のんびり灰かぶりは貧乏子爵様に嫁入りしました。『理屈屋と感覚派』

しぎ

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良い朝

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カレルが作ってくれた昼食はとても美味しかった。お義母様は使用人に私のご飯を作らないように言っていたから、私は家事の合間に余り物で簡単な物を作って食べるばかりだったから。人にご飯を作ってもらって温かい物を食べるのは久しぶりだった。
「…美味しい。ありがとう」
ほんの少し涙が出て、微笑んで見せるとカレルは驚いた顔をした。

食後に家の中をシャールカに案内してもらった。見た目通りの小さな家は玄関ホールと食堂と小さな応接間、キッチンと後は数部屋ぐらいしかない。一つだけ鍵のかかった部屋があったけど、そこは見せてもらえなかった。案内の後、晩御飯を作ってもらって部屋に戻って一息つく。今日はもう何もする気が起きない。子爵夫人としての仕事は明日からにしてもらおう。書類は数をこなしてきたから慣れているし、使用人が少ないなら家事をする人手もきっと必要だ。考え事をしたいのに、もう瞼が重くて何も考えることができなかった。

朝、目が覚めて一瞬自分がどこにいるのか分からなかった。ふかふかの温かなベッド。毛布が2枚もある。窓の外を覗いて確認する。日が出ているからおそらくもう5時ぐらいだろう。
「…うーん。よく寝た」

「…え、ちょっ、ベ、ベルティーヌ様!?」
「おはよう、シャールカ。早いのね」
食堂の掃除を終わらせて軽く伸びをする。清々しい朝だ。掃除を邪魔するような人もいないし。

「え、いや、やらなくていいから!なんで掃除してんの!?まだ寝てなって!?」
慌てた様子でシャールカが私の手から掃除道具を取り上げる。口調がぐちゃぐちゃだ。
「でも、後2部屋ぐらいなのよ?」
「ひえ、結構掃除進んでる…。私が全部やるから…やりますから!ベルティーヌ様はまだ寝ててください!起こしに行きますから!」
背中を押されて部屋に戻される。困った。すっかり目は冴えて眠気も無い。何をするべきだろうか。時間は大体7時ぐらい。いつもならこの時間には掃除と料理を終わらせて、書類の束を眺めている時間だ。何も無いと困る。部屋を見回して、何となく窓辺に座る。大きな窓。空がいっぱいに見える。こんなに青い空を見たのはいつぶりだろうか。街から離れたこの家なら、夜になればきっと星が空いっぱいに見えるだろう。そういえば、小さい頃は星が好きだった。両親と温かいココアを飲みながら毛布に包まって夜空を眺めるのが好きだった。感傷に浸りぼんやりする私をノックの音が覚ました。遠慮がちに開かれたドアからはシャールカの顔が覗く。
「おはようございます、ベルティーヌ様、起きてらっしゃい…ますね…。朝食が出来たので起こしに来ました」
「ありがとう。行きましょうか」
窓辺から立ち上がりシャールカの後に続く。食堂では何故か心配そうな顔をしたカレルが待っていた。
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