾はヴァニラ・スフィランクス。たぶん14歳かなって思っているよ。お母さんとお父様は王族であり、私は...王女...じゃ。」
途中まで腕を組み、エラそうな態度をとっていたヴァニラも、自分が王女であると告白する時には腕を下げ、口調は静かになっている。まるで本屋で欲しい本の一巻だけがない時のような表情だ。
 「なんでわざわざ語尾にじゃをつけたり、私を妾と言ったりするんだい?」
「たぶん、私の心の中では一般人でありたいという気持ちがあるのかもしれない。王族をやめたいというと、お父様に鞭とかでシバかれたりするから、じゃとか言って少しでも王族っぽくすることで一般人になりたいという自分の心を押し殺しているのよ。
まるでしゅん。という文字がヴァニラの頭の上にあるような気がした。
「そうか、なぜ一般人である俺にのこのこついてきてタメ口で話してくれるのかわからなかったがそういうことなのか。」

 「そうだね、すっきりした。なんか勇者どのの前では一般人になれる気がする...。ありがとね!!」
こちに満面の笑みを浮かべるヴァニラ。酔いはまだ残っているらしく、たまにヒクっとなったり頬が赤くなっているから、さらに可愛さが増している。

 「さすがに終わったか?」
さすがにもう待てないので俺はクラリアに話しかけた。相変わらずソフィアは謎行動をしている。

 「...うん。まあ、前半だけは分かったわ。後半はよくわからなかったけど。」
「じゃあ、前半だけでもいいよ。」
ヴァニラがそういったのでクラリアは開いていた本を閉じ、立ち上がった。

 「そのまま読み上げるわね......フラニック・オブ・クライネスを知っているか。実はこの石碑の横の人物に刺さっている剣がそれだ。もしかしたら君は余を倒そうとしているのかもしれない。どうぞ、この剣で私を倒してみてね♡あ、今触ってビリっときたでしょ?残念ながら選ばれ勇者にしか使えないんだよ。バーカ!」
 この剣は実はフラニック・オブ・クライネスらしいのだ。クラリアの言葉にヴァニラは驚き、ソフィアはお茶だ。

 「まって!後半がクッソ気になる。なんでわからないんだ?」
「それが、後半の魔法言語だけ旧式なのよ。」
確かによく見るとフォントが違うような気がする。どう見ても魔王の文字ではない。

 「あたくしソフィア、わかります。」
今までお茶をかけ続け、黙り込んでいたソフィアがついに発言をした。
「え?読めたのか?」
「はい!!!」
「一瞬で?」
「はい。」
「クラリアが頑張っていたのに関わらず?」
「...はい?自分のことに夢中で勇者様たちの会話は全く聞いておりませんでした。」
「ていうか、お前はさっきから何をやっているのだ?」
「石碑に書いてあることをそのまま実行しているだけですよ?何か問題でも?」
「...え?」
「石碑の下の方に。壁にお茶をかけるといいことがあるかも?と書いてありました。」

 「「「早く言え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」

俺を含めた三人は時間を返せというかのように叫んでいた。
(ガララララ...。)
ソフィアのいる方向から無機物の擦れる音が聞こえてくる。うるせえ。
「お、なんか空間が現れましたよ?勇者様。」
「おー!!」
一部のレンガがお茶をかけられたとたんに横へ動き敗れた紙がぽつんと置いてあるだけの小さな空間が生まれた。
正直すごいと思う。頭おかしいって言ってすいませんでしたね。

 「...紙か...。」
三十センチメートル×十二センチメートルくらいの大きさの紙だった。しかしそれは、真ん中で破られており左下にはp24と書かれている。ヴァニラはそれを見たとたんにこの隠し部屋の入り口付近に逃げ込み動かなくなってしまった。
「ヴァニラ?どうしたんだ?」
「い、いや、何でもないよ...。」
そうボソッとつぶやいたヴァニラの左手にはさっきよりくしゃくしゃになった紙が握られていることに俺は気づいてしまった。

 「...紙か...。」
2回目である...。
「はいはい、仕方がないからもう本当のことを言うけど、実は私ね、あの小屋に行ったじゃん。あのとき、きれいな木材があったんだよ。なにかなと思ってそれを押したらまさかの回転扉だったの。そこでこの紙を見つけたのよ。複雑なことが書いてあったからあえて見せなかったんだよ。そして、そしてね。この紙の右下にp25って書かれているんだけど、そこにある紙の左下にはp24って書かれているじゃん。もしかして、私やばい紙を所有していたのな?」
 「そうか...。もしかしたらつながるかもしれない。一回つなげてみようか。」
俺はヴァニラから紙をもらい小さな空間にぽつんと置いてある紙に合わせてみた。

