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歩み寄り
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「おはようございます。朝早くに起きて掃除をされていたと聞きました。何か気になることがありましたか?」
「いいえ、そうじゃないの。今までの癖で起きちゃって、起きちゃったから掃除をしてただけなの。シャールカの仕事を取ってしまってごめんなさい」
「いえ、何もなければそれでいいのです。掃除は、この家ではメイドの仕事ですから、ベルティーヌ様は朝はゆっくりお過ごしください」
「分かったわ、ありがとう」
ほっとした顔のカレルが用意してくれた朝食はやっぱり温かくて美味しかった。一息吐いて、ふと思い立つ。
「カレル、子爵の仕事が立て込んでいるなら私に手伝わせてくれないかしら?家では書類仕事をしていたから、問題無く手伝えると思うわ」
家に来たばかりの新参者に手伝わせたくないなら無理かなとは思う。案の定カレルは困った顔をした。
「ベルティーヌ様のお手を煩わせるほどでは…。あれはシルヴァン…旦那様の責任なので」
「そう…分かったわ」
私の顔がよほど情けなく見えたのか、カレルとシャールカがまた困った顔をする。2人は顔を見合わせぼそぼそと何やら話し合いを始めた。小さな声だから私には聞こえないけれど、顔を寄せ合って話す2人は仲が良さそうで少し微笑ましい。話がまとまったのか、シャールカが私の方を見る。
「ベルティーヌ様は今はゆっくりお休みしているべきだと思います。でも、何もない、というのも暇で困りますよね。ベルティーヌ様は本が好きだったりしますか?うち、娯楽になりそうな物があまり無いのですが、古い本なら多少あるので、書斎を案内しようかと思うのですが」
ずいとシャールカが私の方に寄ってくる。少しだけ身を引いて私は微笑んだ。
「そうね。本は好き。お願いしようかしら」
「分かりました!ちょっと書斎を片付けてくるので少しお待ちください!」
飛び上がるようにしてシャールカが食堂を飛び出していく。
シャールカを目で追っていたカレルが呆れたようにくすりと笑った。
「…すみません。シャールカは・・・私もですが、あまり貴族の方に対する礼儀がなっていません。というより、貴族として知っているのが主人のシルヴァンぐらいなのです。付き合いが長いものですから、・・・幼馴染のようなものでして。正しく礼を尽くすことがあまりうまくできなくて・・・。お気を悪くされたら、本当にすみません」
困ったように微笑むカレルに微笑み返す。
「そうだったのね。大丈夫よ。それに、そういうことなら私にも無理に敬語を使ったり気を遣おうとしなくてもいいのよ。すぐには無理かもしれないけど。・・・きっと長い付き合いになるんだから」
すぐに返答はなくても、微笑む顔だけで好意は伝わる。忙し気なシャールカが食堂に飛び込んでくるまで、私とカレルはただ静かに微笑みあっていた。
「いいえ、そうじゃないの。今までの癖で起きちゃって、起きちゃったから掃除をしてただけなの。シャールカの仕事を取ってしまってごめんなさい」
「いえ、何もなければそれでいいのです。掃除は、この家ではメイドの仕事ですから、ベルティーヌ様は朝はゆっくりお過ごしください」
「分かったわ、ありがとう」
ほっとした顔のカレルが用意してくれた朝食はやっぱり温かくて美味しかった。一息吐いて、ふと思い立つ。
「カレル、子爵の仕事が立て込んでいるなら私に手伝わせてくれないかしら?家では書類仕事をしていたから、問題無く手伝えると思うわ」
家に来たばかりの新参者に手伝わせたくないなら無理かなとは思う。案の定カレルは困った顔をした。
「ベルティーヌ様のお手を煩わせるほどでは…。あれはシルヴァン…旦那様の責任なので」
「そう…分かったわ」
私の顔がよほど情けなく見えたのか、カレルとシャールカがまた困った顔をする。2人は顔を見合わせぼそぼそと何やら話し合いを始めた。小さな声だから私には聞こえないけれど、顔を寄せ合って話す2人は仲が良さそうで少し微笑ましい。話がまとまったのか、シャールカが私の方を見る。
「ベルティーヌ様は今はゆっくりお休みしているべきだと思います。でも、何もない、というのも暇で困りますよね。ベルティーヌ様は本が好きだったりしますか?うち、娯楽になりそうな物があまり無いのですが、古い本なら多少あるので、書斎を案内しようかと思うのですが」
ずいとシャールカが私の方に寄ってくる。少しだけ身を引いて私は微笑んだ。
「そうね。本は好き。お願いしようかしら」
「分かりました!ちょっと書斎を片付けてくるので少しお待ちください!」
飛び上がるようにしてシャールカが食堂を飛び出していく。
シャールカを目で追っていたカレルが呆れたようにくすりと笑った。
「…すみません。シャールカは・・・私もですが、あまり貴族の方に対する礼儀がなっていません。というより、貴族として知っているのが主人のシルヴァンぐらいなのです。付き合いが長いものですから、・・・幼馴染のようなものでして。正しく礼を尽くすことがあまりうまくできなくて・・・。お気を悪くされたら、本当にすみません」
困ったように微笑むカレルに微笑み返す。
「そうだったのね。大丈夫よ。それに、そういうことなら私にも無理に敬語を使ったり気を遣おうとしなくてもいいのよ。すぐには無理かもしれないけど。・・・きっと長い付き合いになるんだから」
すぐに返答はなくても、微笑む顔だけで好意は伝わる。忙し気なシャールカが食堂に飛び込んでくるまで、私とカレルはただ静かに微笑みあっていた。
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