のんびり灰かぶりは貧乏子爵様に嫁入りしました。『理屈屋と感覚派』

しぎ

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結構な時間お説教をされて、暖かなコートも着せてもらって2人で丘の方に歩いていく。叱られることは実家でもたくさんあったけど、私の身を案じての事は久しぶりだったから怒られているのに口元が緩んでしまった。軽い敷物とかが入ったバッグは私が、飲み物等が入った重いバスケットはシルヴァン様が持ってくれている。前を歩くシルヴァン様が藪を払いながら進んでくれるから私は草に触れる事なく進めた。丘の上に立つ。思った通りに美しい星空で空を見上げる私の口がぽかんと開くのが分かる。ぼんやりとしていた私の意識は手に持ったバッグが取られたことで戻った。シルヴァン様がバッグの中から敷物を出して地面に敷く。手招きされて敷物に隣り合って座る。体温を微かに感じるぐらいの距離で並んで座るとさっきよりも星空が遠くなる。でも星空の美しさは変わらなくてただ空を見上げる。途中でシルヴァン様のことを忘れていたのに気づいて慌てて隣を見たけど、シルヴァン様も空を見上げて黙ったままだったから、私もまた空を見た。時々紅茶を呷ったり、小さな焼き菓子を食べたりしていたら時間はすぐに経っていて、そろそろ帰って寝なきゃいけない時間だ。でも、何となく立ち上がり難くて、何かを話したくて頭の中の話題を探す。ぐるぐる頭の中を掻き回して出てきた話題は。

「…どうして、上級貴族の方と喧嘩なんてなさったんですか?」

…いや、いやいや、これじゃないだろう。いくらちょっと気になっていたと言ってもこの雰囲気でこれはないだろう。まずい。言い訳をしたくても頭の中が真っ白で何も出てこない。口をぱくぱくさせるだけの私を見て、少し驚いた表情だったシルヴァン様は、ほんの少し口角を上げた。
「それが気になるのか?ただ、パーティで偏屈子爵が上級貴族に喧嘩を売っただけだというのに?」
何だか、シルヴァン様は愉快そうに見えるけど、どうしてもそこが気になった。
短い付き合いではあるけれど、理屈を第一にしているというだけで無闇矢鱈に喧嘩を売る人ではないと思う。
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