聖女の取り巻きな婚約者を放置していたら結婚後に溺愛されました。

しぎ

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番外

無意識

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そこから数日のことはあまり覚えていない。
目の回るような忙しさ。
たくさんの祈り。
村人たちの喜びの声。

そしてそれをかき消すような、

「何でもっと早く来てくれなかったんだ!お前がもっと早く来てりゃ俺の妻も娘も!この×××!×××!お前なんかー!」

男の怒号。
それよりももっと大きな、

雷の音と光。

私がふっと馬車の中で目を覚ましたのは数日後のことだった。
旱魃にあった最後の小さな村で祈った後、馬車に戻ろうとした私にある男が掴みかかったらしい。旱魃のせいで家族を亡くして自暴自棄になっていたと、後からその村の人に聞いた。
私につかみかかって罵声を浴びせ、呆然とした私に男が拳を振り上げた瞬間、途方もない大きさの音と光がして男はその場に倒れて、後にはぼんやりとした私が立っていたらしい。
男は雷に打たれた、と言われても私には分かってしまった。
男を倒したのは私の、聖女の力だ。
さらに私の力は折角復活させた村をさらにひどい状態に変えていた。
もともと枯れていた川や井戸が完全に干上がり、植物は完全に枯れ果て姿すらない。獣が凶暴化し村を襲うようになってしまった。
村は人が住めない場所になってしまった。
男は死んではいない、らしい。会っていないからわからない。
村人たちは私に対して何度も何度も謝罪をした。申し訳ない、聖女様の怒りはもっともだ、男のことはそちらで裁いてもらっていい。だからどうか村を元に戻してほしい、と。
目を覚ましてから私は何度も何度も祈った。
村の復活を。男の治癒を。
どれだけ祈っても村は元に戻らなかった。

意識して使う力よりも無意識の力の方が強いのだ。と急いで村に来たアイリスさんは言った。
私は何度祈っても変わらない村の姿に呆然としていて、村中を見て回るアイリスさんの姿を見ているしかなかった。
私はあの時、自分に害意を向ける男に無意識に敵意を向けた。そして私の敵意は男の住む村にまで及んでしまった。
「あなたの力は強大です。だからこそ有益であり、それゆえにあまりにも危険すぎる」
アイリスさんはこわばった顔でそう言った。

馬車で王都に戻る途中、突然後輪がガタンと鳴った。
窓から顔を出して後ろを振り返る。私が進む先はなめらかな道が、私が通り過ぎるたびにガタガタの道になっていく。来る時に通った時より酷いぐらいだ。
私は祈る。目を閉じて手を固く結んで。どうか、これ以上はひどくならないでと。
何にもならないとしても、私にはそれしか出来なかった。
私の力は私には制御できない。

力を封印することも、力を弱めることも出来る。とアイリスさんは言った。封印には時間がかかるから、とりあえず半減くらいに抑えるらしい。そのための設備が王宮にあるらしく、私は王族に挨拶することになった。本当はもう少しマナーとか学んでからじゃないといけないらしいんだけど、今回は非常事態だからしょうがないらしい。
アイリスさんの後に続いて謁見の場所の扉をくぐる。緊張しながら頭を下げて、顔を上げた時。

私は運命の出会いをした。
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