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仲間
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「ただいまー」
かいととポチは、傘の中に戻ってきました。
「おかえり、そしてポチよかいとを守ってくれてありがとう」
電信柱の声が上の方からしました。
「かいとくんは大丈夫でしたよ、電信柱さん」
「うむ。今回は何事もなくてよかった。この間補導されたときはどうしようかと思ったからね」
電信柱の大きなため息が聞こえて、かいとはうなだれました。
「電信柱さん、僕今回外に出てわかったんです。傘の中はとても暖かいし居心地が良いけれど、いつかもう少し大きくなってもう少し自分で生きていける自信がついたら外の世界で暮らしたいんです」
かいとは背中をまっすぐに伸ばして上を見上げます。
「そんなことを私に許可を求める必要なんてないよ。外出たいならば生きたいならばそうすればいいし、戻りたくなったらいつ戻ってきたってかまわない。それが傘の世界だ」
電信柱の声は大きく、そして穏やかでたおやかでした。
「だが、生きていくためにはお金も必要だ。知識も必要だ。そのための教育を明日から追加しよう。かいとが傘を卒業した後も幸せに生きていけるように」
電信柱が微笑む気配がした。
「教育もいいけど、実践も必要だと思います。短時間でもいいから、外に出る機会を増やしてください! ここにはお店もないし、ひとも少ないです」
かいとは、訴えました。
「もちろんだよ。だけど、ひとが少ないのは関係ないと思うよ。人は一人でも生きていける人間だ。それにあんまりかいとがいなくなると、れんが寂しがる。実はゆきもいなくなってれんが不安定になっておるのだ」
「不安定? そうなんですね。知りませんでした」
かいとは、れんがいるテントの方を見つめました。
「人数は少ないが、一応ここも社会だ。そう思って行動してくれると助かるのだが……」
電信柱は静かにかいとをみおろすのでした。
かいとはほおっと小さくため息をつきました。
れんが不安定になっているなんて知りませんでした。自分も小さいときに傘の一員となった、自分より小さかったれんが、自分が外に出ることで寂しがっていることはもっときづいてあげるべきでした。
「かいとさん、大丈夫ですか?」
ポチが心配そうにかいとの手をぺろぺろ舐めます。
「僕もお父さんとお母さんがケンカしてよく家を出て独りぼっちだったことがあるから、れんのきもちはよくわかるよ。だけど、僕も僕の人生を生きたいんだ。わかってくれる? ポチ」
かいとの目から一粒の涙がつたいました。
ポチはおんおん、と答えます。
「私はいま林さんの興味を失った存在です。林さんはウサギに夢中で私には目もくれません。最近は私のごはんも時々忘れるくらいです。私もいなくなった方が良いのでしょう」
かいとはポチの頭をなでました。
いつの間にかおてつだいのお手伝いお兄さんがかいととポチの隣にしゃがみこんでいました。
「電信柱さんが良くしてくださいますよ。時々、私と一緒に外に出る訓練をしましょう」
そういうと、ミカン畑を吹き渡るそよ風のような微笑みをかいととポチに向けるのでした。
「そうしてね、今度はれんも一緒に連れて行ってちょうだい」
かいとはお兄さんにギュッとしがみつき、ポチは尻尾をぶんぶん振りました。
れんもかいととお兄さんを見つけると、かいと帰ってきたんだ! 寂しかったよと言って駆け足で走ってきました。
「れん、ごめんよ、一人ぼっちにして。今度は一緒に行こうな」
かいとがいうと、れんは涙をぬぐって顔をくしゃくしゃにして笑うのでした。
かいととポチは、傘の中に戻ってきました。
「おかえり、そしてポチよかいとを守ってくれてありがとう」
電信柱の声が上の方からしました。
「かいとくんは大丈夫でしたよ、電信柱さん」
「うむ。今回は何事もなくてよかった。この間補導されたときはどうしようかと思ったからね」
電信柱の大きなため息が聞こえて、かいとはうなだれました。
「電信柱さん、僕今回外に出てわかったんです。傘の中はとても暖かいし居心地が良いけれど、いつかもう少し大きくなってもう少し自分で生きていける自信がついたら外の世界で暮らしたいんです」
かいとは背中をまっすぐに伸ばして上を見上げます。
「そんなことを私に許可を求める必要なんてないよ。外出たいならば生きたいならばそうすればいいし、戻りたくなったらいつ戻ってきたってかまわない。それが傘の世界だ」
電信柱の声は大きく、そして穏やかでたおやかでした。
「だが、生きていくためにはお金も必要だ。知識も必要だ。そのための教育を明日から追加しよう。かいとが傘を卒業した後も幸せに生きていけるように」
電信柱が微笑む気配がした。
「教育もいいけど、実践も必要だと思います。短時間でもいいから、外に出る機会を増やしてください! ここにはお店もないし、ひとも少ないです」
かいとは、訴えました。
「もちろんだよ。だけど、ひとが少ないのは関係ないと思うよ。人は一人でも生きていける人間だ。それにあんまりかいとがいなくなると、れんが寂しがる。実はゆきもいなくなってれんが不安定になっておるのだ」
「不安定? そうなんですね。知りませんでした」
かいとは、れんがいるテントの方を見つめました。
「人数は少ないが、一応ここも社会だ。そう思って行動してくれると助かるのだが……」
電信柱は静かにかいとをみおろすのでした。
かいとはほおっと小さくため息をつきました。
れんが不安定になっているなんて知りませんでした。自分も小さいときに傘の一員となった、自分より小さかったれんが、自分が外に出ることで寂しがっていることはもっときづいてあげるべきでした。
「かいとさん、大丈夫ですか?」
ポチが心配そうにかいとの手をぺろぺろ舐めます。
「僕もお父さんとお母さんがケンカしてよく家を出て独りぼっちだったことがあるから、れんのきもちはよくわかるよ。だけど、僕も僕の人生を生きたいんだ。わかってくれる? ポチ」
かいとの目から一粒の涙がつたいました。
ポチはおんおん、と答えます。
「私はいま林さんの興味を失った存在です。林さんはウサギに夢中で私には目もくれません。最近は私のごはんも時々忘れるくらいです。私もいなくなった方が良いのでしょう」
かいとはポチの頭をなでました。
いつの間にかおてつだいのお手伝いお兄さんがかいととポチの隣にしゃがみこんでいました。
「電信柱さんが良くしてくださいますよ。時々、私と一緒に外に出る訓練をしましょう」
そういうと、ミカン畑を吹き渡るそよ風のような微笑みをかいととポチに向けるのでした。
「そうしてね、今度はれんも一緒に連れて行ってちょうだい」
かいとはお兄さんにギュッとしがみつき、ポチは尻尾をぶんぶん振りました。
れんもかいととお兄さんを見つけると、かいと帰ってきたんだ! 寂しかったよと言って駆け足で走ってきました。
「れん、ごめんよ、一人ぼっちにして。今度は一緒に行こうな」
かいとがいうと、れんは涙をぬぐって顔をくしゃくしゃにして笑うのでした。
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