聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。

しぎ

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封印

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灰色と茶色の何かが追いかけっこする変な夢を見てた気がする。
突然ふ、と目が覚めた。卒業式に出てた筈だけど、なぜかベッドで寝ている。
「…あ。お目覚めですか?」
声がした方を見るとアイリスさんが座ってた。
「…アイリスさん。…私どうして…」
「気分は悪くないですか?目眩などは?」
私の質問に答えないで、アイリスさんが矢継ぎ早に聞いてくる。特に気分は悪くない。
「それは良かったです。…アカリ様。こちらを見ていただけますか?」
アイリスさんは私の目の前に鉢植えを取り出した。特に何も植えられてなくて土だけがある。
「この中に種が植えられています。こちらを咲かせていただけませんか?」
よく分からなかったけど、言う通りにしようとする。とりあえず形として手を結んで祈ってみる。
この種が咲きますように。
…あれ?
今度は目をつぶって祈る。声に出してみる。心の底から祈る。
…それなのに、種は芽さえつけなかった。
「…え?え?何で?」
慌てる私をアイリスさんは冷静な目で見ていた。どこか憐れむような目で。
「聖女の力の封印は成功しているようですね」
「…力の封印?」
呆然とする私に淡々とアイリスさんは説明を始めた。
私の力が強すぎること。制御が効いていないこと。無意識に力を使ってしまっていること。
「…聖女の茶会での、ミア・シュヴェストカ子爵令嬢への力の行使が決定打でした。聖女の力の完全な封印が決まり、そのための道具、先程渡したネックレスですね。それの準備に時間がかかってしまい、このようなタイミングとなりました」
私の感情の乱れによって変わる天気。苦しげなミアの顔が頭に浮かぶ。
「…私、もう力使えないの?」
「完全な封印が出来ているのか、そもそもあなたの強大な力の源は何であるのか、研究をしたいので少しの間協力をお願いします」
ぽろりと溢れた私の言葉にアイリスさんが無慈悲に返す。

そうか。私もう聖女じゃなくなるんだ。
私この後どうなるんだろう。
ベンネルに会いたいな。
…何で私ちょっとホッとしてるんだろう。

「…私は、ダメな聖女でした?」
「…アカリ様は、素晴らしい聖女でしたよ」
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