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第一章~魔王討伐編~
5.フラニック・オブ・クライネス
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どうやら魔王の奴は自分に一人の力で世界を支配しようとしているらしいのだ。
そのため、部下は一人たりとも必要がないらしい。ちなみになぜ知っているかというと、入口の注意書きが書いてある看板があったからだ。
しかも、それは事実でだった。魔王城に入って時は長く過ぎたが、まだ敵には出くわしていない。
「パンフレットによると、こっちの廊下だね?」
先頭のヴァニラが静かにつぶやく。
「そうだな。入口に案内板や注意書きそしてパンフレットがおいてあって助かったな。」
「そうだね、ご親切な魔王様だね...。なんか、裏がありそうだけど...。」
きれいなレンガの廊下には、ところどころにお茶が置いてある。確かにヴァニラの言う通り裏があるのかもしれないが単にいい奴だとするとこれから殺すのがなんか悪いなあと思ってしまう。
「あ、もうそろそろかな?」
と、ヴァニラは静かに呟いた。
「そうかも...知れないな......」
俺は普段、パーティーメンバーとの会話は弾ませることが多いが、なぜだか今は即座に会話を切り上げていた。
その理由は目の前にある。
おそらく魔王の部屋と思われる扉の横の不自然に、そして意図的に置かれたであろう巨大な木の板がある。
「勇者様、これはいったい...?」
俺の背後から声が聞こえた。
「俺も気になっていたところだ。時間はまだまだあるしどかしてみようか。」
俺がそういうと、ヴァニラ、ソフィア、クラリアの三人は木の板をどかし始めた。
「......抜け穴か...?」
「私が...行ってくるよ!」
ヴァニラは静かにそう言い、俺の前に立った。
「ホントに?何がおかるかわからんぞ。」
「大丈夫、大丈夫よ。」
俺の忠告をガン無視しずかずかと進んでいくヴァニラ。そじて、ほかのパーティーメンバー二人もそれに続く。
「ええ!?少しは警戒しろよ!!!」
それから、少しだけ刻が過ぎた気がする。
「ニャんですか!?これ...。」
中は広いのだろうか。誰かの声が大きく響く。
「勇者様!ちょっとこっちに来てください!!」
誰かが俺を呼ぶ。
「はいはい。今行きますよ!」
俺が空洞を奥へと進むと三人。...いや、四人が固まっていた。
一人は微動だにしていない。なぜなら...死んでいるからだ。
剣と共に。
「待って待って!?俺、今の状況が全く理解できないんだが......。」
「これを見て。」
四人の中の微動だにしない一人、つまり...死体。その人の横にある魔法言語らしきものが彫られている石碑を指さしたのはヴァニラだ。
「魔法言語か...?」
そう。魔法言語というのは文字通り、魔法を使うときにのみ使われている言語であり、筆記されることなどほとんどない。そのため、一部の人々は暗号として使うことが多いのだという。
「わたし、魔法言語読めますわ。どれどれ...。」
クラリアその場に座り込み、石碑を眺めている。
「すげえや。今までキャラが薄いことで有名だったクラリアに活躍の女神がほほ笑んだみたいだな...!」
それまでじっくりと石碑を眺めていたクラリアであったが、俺がからかったとたんにぎろっとこっちをにらみつけてきた。
「冗談だよ、冗談。」
「...まあいいわ、邪魔しないでちょうだい。」
「おう...。がんばれ。」
クラリアが石碑に近づいてから約十五分くらい経過したのかもしれない。ヴァニラはあまりの暇さに袋に詰めて持ってきていた大量のマタタビを使い切っていた。
「にゃへ?クラリアたん...?終わったかや?ヒクッ。」
クラリアが石碑からひょおいっと離れたタイミングを見計らって酔いつぶれたヴァニラが呼びかけた。ソフィアはいったい何をしているのだろうか。
ちなみに、この世界(グランドドイッス大帝国だけかもしれない)ではマタタビには酔っ払い作用があると思われているため、13歳以上にしか使用してはいけないという法律があるらしい。
今更思ったがこのヴァニラ、いったい何歳なんだろうか。
「まだ終わってない...。」
「もー!長いよ!」
座り込んでいるクラリアは魔法所片手に何かブツブツ言っている。
「ヴァニラ、暇だし改めて自己紹介してくれないか?」
