29 / 30
また後日
しおりを挟む
床にうずくまり呆然とする第三王子を無視して会場を見回したアリス嬢は私たちのことを見つけるとぱっと顔を明るくした。優雅な動作で最大限に急いで私たちの前に立つ。
「話すのが遅くなってしまいすみません。私はフェネオン皇国第一皇女、アリスティア・フェネオンです。今後ともどうぞよろしく」
私たちも急いで最大級の敬意をこめた礼をする。周囲が私たちのことを恐る恐る見守っているのがわかる。
「お父様にウィレット子爵に助けられたことを伝えたら、礼を言うようにと。フェネオン皇国からあなた方に感謝を。あぁ、夫人のドレスはその一環です。すぐに説明が出来なくてすみません」
にこりと笑うアリスティア皇女。本当に私の着ているドレスはアリス嬢、ひいては皇国からの贈り物だったのか。会場中の空気ががちがちに凍る。もし私たちがこの国であまりよろしくない立場にあることをこの場で皇女殿下に洗いざらい話してしまえば、国がとんでもないことになる。
「・・・いいえ、大したことはしておりません。お気になさらず」
無表情にシルヴァン様が言う。落ち着いているように見えるけれど動揺しているのが私には分かった。
「いずれ、皇国に招待してもよろしいですか?子爵も、子爵夫人も」
私もぎこちなく微笑みを作り、「ありがとうございます」と震えた声でお礼を言うしかなかった。
アリスティア皇女が私たちのそばを離れ、会場の中心に戻る。いつの間にか震えていた手をお互い無意識に握り合う。今日私はこの国の王子にケンカを売り、皇国の皇女と親しくなった。とんでもないことだ。
「わー、すごいね。ウィレット子爵家一気に立場上がるね。伯爵家になったりして」
少し驚いた様子ながらまだのんびりとキャロルが言う。確かにシルヴァン様は皇国との同盟を結ぶ足がかりの一つになったということだから、そんなこともあるのかもしれない。
「・・・困るな、本を読む時間が減るかもしれない」
真面目な顔で言うシルヴァン様に肩の力が抜ける。まぁ確かに忙しくなるかもしれないが、お金が増えれば他の使用人も雇えるようになるかもしれないから、カレルとシャールカの負担を減らせるかもしれない。
「じゃ、私お母様たちのところに戻るね。ベルたちも帰るか、心の準備したら?周りの目凄いよ」
ばいばいと手を振ってキャロルが離れていく。周囲を見れば私たちを見る無数の目。ウィレット子爵家と親交をつなごうとする人たちの目だ。
「・・・帰ろう」
シルヴァン様と腕を組み早足に帰る。確かに私たちは周囲と交流を持つべきだ。
でも今日はあんまりにも疲れたので帰らせてほしい。
「話すのが遅くなってしまいすみません。私はフェネオン皇国第一皇女、アリスティア・フェネオンです。今後ともどうぞよろしく」
私たちも急いで最大級の敬意をこめた礼をする。周囲が私たちのことを恐る恐る見守っているのがわかる。
「お父様にウィレット子爵に助けられたことを伝えたら、礼を言うようにと。フェネオン皇国からあなた方に感謝を。あぁ、夫人のドレスはその一環です。すぐに説明が出来なくてすみません」
にこりと笑うアリスティア皇女。本当に私の着ているドレスはアリス嬢、ひいては皇国からの贈り物だったのか。会場中の空気ががちがちに凍る。もし私たちがこの国であまりよろしくない立場にあることをこの場で皇女殿下に洗いざらい話してしまえば、国がとんでもないことになる。
「・・・いいえ、大したことはしておりません。お気になさらず」
無表情にシルヴァン様が言う。落ち着いているように見えるけれど動揺しているのが私には分かった。
「いずれ、皇国に招待してもよろしいですか?子爵も、子爵夫人も」
私もぎこちなく微笑みを作り、「ありがとうございます」と震えた声でお礼を言うしかなかった。
アリスティア皇女が私たちのそばを離れ、会場の中心に戻る。いつの間にか震えていた手をお互い無意識に握り合う。今日私はこの国の王子にケンカを売り、皇国の皇女と親しくなった。とんでもないことだ。
「わー、すごいね。ウィレット子爵家一気に立場上がるね。伯爵家になったりして」
少し驚いた様子ながらまだのんびりとキャロルが言う。確かにシルヴァン様は皇国との同盟を結ぶ足がかりの一つになったということだから、そんなこともあるのかもしれない。
「・・・困るな、本を読む時間が減るかもしれない」
真面目な顔で言うシルヴァン様に肩の力が抜ける。まぁ確かに忙しくなるかもしれないが、お金が増えれば他の使用人も雇えるようになるかもしれないから、カレルとシャールカの負担を減らせるかもしれない。
「じゃ、私お母様たちのところに戻るね。ベルたちも帰るか、心の準備したら?周りの目凄いよ」
ばいばいと手を振ってキャロルが離れていく。周囲を見れば私たちを見る無数の目。ウィレット子爵家と親交をつなごうとする人たちの目だ。
「・・・帰ろう」
シルヴァン様と腕を組み早足に帰る。確かに私たちは周囲と交流を持つべきだ。
でも今日はあんまりにも疲れたので帰らせてほしい。
6
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