 『よくこの紙を見つけることができたな。恐らくこれを読んでいる君の足元に死んだ私がいるだろう。剣と共に。すまなかったな。私の横の石碑の空いているところにメッセージを書こうと思ったのだが命がいつまでもつかわからないので早く旧魔法言語文字でメッセージを書かせてもらった。ちなみにこの遺書を書いたのは私が死ぬ一週間だ。―p24』
 『恐らく、私の小屋でこれを見つけたのであろう。私がだれかって?そんなのはいつか分かるさ。さあ、もし君が選ばれし勇者だったんなら私に刺さったフラニック・オブ・クライネスを引き抜くんだ。動かせ世界を。消せ、科学という存在を...。―p25』

 「「「な、なんだこりゃ。」」」「何でございますかね、これ。」
ソフィアとそろわないのは気にしないとして、これは本当に何なのだろうか。
「勇者どの。せっかくだし、フラニック・オブ・クライネスを引き抜いてみようよ。」
「そうだな。よしっ!!」
そういうと俺は勇者の格好をした死んだ男の胸元に刺さったフラニック・オブ・クライネスを両手で握った。

 「勇者様!首を見てみてください!」
「あぁ!?」
そう、フラニック・オブ・クライネスを握ったとたんに俺の首の紋章は発光紫に光りだしたのだ。
 「うおおおおおお!!」

 (シャキン)
両手で一気に持ち上げたら、意外とあっさり引き抜くことができた。
「うお!かっけえぞ!!」
その剣は、大剣と短剣のはざまのような形をしており中心に光り輝くクリスタルが埋め込まれており、いろいろな装飾が施されている。
「勇者様、聞いたことがありますか?」
「ん、何がだ?」
「フラニック・オブ・クライネスを抜けたものは必ず魔王を倒すことができるという噂を。」
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【完結】魔王様、溺愛しすぎです!

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
「パパと結婚する!」  8万年近い長きにわたり、最強の名を冠する魔王。勇者を退け続ける彼の居城である『魔王城』の城門に、人族と思われる赤子が捨てられた。その子を拾った魔王は自ら育てると言い出し!? しかも溺愛しすぎて、周囲が大混乱!  拾われた子は幼女となり、やがて育て親を喜ばせる最強の一言を放った。魔王は素直にその言葉を受け止め、嫁にすると宣言する。  シリアスなようでコメディな軽いドタバタ喜劇(?)です。 【同時掲載】アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、小説家になろう 【表紙イラスト】しょうが様(https://www.pixiv.net/users/291264) 挿絵★あり 【完結】2021/12/02 ※2022/08/16 第3回HJ小説大賞前期「小説家になろう」部門 一次審査通過 ※2021/12/16 第1回 一二三書房WEB小説大賞、一次審査通過 ※2021/12/03 「小説家になろう」ハイファンタジー日間94位 ※2021/08/16、「HJ小説大賞2021前期『小説家になろう』部門」一次選考通過作品 ※2020年8月「エブリスタ」ファンタジーカテゴリー1位(8/20〜24) ※2019年11月「ツギクル」第4回ツギクル大賞、最終選考作品 ※2019年10月「ノベルアップ+」第1回小説大賞、一次選考通過作品 ※2019年9月「マグネット」ヤンデレ特集掲載作品

喜んで地獄に行ったら、閻魔様に試供品にされました。〜異世界で森の中でサバイバル!?〜

NiE
ファンタジー
 アラサー引きこもりニートが親不孝にも日頃の不摂生が祟り死亡。そりゃー地獄行きだろと思いながら、喜んで閻魔様の法廷に立つも地獄も人材不足、ブラック企業の役員も真っ青な激務で、すわっ!ストライキ!という瀬戸際だった。手間ばかりかかる魂に拘っている暇など無い!ということで、お手軽簡単に魂の整理をしようと、低位の世界に魂の大バーゲンセールを行なうことにした。「篁くん、この魂あそこの神に試供ひ・・・、下賜しとしてー。」かくして、四十九日も過ぎぬうちに異世界へGo!と相成りました。  いやいや・・・。やっと人生終わったのに、なんでまたすぐ生まれなきゃなんないのよ!異世界?魔法?そんなんどうでも・・・。え?義務はない?“お試し”で転生するだけでいい?特典もくれるの!?「・・・・。っ!!!森でサバイバルからなんて聞いてなーーーーーいっ!!!!」 ※この作品はフィクションです。 実在の人物や団体などとは関係ありません。事柄や方法なども実際には則してないことがあります。 「作者のメンタルは豆腐です。応援よろしくお願いします。」

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

処理中です...