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道理
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ぽかんと口を開けそうになって咄嗟に口に力を入れる。私の事を嫌っている義母が私を家に戻そうとするなんて。どういう風の吹き回しだろうか。
「無理やり自分の豪華なドレスを作らせるなんて妻としてなっていないわ。ベインズ伯爵家の教育不足だと思われてしまうじゃない。あなたに嫁入りはまだ早かったのよ。家に戻りなさい。準備は自分でしなさいね」
言うだけ言って義母は口を噤む。私の返事待ちだろうか。珍しい。義母が私の言葉を待つなんて。
「…どうしてお母様!ベルティーヌを戻そうとするなんて!この子なんてうちに必要ないでしょう?」
ヒステリックに喚いたのはアビー。キャロルは他のことに興味がいったのかいつの間にか姿を消していた。
「大丈夫よ、アビー。当主はあなたで変わりないわ。この子をただ家に戻すだけ。あなたの邪魔なんてさせないわ」
アビーに向けて優しい口調で言う義母。
「…うちに何があったのですか?」
私を家に戻すことで彼女達に良いことが起こる、もしくは不都合がなくなる。それは何だろうか。
「あなたは聞かなくていいわ。黙ってうちに戻りなさい。…あぁ、子爵が来るわね。ベルティーヌ、彼にも話しておいて」
それだけ言って義母はアビーを連れて離れて行った。何か言いたげなアビーも義母に手を引かれるようにして渋々離れて行った。
「…誰かと話していたか?」
両手にたくさんの料理が乗った皿を持ったシルヴァン様が戻ってきた。何を話そうか迷う。
「…実家の人達と、少し」
「…そうか」
シルヴァン様は少しだけ顔を顰めた。
「俺も話した方が良かったか?手紙のやり取りしかしてないんだ」
「あぁ、そうなんですね。…いえ、話さなくても良いと思います」
義母の話はしないことにした。もうあの家に戻るつもりはない。何か強行手段を取られるようなことがあったら話そう。
「…大丈夫か?顔色が悪そうだ」
シルヴァン様が私の顔に触れようとして、メイクに気づいて手を止めた。久しぶりに会った実家の人間達は思っていたよりも、私にとって刺激が強かったらしい。シルヴァン様が持ってきた料理を少しずつ摘んでいたらちょっと落ち着いてきた。これなら、パーティの最後までいられるだろう。シルヴァン様の隣からは離れられないけれど。
…シルヴァン様の隣は息がしやすい。息が詰まりそうな実家を出てから思っていたことだった。それが好きってことなのかもしれない。まだ、よく分からないけれど。
「…まさかとは思うが、お前はウィレット子爵じゃないだろうな?」
声が聞こえて伏せていた目を上げる。私たちの前にいたのは、高級そうな礼服を着た5人の男女だった。おそらく伯爵家以上の。シルヴァン様を横目で伺う。すんとした表情のシルヴァン様。
…まさか、誰か分からないとは言いませんよね。どう見ても知り合いのようですが。
「何故、お前がここにいる?誰が招待した?」
「ミナ、離れていて、危ないよ」
「子爵がいるなら、私、言いたいことが…」
「今日は大国の皇女様まで招待されているんだぞ!誰か早く追い出せ!」
「何故揉め事を起こした人間が来ている?」
口々に喚く人々。話す内容から少しずつ理解する。どうやら彼らは前のパーティで令嬢を婚約破棄し、シルヴァン様に仲裁された人達らしい。憎々しげな目でシルヴァン様を睨む人達。彼らがシルヴァン様を睨む道理は無いと思うけれど。人前で女性を辱めるような真似をする人たちの考えることは分からない。
「無理やり自分の豪華なドレスを作らせるなんて妻としてなっていないわ。ベインズ伯爵家の教育不足だと思われてしまうじゃない。あなたに嫁入りはまだ早かったのよ。家に戻りなさい。準備は自分でしなさいね」
言うだけ言って義母は口を噤む。私の返事待ちだろうか。珍しい。義母が私の言葉を待つなんて。
「…どうしてお母様!ベルティーヌを戻そうとするなんて!この子なんてうちに必要ないでしょう?」
ヒステリックに喚いたのはアビー。キャロルは他のことに興味がいったのかいつの間にか姿を消していた。
「大丈夫よ、アビー。当主はあなたで変わりないわ。この子をただ家に戻すだけ。あなたの邪魔なんてさせないわ」
アビーに向けて優しい口調で言う義母。
「…うちに何があったのですか?」
私を家に戻すことで彼女達に良いことが起こる、もしくは不都合がなくなる。それは何だろうか。
「あなたは聞かなくていいわ。黙ってうちに戻りなさい。…あぁ、子爵が来るわね。ベルティーヌ、彼にも話しておいて」
それだけ言って義母はアビーを連れて離れて行った。何か言いたげなアビーも義母に手を引かれるようにして渋々離れて行った。
「…誰かと話していたか?」
両手にたくさんの料理が乗った皿を持ったシルヴァン様が戻ってきた。何を話そうか迷う。
「…実家の人達と、少し」
「…そうか」
シルヴァン様は少しだけ顔を顰めた。
「俺も話した方が良かったか?手紙のやり取りしかしてないんだ」
「あぁ、そうなんですね。…いえ、話さなくても良いと思います」
義母の話はしないことにした。もうあの家に戻るつもりはない。何か強行手段を取られるようなことがあったら話そう。
「…大丈夫か?顔色が悪そうだ」
シルヴァン様が私の顔に触れようとして、メイクに気づいて手を止めた。久しぶりに会った実家の人間達は思っていたよりも、私にとって刺激が強かったらしい。シルヴァン様が持ってきた料理を少しずつ摘んでいたらちょっと落ち着いてきた。これなら、パーティの最後までいられるだろう。シルヴァン様の隣からは離れられないけれど。
…シルヴァン様の隣は息がしやすい。息が詰まりそうな実家を出てから思っていたことだった。それが好きってことなのかもしれない。まだ、よく分からないけれど。
「…まさかとは思うが、お前はウィレット子爵じゃないだろうな?」
声が聞こえて伏せていた目を上げる。私たちの前にいたのは、高級そうな礼服を着た5人の男女だった。おそらく伯爵家以上の。シルヴァン様を横目で伺う。すんとした表情のシルヴァン様。
…まさか、誰か分からないとは言いませんよね。どう見ても知り合いのようですが。
「何故、お前がここにいる?誰が招待した?」
「ミナ、離れていて、危ないよ」
「子爵がいるなら、私、言いたいことが…」
「今日は大国の皇女様まで招待されているんだぞ!誰か早く追い出せ!」
「何故揉め事を起こした人間が来ている?」
口々に喚く人々。話す内容から少しずつ理解する。どうやら彼らは前のパーティで令嬢を婚約破棄し、シルヴァン様に仲裁された人達らしい。憎々しげな目でシルヴァン様を睨む人達。彼らがシルヴァン様を睨む道理は無いと思うけれど。人前で女性を辱めるような真似をする人たちの考えることは分からない。
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