もうソフィアなんか知らない。放置して可哀そうかなと思った俺がバカでした。なぜならこの小さな隠し部屋を囲う石のレンガに入り口で配布されたお茶を塗りたくっているからだ。頭おかしいぞ...。
「勇者どの。なにソフィアのほうを見ている?気になるかや?」
「いやいや!違うよ!...じゃあ、さっそくお願い。」
「まあいいや、私...妾はヴァニラ・スフィランクス。たぶん14歳かなって思っているよ。お母さんとお父様は王族であり、私は...王女...じゃ。」
途中まで腕を組み、エラそうな態度をとっていたヴァニラも、自分が王女であると告白する時には腕を下げ、口調は静かになっている。まるで本屋で欲しい本の一巻だけがない時のような表情だ。
「なんでわざわざ語尾にじゃをつけたり、私を妾と言ったりするんだい?」
「たぶん、私の心の中では一般人でありたいという気持ちがあるのかもしれない。王族をやめたいというと、お父様に鞭とかでシバかれたりするから、じゃとか言って少しでも王族っぽくすることで一般人になりたいという自分の心を押し殺しているのよ。
まるでしゅん。という文字がヴァニラの頭の上にあるような気がした。
「そうか、なぜ一般人である俺にのこのこついてきてタメ口で話してくれるのかわからなかったがそういうことなのか。」
「そうだね、すっきりした。なんか勇者どのの前では一般人になれる気がする...。ありがとね!!」
こちに満面の笑みを浮かべるヴァニラ。酔いはまだ残っているらしく、たまにヒクっとなったり頬が赤くなっているから、さらに可愛さが増している。
「さすがに終わったか?」
さすがにもう待てないので俺はクラリアに話しかけた。相変わらずソフィアは謎行動をしている。
「...うん。まあ、前半だけは分かったわ。後半はよくわからなかったけど。」
「じゃあ、前半だけでもいいよ。」
ヴァニラがそういったのでクラリアは開いていた本を閉じ、立ち上がった。
「そのまま読み上げるわね......フラニック・オブ・クライネスを知っているか。実はこの石碑の横の人物に刺さっている剣がそれだ。もしかしたら君は余を倒そうとしているのかもしれない。どうぞ、この剣で私を倒してみてね♡あ、今触ってビリっときたでしょ?残念ながら選ばれ勇者にしか使えないんだよ。バーカ!」
この剣は実はフラニック・オブ・クライネスらしいのだ。クラリアの言葉にヴァニラは驚き、ソフィアはお茶だ。
「まって!後半がクッソ気になる。なんでわからないんだ?」
「それが、後半の魔法言語だけ旧式なのよ。」
確かによく見るとフォントが違うような気がする。どう見ても魔王の文字ではない。
「あたくしソフィア、わかります。」
今までお茶をかけ続け、黙り込んでいたソフィアがついに発言をした。
「え?読めたのか?」
「はい!!!」
「一瞬で?」
「はい。」
「クラリアが頑張っていたのに関わらず?」
「...はい?自分のことに夢中で勇者様たちの会話は全く聞いておりませんでした。」
「ていうか、お前はさっきから何をやっているのだ?」
「石碑に書いてあることをそのまま実行しているだけですよ?何か問題でも?」
「...え?」
「石碑の下の方に。壁にお茶をかけるといいことがあるかも?と書いてありました。」
「「「早く言え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
俺を含めた三人は時間を返せというかのように叫んでいた。
(ガララララ...。)
ソフィアのいる方向から無機物の擦れる音が聞こえてくる。うるせえ。
「お、なんか空間が現れましたよ?勇者様。」
「おー!!」
一部のレンガがお茶をかけられたとたんに横へ動き敗れた紙がぽつんと置いてあるだけの小さな空間が生まれた。
正直すごいと思う。頭おかしいって言ってすいませんでしたね。
「...紙か...。」
三十センチメートル×十二センチメートルくらいの大きさの紙だった。しかしそれは、真ん中で破られており左下にはp24と書かれている。ヴァニラはそれを見たとたんにこの隠し部屋の入り口付近に逃げ込み動かなくなってしまった。
「ヴァニラ?どうしたんだ?」
「い、いや、何でもないよ...。」
そうボソッとつぶやいたヴァニラの左手にはさっきよりくしゃくしゃになった紙が握られていることに俺は気づいてしまった。
「...紙か...。」
2回目である...。
「はいはい、仕方がないからもう本当のことを言うけど、実は私ね、あの小屋に行ったじゃん。あのとき、きれいな木材があったんだよ。なにかなと思ってそれを押したらまさかの回転扉だったの。そこでこの紙を見つけたのよ。複雑なことが書いてあったからあえて見せなかったんだよ。そして、そしてね。この紙の右下にp25って書かれているんだけど、そこにある紙の左下にはp24って書かれているじゃん。もしかして、私やばい紙を所有していたのな?」
「そうか...。もしかしたらつながるかもしれない。一回つなげてみようか。」
俺はヴァニラから紙をもらい小さな空間にぽつんと置いてある紙に合わせてみた。
『よくこの紙を見つけることができたな。恐らくこれを読んでいる君の足元に死んだ私がいるだろう。剣と共に。すまなかったな。私の横の石碑の空いているところにメッセージを書こうと思ったのだが命がいつまでもつかわからないので早く旧魔法言語文字でメッセージを書かせてもらった。ちなみにこの遺書を書いたのは私が死ぬ一週間だ。―p24』
『恐らく、私の小屋でこれを見つけたのであろう。私がだれかって?そんなのはいつか分かるさ。さあ、もし君が選ばれし勇者だったんなら私に刺さったフラニック・オブ・クライネスを引き抜くんだ。動かせ世界を。消せ、科学という存在を...。―p25』
「「「な、なんだこりゃ。」」」「何でございますかね、これ。」
ソフィアとそろわないのは気にしないとして、これは本当に何なのだろうか。
「勇者どの。せっかくだし、フラニック・オブ・クライネスを引き抜いてみようよ。」
「そうだな。よしっ!!」
そういうと俺は勇者の格好をした死んだ男の胸元に刺さったフラニック・オブ・クライネスを両手で握った。
「勇者様!首を見てみてください!」
「あぁ!?」
そう、フラニック・オブ・クライネスを握ったとたんに俺の首の紋章は発光紫に光りだしたのだ。
「うおおおおおお!!」
(シャキン)
両手で一気に持ち上げたら、意外とあっさり引き抜くことができた。
「うお!かっけえぞ!!」
その剣は、大剣と短剣のはざまのような形をしており中心に光り輝くクリスタルが埋め込まれており、いろいろな装飾が施されている。
「勇者様、聞いたことがありますか?」
「ん、何がだ?」
「フラニック・オブ・クライネスを抜けたものは必ず魔王を倒すことができるという噂を。」
そのため、部下は一人たりとも必要がないらしい。ちなみになぜ知っているかというと、入口の注意書きが書いてある看板があったからだ。
しかも、それは事実でだった。魔王城に入って時は長く過ぎたが、まだ敵には出くわしていない。
「パンフレットによると、こっちの廊下だね?」
先頭のヴァニラが静かにつぶやく。
「そうだな。入口に案内板や注意書きそしてパンフレットがおいてあって助かったな。」
「そうだね、ご親切な魔王様だね...。なんか、裏がありそうだけど...。」
きれいなレンガの廊下には、ところどころにお茶が置いてある。確かにヴァニラの言う通り裏があるのかもしれないが単にいい奴だとするとこれから殺すのがなんか悪いなあと思ってしまう。
「あ、もうそろそろかな?」
と、ヴァニラは静かに呟いた。
「そうかも...知れないな......」
俺は普段、パーティーメンバーとの会話は弾ませることが多いが、なぜだか今は即座に会話を切り上げていた。
その理由は目の前にある。
おそらく魔王の部屋と思われる扉の横の不自然に、そして意図的に置かれたであろう巨大な木の板がある。
「勇者様、これはいったい...?」
俺の背後から声が聞こえた。
「俺も気になっていたところだ。時間はまだまだあるしどかしてみようか。」
俺がそういうと、ヴァニラ、ソフィア、クラリアの三人は木の板をどかし始めた。
「......抜け穴か...?」
「私が...行ってくるよ!」
ヴァニラは静かにそう言い、俺の前に立った。
「ホントに?何がおかるかわからんぞ。」
「大丈夫、大丈夫よ。」
俺の忠告をガン無視しずかずかと進んでいくヴァニラ。そじて、ほかのパーティーメンバー二人もそれに続く。
「ええ!?少しは警戒しろよ!!!」
それから、少しだけ刻が過ぎた気がする。
「ニャんですか!?これ...。」
中は広いのだろうか。誰かの声が大きく響く。
「勇者様!ちょっとこっちに来てください!!」
誰かが俺を呼ぶ。
「はいはい。今行きますよ!」
俺が空洞を奥へと進むと三人。...いや、四人が固まっていた。
