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お茶会
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「あなた、ブレイグ・クロシェット様の噂、知っている?」
お茶会の招待を受けました。今までの貧乏な一子爵家では絶対に来なかったであろう上位貴族の方々からの招待がブレイグ様との婚約からひっきりなしに舞い込んできます。領地の財政状態もだんだん良好になってきたので、やっと社交に力を入れることができる様になりました。今回の招待はマニッジ伯爵家のシャガート令嬢です。クロシェット侯爵家とは親戚の間柄だそうなので、これから長く付き合っていくことになる方でしょう。
「いらっしゃい、ミアさん。どうか楽しんでいってくださいね」
上品に微笑むシャガート様が歓迎してくれます。必死に覚えたマナーで挨拶をなんとかこなし、お茶会のテーブルに着くことができました。
美味しいお菓子と紅茶を頂きながら、同じテーブルについた方々が口々に歓迎をしてくれるのに何とか会話を繋げながら私は心の中で首を傾げていました。
テーブルには私以外に3人のご令嬢方。皆さん、とても優しいのです。いや、別に仲良くしてくれるに越したことはないのですが、上位貴族と突然婚約した下位貴族のマナーもなっていない小娘、しかもクロシェット侯爵家は国でも有数の名門ですから、多少は嫌味や嫌がらせなんかされるのではないのかと思っていたのですが。皆さんとても優しく話しかけてくださるのです。私はこっそりと上位貴族の方々に対する偏見に恥いることとなりました。
そんな中ぽつりとその言葉はこぼされました。
「あなた、ブレイグ・クロシェット様の噂、知っている?」
シャガート様は私に向けて何故か遠慮がちにそう言いました。一体何の話なのでしょう。貴族の噂には全くもって疎いのです。シャガート様は一つ息を吸うとその噂について教えてくれました。
「ブレイグ様がなぜこの年まで、婚約をなさらなかったのかという話なの。名門である侯爵家の一人息子だから縁談は絶えなかったそうなのだけど。それが、ブレイグ様には初恋の人がいてその人でなければ結婚しない、無理やり結婚させるのなら家を出ると言い張っていたからだそうなの」
ふんふんと頷きながら聞いていた私は最後まで聞いてハテナを浮かべました。
「ブレイグ様は私と婚約されたと思うのですが。私はブレイグ様と婚約の顔合わせが初対面だったので、初恋の人ではないと思うのです」
疑問を口にしながらゆっくりと別の疑問が解けていくのを感じました。初めて会った時のブレイグ様のあの態度、やはり本意ではない婚約だったからなのですね。初恋の人と結婚できなければ家を出ると言っていたブレイグ様を侯爵様達がどのように納得させたのかは分かりませんが、無理やりの婚約だったからこそ、私に対してあの様な態度をされていたのですね。
考え込んでいた私がよほど浮かない顔をしているように見えたのでしょう。お茶会に参加された方々に慰められ仲良くなってしまいました。これは嬉しい誤算です。
友達ができたことに喜んでいた私にも一つだけ心に残る言葉がありました。
「初恋の方が、もしかしたらあの方だから、今ブレイグ様とあなたはこの様な形になっているのかもしれません」
一体ブレイグ様の初恋の方はどんな人なのでしょう?
お茶会の招待を受けました。今までの貧乏な一子爵家では絶対に来なかったであろう上位貴族の方々からの招待がブレイグ様との婚約からひっきりなしに舞い込んできます。領地の財政状態もだんだん良好になってきたので、やっと社交に力を入れることができる様になりました。今回の招待はマニッジ伯爵家のシャガート令嬢です。クロシェット侯爵家とは親戚の間柄だそうなので、これから長く付き合っていくことになる方でしょう。
「いらっしゃい、ミアさん。どうか楽しんでいってくださいね」
上品に微笑むシャガート様が歓迎してくれます。必死に覚えたマナーで挨拶をなんとかこなし、お茶会のテーブルに着くことができました。
美味しいお菓子と紅茶を頂きながら、同じテーブルについた方々が口々に歓迎をしてくれるのに何とか会話を繋げながら私は心の中で首を傾げていました。
テーブルには私以外に3人のご令嬢方。皆さん、とても優しいのです。いや、別に仲良くしてくれるに越したことはないのですが、上位貴族と突然婚約した下位貴族のマナーもなっていない小娘、しかもクロシェット侯爵家は国でも有数の名門ですから、多少は嫌味や嫌がらせなんかされるのではないのかと思っていたのですが。皆さんとても優しく話しかけてくださるのです。私はこっそりと上位貴族の方々に対する偏見に恥いることとなりました。
そんな中ぽつりとその言葉はこぼされました。
「あなた、ブレイグ・クロシェット様の噂、知っている?」
シャガート様は私に向けて何故か遠慮がちにそう言いました。一体何の話なのでしょう。貴族の噂には全くもって疎いのです。シャガート様は一つ息を吸うとその噂について教えてくれました。
「ブレイグ様がなぜこの年まで、婚約をなさらなかったのかという話なの。名門である侯爵家の一人息子だから縁談は絶えなかったそうなのだけど。それが、ブレイグ様には初恋の人がいてその人でなければ結婚しない、無理やり結婚させるのなら家を出ると言い張っていたからだそうなの」
ふんふんと頷きながら聞いていた私は最後まで聞いてハテナを浮かべました。
「ブレイグ様は私と婚約されたと思うのですが。私はブレイグ様と婚約の顔合わせが初対面だったので、初恋の人ではないと思うのです」
疑問を口にしながらゆっくりと別の疑問が解けていくのを感じました。初めて会った時のブレイグ様のあの態度、やはり本意ではない婚約だったからなのですね。初恋の人と結婚できなければ家を出ると言っていたブレイグ様を侯爵様達がどのように納得させたのかは分かりませんが、無理やりの婚約だったからこそ、私に対してあの様な態度をされていたのですね。
考え込んでいた私がよほど浮かない顔をしているように見えたのでしょう。お茶会に参加された方々に慰められ仲良くなってしまいました。これは嬉しい誤算です。
友達ができたことに喜んでいた私にも一つだけ心に残る言葉がありました。
「初恋の方が、もしかしたらあの方だから、今ブレイグ様とあなたはこの様な形になっているのかもしれません」
一体ブレイグ様の初恋の方はどんな人なのでしょう?
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