のんびり灰かぶりは貧乏子爵様に嫁入りしました。『理屈屋と感覚派』

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私の部屋

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「…ここです。小さい所ですが…」
少し気まずそうに言うシャールカが指したのは街から少し離れた所にある一軒家だった。子爵家の物にしては少し小さめで、多少ガタがきているようにも見える。
「中は、中はちょっとはマシなので…」
私の背を押すようにして中に入れるシャールカ。玄関を開けると、金髪金眼の背の高い男が立っていた。
「あ、おかえりシャールカ、ベインズ伯爵令嬢い、た…?失礼しました。ようこそウィレット子爵家へ。執事のカレルと申します」
私が一緒に入ってくると思ってなかったのか砕けた口調でシャールカに話しかけた執事は慌てて口調を丁寧な物にする。
「ベルティーヌ・ベインズです。よろしく、カレル」
少しだけ待ってみたけど、使用人は本当に2人だけらしく、新しく誰かが出てくることはなかった。
私の軽い荷物をカレルが持ち、シャールカの先導で私の部屋になる所に行く。こじんまりとしているけど、小物が多くて可愛らしい部屋だった。
「疲れていらっしゃるでしょうから、湯浴みとお着替えをしましょう。出てってカレル」
「分かってる。…ごゆっくりお休みくださいベルティーヌ様」

お風呂に入るのをシャールカに手伝ってもらって、服を着せてもらう。私の持ってきた服を見て固まっていたシャールカは一度部屋を出て別の服を持ってきた。
「古い物ですが、質はいい物なので…!こっちを着てください」
懇願するような口調のシャールカが着せてくれたのは確かに古いけれど、生地のしっかりした良い物だった。こんな服、10歳の時から着てないかもしれない。
「ありがとうシャールカ、これ、とってもいい物ね。誰かの物じゃないの?勝手に着てしまって大丈夫?」
「先代の奥様の物なので…。もう着る人もいないのでベルティーヌ様に着てもらった方が服も嬉しいと思います」
でも流石に新しいものを仕立てましょう。と言ってくれるのが嬉しい。私はお金を持っていないけど大丈夫だろうか。
「もうすぐ、昼食の時間ですね。…うちはちょっと、使用人が少なくて…。カレルがシェフを兼任しています。カレルは料理上手なので楽しみにしてください」
にっこりと笑うシャールカに私も嬉しくなった。楽しみだ。
…そういえば。

「旦那様にご挨拶したいのだけど、どこにいらっしゃるかしら?」
私の言葉にシャールカが目を逸らす。どうしたのだろうか。
「旦那様…、シルヴァン様はですね…。ちょっとばかり仕事が立て込んでまして…。暫く会うことは難しいかと…」
言葉を濁しまくるシャールカ。私を主人に会わせたくないのか、主人が私に会いたがらないのか。どちらなのかは分からないが、とにかく結婚相手にすぐに会えそうにないことは確かなようだ。
…シルヴァンというらしい。私の旦那様は。ここに来るまでウィレット子爵ということしか知らなかった。噂はたくさん聞いたのに。名前すら知らなかったなんておかしな話だ。
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