一人は微動だにしていない。なぜなら...死んでいるからだ。
剣と共に。
「待って待って!?俺、今の状況が全く理解できないんだが......。」
「これを見て。」
四人の中の微動だにしない一人、つまり...死体。その人の横にある魔法言語らしきものが彫られている石碑を指さしたのはヴァニラだ。
「魔法言語か...?」
そう。魔法言語というのは文字通り、魔法を使うときにのみ使われている言語であり、筆記されることなどほとんどない。そのため、一部の人々は暗号として使うことが多いのだという。
「わたし、魔法言語読めますわ。どれどれ...。」
クラリアその場に座り込み、石碑を眺めている。
「すげえや。今までキャラが薄いことで有名だったクラリアに活躍の女神がほほ笑んだみたいだな...!」
それまでじっくりと石碑を眺めていたクラリアであったが、俺がからかったとたんにぎろっとこっちをにらみつけてきた。
「冗談だよ、冗談。」
「...まあいいわ、邪魔しないでちょうだい。」
「おう...。がんばれ。」
クラリアが石碑に近づいてから約十五分くらい経過したのかもしれない。ヴァニラはあまりの暇さに袋に詰めて持ってきていた大量のマタタビを使い切っていた。
「にゃへ?クラリアたん...?終わったかや?ヒクッ。」
クラリアが石碑からひょおいっと離れたタイミングを見計らって酔いつぶれたヴァニラが呼びかけた。ソフィアはいったい何をしているのだろうか。
ちなみに、この世界(グランドドイッス大帝国だけかもしれない)ではマタタビには酔っ払い作用があると思われているため、13歳以上にしか使用してはいけないという法律があるらしい。
今更思ったがこのヴァニラ、いったい何歳なんだろうか。
「まだ終わってない...。」
「もー!長いよ!」
座り込んでいるクラリアは魔法所片手に何かブツブツ言っている。
「ヴァニラ、暇だし改めて自己紹介してくれないか?」
もうソフィアなんか知らない。放置して可哀そうかなと思った俺がバカでした。なぜならこの小さな隠し部屋を囲う石のレンガに入り口で配布されたお茶を塗りたくっているからだ。頭おかしいぞ...。
「勇者どの。なにソフィアのほうを見ている?気になるかや?」
「いやいや!違うよ!...じゃあ、さっそくお願い。」
「まあいいや、私...妾はヴァニラ・スフィランクス。たぶん14歳かなって思っているよ。お母さんとお父様は王族であり、私は...王女...じゃ。」
途中まで腕を組み、エラそうな態度をとっていたヴァニラも、自分が王女であると告白する時には腕を下げ、口調は静かになっている。まるで本屋で欲しい本の一巻だけがない時のような表情だ。
「なんでわざわざ語尾にじゃをつけたり、私を妾と言ったりするんだい?」
「たぶん、私の心の中では一般人でありたいという気持ちがあるのかもしれない。王族をやめたいというと、お父様に鞭とかでシバかれたりするから、じゃとか言って少しでも王族っぽくすることで一般人になりたいという自分の心を押し殺しているのよ。
まるでしゅん。という文字がヴァニラの頭の上にあるような気がした。
「そうか、なぜ一般人である俺にのこのこついてきてタメ口で話してくれるのかわからなかったがそういうことなのか。」
「そうだね、すっきりした。なんか勇者どのの前では一般人になれる気がする...。ありがとね!!」
こちに満面の笑みを浮かべるヴァニラ。酔いはまだ残っているらしく、たまにヒクっとなったり頬が赤くなっているから、さらに可愛さが増している。
「さすがに終わったか?」
さすがにもう待てないので俺はクラリアに話しかけた。相変わらずソフィアは謎行動をしている。
「...うん。まあ、前半だけは分かったわ。後半はよくわからなかったけど。」
「じゃあ、前半だけでもいいよ。」
ヴァニラがそういったのでクラリアは開いていた本を閉じ、立ち上がった。
「そのまま読み上げるわね......フラニック・オブ・クライネスを知っているか。実はこの石碑の横の人物に刺さっている剣がそれだ。もしかしたら君は余を倒そうとしているのかもしれない。どうぞ、この剣で私を倒してみてね♡あ、今触ってビリっときたでしょ?残念ながら選ばれ勇者にしか使えないんだよ。バーカ!」
この剣は実はフラニック・オブ・クライネスらしいのだ。クラリアの言葉にヴァニラは驚き、ソフィアはお茶だ。
「まって!後半がクッソ気になる。なんでわからないんだ?」
「それが、後半の魔法言語だけ旧式なのよ。」
確かによく見るとフォントが違うような気がする。どう見ても魔王の文字ではない。
「あたくしソフィア、わかります。」
今までお茶をかけ続け、黙り込んでいたソフィアがついに発言をした。
「え?読めたのか?」
「はい!!!」
「一瞬で?」
「はい。」
「クラリアが頑張っていたのに関わらず?」
「...はい?自分のことに夢中で勇者様たちの会話は全く聞いておりませんでした。」
「ていうか、お前はさっきから何をやっているのだ?」
「石碑に書いてあることをそのまま実行しているだけですよ?何か問題でも?」
「...え?」
「石碑の下の方に。壁にお茶をかけるといいことがあるかも?と書いてありました。」
「「「早く言え!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」
俺を含めた三人は時間を返せというかのように叫んでいた。
(ガララララ...。)
ソフィアのいる方向から無機物の擦れる音が聞こえてくる。うるせえ。
「お、なんか空間が現れましたよ?勇者様。」
「おー!!」
一部のレンガがお茶をかけられたとたんに横へ動き敗れた紙がぽつんと置いてあるだけの小さな空間が生まれた。
正直すごいと思う。頭おかしいって言ってすいませんでしたね。
「...紙か...。」
三十センチメートル×十二センチメートルくらいの大きさの紙だった。しかしそれは、真ん中で破られており左下にはp24と書かれている。ヴァニラはそれを見たとたんにこの隠し部屋の入り口付近に逃げ込み動かなくなってしまった。
「ヴァニラ?どうしたんだ?」
「い、いや、何でもないよ...。」
そうボソッとつぶやいたヴァニラの左手にはさっきよりくしゃくしゃになった紙が握られていることに俺は気づいてしまった。
「...紙か...。」
2回目である...。
「はいはい、仕方がないからもう本当のことを言うけど、実は私ね、あの小屋に行ったじゃん。あのとき、きれいな木材があったんだよ。なにかなと思ってそれを押したらまさかの回転扉だったの。そこでこの紙を見つけたのよ。複雑なことが書いてあったからあえて見せなかったんだよ。そして、そしてね。この紙の右下にp25って書かれているんだけど、そこにある紙の左下にはp24って書かれているじゃん。もしかして、私やばい紙を所有していたのな?」
「そうか...。もしかしたらつながるかもしれない。一回つなげてみようか。」
俺はヴァニラから紙をもらい小さな空間にぽつんと置いてある紙に合わせてみた。
『よくこの紙を見つけることができたな。恐らくこれを読んでいる君の足元に死んだ私がいるだろう。剣と共に。すまなかったな。私の横の石碑の空いているところにメッセージを書こうと思ったのだが命がいつまでもつかわからないので早く旧魔法言語文字でメッセージを書かせてもらった。ちなみにこの遺書を書いたのは私が死ぬ一週間だ。―p24』
『恐らく、私の小屋でこれを見つけたのであろう。私がだれかって?そんなのはいつか分かるさ。さあ、もし君が選ばれし勇者だったんなら私に刺さったフラニック・オブ・クライネスを引き抜くんだ。動かせ世界を。消せ、科学という存在を...。―p25』
「「「な、なんだこりゃ。」」」「何でございますかね、これ。」
ソフィアとそろわないのは気にしないとして、これは本当に何なのだろうか。
「勇者どの。せっかくだし、フラニック・オブ・クライネスを引き抜いてみようよ。」
「そうだな。よしっ!!」
そういうと俺は勇者の格好をした死んだ男の胸元に刺さったフラニック・オブ・クライネスを両手で握った。
「勇者様!首を見てみてください!」
「あぁ!?」
そう、フラニック・オブ・クライネスを握ったとたんに俺の首の紋章は発光紫に光りだしたのだ。
「うおおおおおお!!」
(シャキン)
両手で一気に持ち上げたら、意外とあっさり引き抜くことができた。
「うお!かっけえぞ!!」
その剣は、大剣と短剣のはざまのような形をしており中心に光り輝くクリスタルが埋め込まれており、いろいろな装飾が施されている。
「勇者様、聞いたことがありますか?」
「ん、何がだ?」
「フラニック・オブ・クライネスを抜けたものは必ず魔王を倒すことができるという噂を。」
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