のんびり灰かぶりは貧乏子爵様に嫁入りしました。『理屈屋と感覚派』

しぎ

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説得

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「仕事をしたいのならすればいい」
初めて2人で食べる朝食の場でシルヴァン様は事もなげに真顔でそう言った。目玉焼きを優雅な手付きで切り分けている。
「いや、それはここに来たばかりのベル様を知らないから言えるんだよ」
「しかも仕事は殆どシルヴァンの尻拭いみたいなもんだろ。させられるか」
シャールカとカレルが噛み付かんばかりに言う。
2人のことを見つめるシルヴァンはゆったりと口を開いた。
「確かに昔、ここに来たばかりの時ベルティーヌ嬢はあまり健康そうではなかったのだろう。しかし今は彼女はかなり健康そうに見える。しかも退屈しているだろう。書斎の本は殆ど触った痕跡が残っている。それに、夫人になった上で何も仕事をせずにのんびりしていろと言う方が酷なのではないか。それはお飾りでいろと言うのに等しいだろう。何か仕事がしたいと言うならしてもらえばいい」
そして口を閉じる。一瞬ぽかんとした2人がそれから私の方を見た。
「…させてくれるのなら何か仕事したいです。実家にいた頃は毎日していましたから、書類には慣れています。…2人が気をつかってくれるのは分かるのよ。でも私は元気だし、シルヴァン様の言うように、私はここにいるために何か役に立ちたいわ」
2人は顔を見合わせ、同時にため息をついた。
「…分かりました。確かにこれまで俺たちはあなたを形だけの夫人にしてしまっていたんですね。…社交は、うちではしばらく無理ですから、書類仕事を少し手伝っていただけますか?もちろん、シルヴァンが、あなたに全て押し付けたりしないように私が見張りますので」
カレルが静かに微笑みながら言う。私も笑い返した。視線の端でシルヴァン様がわずかに口端を持ち上げたのが見えた。
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