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道端の出会い
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数日の徹夜は流石に堪えたようで、歩いている途中で何だか体がふらふらしてきた。そういえば朝ごはんも食べてない。食事を抜かれるのは日常だったから気にしてなかったけど、歩くなら何か食べてくるべきだった。ウィレット子爵家までは後30分ぐらい歩けば着きそうだけど、動けなくなって道端に蹲る。歩いている道はなかなか人通りが多いが、みんな私のことをちらちら見るだけで、声をかけてくれるような人はいない。…まぁ、こんな道を1人で歩いているボロを着たのが伯爵家の令嬢とは思わないか。仕方ない。ちょっと休めばマシになるだろうから少しだけ休憩しよう。ふーと、ため息をついた時、声をかけられた。
「…えーと、大丈夫?具合悪い?お腹空いた?」
ちょっと低めの、でも優しげな女の人の声。項垂れていた顔を上げるとそこにいたのは短い黒髪に綺麗な緑の瞳の人だった。私のことを心配げな顔で見ている。
「…はい、大丈夫、少し疲れただけで…」
「…本当に大丈夫?あっちの方行くの?私、こっちの方に行かなくちゃいけなくて。あー、でも、ちょっとくらい遅れても大丈夫かな、分かんないけど。…まあ、良いか。怒られても。私が送るよ。どこ行きたいの?」
何やらぶつぶつと呟いていたその人は私に肩を貸して支えてくれた。私より背が低いから支えにくそうだ。慌ててお礼を言うと綺麗な笑顔が返ってくる。
「…すみません、ありがとうございます。えっと、ウィレット子爵家に行きたくて…」
そう言った途端、女の人の笑顔が固まる。私の全身をさっと上から下まで見て首を傾げる。
「…もしかして、ベインズ伯爵令嬢、様?」
「…え、そうです。何故…」
知っているのかと聞こうとした時、女の人が私から離れようとしてふらついた私に気づき、再び支え直してくれた。
「…えーと。…すみません。私、ウィレット子爵家の者です。お迎えにあがろうと思ったんですが、遅くなってしまい…。申し訳ありません…まさか1人で歩いてくるとは思わなくて…」
徐々に消え入りそうな声で謝罪し始めた女の人。よく見れば使用人の服を着ている。2人しかいないと言う使用人のうちの1人だろうか。
「…そうだったのですね。大丈夫です。迎えにきてくださるのなら、待っていれば良かったですね」
「ほんとにすみません…。令嬢1人で歩かせて…。ちょっと遅れても良いかとか言っちゃったし…」
しょんぼりとし出す女の人に少し笑ってしまう。
「大丈夫ですよ。案内をお願いします。私はベルティーヌ・ベインズです。よろしく」
「…シャールカです。メイドです。よろしくお願いします」
「…えーと、大丈夫?具合悪い?お腹空いた?」
ちょっと低めの、でも優しげな女の人の声。項垂れていた顔を上げるとそこにいたのは短い黒髪に綺麗な緑の瞳の人だった。私のことを心配げな顔で見ている。
「…はい、大丈夫、少し疲れただけで…」
「…本当に大丈夫?あっちの方行くの?私、こっちの方に行かなくちゃいけなくて。あー、でも、ちょっとくらい遅れても大丈夫かな、分かんないけど。…まあ、良いか。怒られても。私が送るよ。どこ行きたいの?」
何やらぶつぶつと呟いていたその人は私に肩を貸して支えてくれた。私より背が低いから支えにくそうだ。慌ててお礼を言うと綺麗な笑顔が返ってくる。
「…すみません、ありがとうございます。えっと、ウィレット子爵家に行きたくて…」
そう言った途端、女の人の笑顔が固まる。私の全身をさっと上から下まで見て首を傾げる。
「…もしかして、ベインズ伯爵令嬢、様?」
「…え、そうです。何故…」
知っているのかと聞こうとした時、女の人が私から離れようとしてふらついた私に気づき、再び支え直してくれた。
「…えーと。…すみません。私、ウィレット子爵家の者です。お迎えにあがろうと思ったんですが、遅くなってしまい…。申し訳ありません…まさか1人で歩いてくるとは思わなくて…」
徐々に消え入りそうな声で謝罪し始めた女の人。よく見れば使用人の服を着ている。2人しかいないと言う使用人のうちの1人だろうか。
「…そうだったのですね。大丈夫です。迎えにきてくださるのなら、待っていれば良かったですね」
「ほんとにすみません…。令嬢1人で歩かせて…。ちょっと遅れても良いかとか言っちゃったし…」
しょんぼりとし出す女の人に少し笑ってしまう。
「大丈夫ですよ。案内をお願いします。私はベルティーヌ・ベインズです。よろしく」
「…シャールカです。メイドです。よろしくお願いします」
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