没落貴族とバカにしますが、実は私、王族の者でして。
亜綺羅もも
恋愛
ティファ・レーベルリンは没落貴族と学園の友人たちから毎日イジメられていた。
しかし皆は知らないのだ
ティファが、ロードサファルの王女だとは。
そんなティファはキラ・ファンタムに惹かれていき、そして自分の正体をキラに明かすのであったが……

ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

【完結】傷物令嬢は近衛騎士団長に同情されて……溺愛されすぎです。
朝日みらい
恋愛
王太子殿下との婚約から洩れてしまった伯爵令嬢のセーリーヌ。
宮廷の大広間で突然現れた賊に襲われた彼女は、殿下をかばって大けがを負ってしまう。
彼女に同情した近衛騎士団長のアドニス侯爵は熱心にお見舞いをしてくれるのだが、その熱意がセーリーヌの折れそうな心まで癒していく。
加えて、セーリーヌを振ったはずの王太子殿下が、親密な二人に絡んできて、ややこしい展開になり……。
果たして、セーリーヌとアドニス侯爵の関係はどうなるのでしょう?

みんなが嫌がる公爵と婚約させられましたが、結果イケメンに溺愛されています
中津田あこら
恋愛
家族にいじめられているサリーンは、勝手に婚約者を決められる。相手は動物実験をおこなっているだとか、冷徹で殺されそうになった人もいるとウワサのファウスト公爵だった。しかしファウストは人間よりも動物が好きな人で、同じく動物好きのサリーンを慕うようになる。動物から好かれるサリーンはファウスト公爵から信用も得て溺愛されるようになるのだった。

俺の婚約者が可愛すぎる件について ~第三王子は今日も、愚かな自分を殴りたい~
salt
恋愛
ぐらりと視界が揺れて、トラヴィス・リオブライド・ランフォールドは頭を抱えた。
刹那、脳髄が弾けるような感覚が全身を襲い、何かを思い出したようなそんな錯覚に陥ったトラヴィスの目の前にいたのは婚約したばかりの婚約者、フェリコット=ルルーシェ・フォルケイン公爵令嬢だった。
「トラ……ヴィス、でんか…っ…」
と、名前を呼んでくれた直後、狂ったように泣きだしたフェリコットはどうやら時戻りの記憶があるようで……?
ライバルは婚約者を傷つけまくった時戻り前の俺(八つ裂きにしたい)という話。
或いは性根がダメな奴は何度繰り返してもダメという真理。
元サヤに見せかけた何か。
*ヒロインターンは鬱展開ですので注意。
*pixiv・なろうにも掲載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる