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オラアルブ探検隊みたび
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「あっ あそこにいるよ~。りょうさん」
アルダブラ君が、相変わらずのんびり歩いています。
「何が?」
りょうさんは、スマホを見ながら聞き返しました。
「何がって、オライオンとポニーちゃんだブ」
ぶた太はぶうぶう鼻を鳴らしました。
「木の下でぼーっとしてるよ~」
アルダブラ君が教えてあげました。
「ほんとに? すごいな」
りょうさんは、そういうと顔をあげました。
「よし子さんからメールがきたんだよ。読んであげるね」
スマホから顔を上げると、りょうさんは驚いて声をあげました。
「わっ! 本当にオライオンとポニーちゃんだ」
「りょうさん、おいらたちの言うこと信じてなかったなブ」
ぶた太は、小さな目をさらに小さくしました。
「だって、ごめんよ」
りょうさんは慌ててぶた太とアルダブラ君に謝ります。
「よし子さんの予想通りに木の下にいたからなおさらびっくりして……」
「よし子さん、オライオンとポニーちゃんのいるところがわかるんてすごいな~ 」
アルダブラ君が、目をぱちぱちさせています。
「そーっと後ろから近付いて驚かすブ」
ぶた太が、ぶひひっと笑いました。
「そうだね~」
アルダブラ君もニヤリとしましたが、りょうさんが許しませんでした。
「だめだめ。オライオンはいま心が少し弱っているんだから」
「弱ってるって?」
アルダブラ君は、口を大きく開けてりょうさんを見つめました。
「オライオンは少し疲れてしまっているようなんだ」
りょうさんは、二匹を見つめました。
「どうして疲れちゃったの?」
アルダブラ君がりょうさんに聞きました。
「誰かの悩みやお願いを聞くっていうのは、とてもエネルギーを使うんだよ。だから疲れることがあるんだ」
りょうさんは、ぶた太とアルダブラ君にもわかるように説明しました。
「みんなで遠足に行った後、『お悩み相談室』はまた行きたいって動物たちであふれかえっていただろう。オライオンはやさしいから、自分の気持ちを押し入れに閉じ込めて丁寧に話を聞いていたんだよ。」
へえ、と二匹が驚きました。
「実は、オライオンももう一度ドッグランに行きたかったらしいんだよ」
りょうさんが教えてあげます。
「ドッグランに行きたい気持ちを押し入れに閉じ込めてたの~ 押し入れってなあに?」
アルダブラ君がじっとりょうさんの顔を見たまま尋ねます。
「心の中に押し入れがあるのかぶぅぅー どんなところだブ? 心は押し入れにしまえるんだブ!」
ぶた太はしばらくぶうぶう言いながら、しきりに感心しています。
「押し入れっていうのはたとえだよ」
りょうさんは、汗をふくとお茶を一口飲みました。
ぶた太が、突然すっと立ち上がりました。
「そうかわかったブ! 悩みを聞くと疲れるのかブ!」
りょうさんは、微笑みました。
「疲れることも知らないで、おいら何度も湧水に連れて行ってくれって言っちゃったブ!」
ぶた太が少しだけすまなそうに言いました。
「僕はオライオンが疲れていると思ったから、元気になってほしいと花をあげたよ~ お散歩に行きたいことは一度だけ言ったけど~ 一度だけにしておいたよ~ りょうさん、はーいお花どうぞ~」
アルダブラ君はそこら辺に咲いている草をくわえると、りょうさんに渡しました。
「ぶた太も、アルダブラ君もわかってくれたようでうれしいよ」
りょうさんは、花のにおいをそっとかぎます。
「正直に言うよ。僕もオライオンに謝らなくてはいけないんだよ」
「何か悪いことしたブ?」
ぶた太が聞きました。
「僕が字を教えてからというものオライオンは勉強してお悩み相談室を開いただろう。そうしたら、動物たちも喜んでいるし、オライオンも自分の知識を役立てたらと思っているように見えたんだ。飼育員たちも自分の仕事がはかどるし…… 心の中でこれは本当は不自然なことだと気づいていたけど、お互いにこれでいいんだよなと思うようにしていたんだ」
草には紫色の花がついていました。
「だけど、あまりにもたくさんの動物たちが悩みを打ち明けるようになってしまったから、オライオンはストレスが溜まってしまった」りょうさんは、がくっと肩を落としました。
「ライオンが円形脱毛症になってしまうなんて、聞いたことがないよ! オライオンがみんなの悩みを聞くなんてこと自体、無理があったんだよ。オライオンに僕たちは甘えていたんだ。今回の事は僕らの怠慢が招いたんだよー」
りょうさんの目は涙で濡れていました。
「たいまんってなんだブ。新しいまんじゅうの名前かブ」
ぶた太が鼻をくすんと鳴らしました。
「まんじゅうじゃないよ。怠けてたってことだよ」
りょうさんは弱弱しく答えました。
「でも~ りょうさんたちは一生懸命僕たちのせわをしてくれていると思ってるよ~ こんなに僕たちのこと考えているし~」
アルダブラ君が、りょうさんの足にすり寄ります。
「さっき、よし子さんからメールが来たんだよ。海の家のおじさんに叱られたそうだよ」
りょうさんが、よし子さんのメールを読んであげました。
《さっきね、おじさんが言っていたの。動物が動物の悩みを聞くなんてどうかしてるって。飼育員は何をやっているんだって叱られたわ。私はおっちょこちょいでしょう。そういうところも動物たちに気を使わせてるんじゃないかって……》
「そうだったんだブ」
「確かによし子さんおっちょこちょいだけどね~」
ぶた太とアルダブラ君はうーんと言って空を見上げました。
「そこがいいところでもあるんだけどな」
りょうさんが言うと、ぶた太のおなかがぐうっと鳴りました。
オライオンとポニーちゃんは、何者かの気配を感じて後ろを振り返りました。
「わあ」
オライオンが叫びました。
「どうしてみんながいるの?」
ポニーちゃんは、どうしてどうして、と何度も鼻をふくらませました。
「よし子さんたちかと思ったら、りょうさんとアルダブラ君とぶた太がいるからびっくりしたわよ」
ポニーちゃんはもう一度鼻から大きく息を吐きました。
「驚かせてごめんよ」
りょうさんは、オライオンとポニーちゃんの背中をなでてあげます。
「オライオンが逃げ出したとき、よし子さんから動物園にSOSの電話が来たんだよ」
ポニーちゃんは、あわてて動物園に電話をかけていたよし子さんを思い出しました。
「僕が車を出そうとしたら、アルダブラ君とぶた太も一緒にって乗ってきたからさ」
りょうさんはアルダブラ君とぶた太を指さしました。
「オライオン、元気なかったし~ 園長さんたちから、海へ行ったみんなが大変なことになっている、って聞いたから~」
アルダブラ君が、目を精いっぱい大きく開いて言いました。
「おいらも、心配でいてもたってもいられなくなってアルダブラ君と一緒についてきたんだブ」
ぶた太は尻尾をピンとたてました。
「オライオン、りょうさんから聞いたんだけど、オライオンはおいらたちの悩みを聞きすぎて疲れてしまったんだなブ? おいら悪いことをしたブ。湧水に連れて行ってくれってしつこかったブ。おいらたちオライオンに頼りすぎたんだブ」
二匹が、オライオンの足元に近づいてきました。
「もう困らせないから、ゆっくり休んで~ 」
アルダブラ君とぶた太は一緒に話しかけました。
オライオンの目からまた大粒の涙がぽろぽろとこぼれ始めました。
ポニーちゃんまで涙ぐんでいます。
「謝らないでくれー。おれ様は…… 」
「オライオン、おいらたちオラアルブ探検隊だブ」
ぶた太は尻尾をぐるぐると小さく回しました。
「そうだよ~。僕たち三匹そろってオラアルブ探検隊でしょ。オライオン、一匹でそんなに頑張らないで~」
アルダブラ君は近くの少し背が高い花をくわえると、オライオンの前に置きました。
「また花だ」
オライオンの目が細くなりました。
「なんてかわいい花。揺らすと鳴りそうね」
ポニーちゃんは、顔を近づけました。
「名前はわからないけど、素敵な花だから~」
アルダブラ君が言いました。
りょうさんがスマホで写真を撮っています。
「その花は釣り鐘人参というんだよ。花言葉がやさしい愛情、感謝、誠実、大切な思い出だって」
「オライオンにピッタリの花だったね~」
アルダブラ君がにっこり笑いました。
「オライオンは、真面目なんだよなブ。それにしても、りょうさんの持っているその機械便利だなブ」
ぶた太はりょうさんがさっきからいじっているスマホを見てよだれをたらしました。
「ちょっとさわってみたいぞブウー」
りょうさんが「ちょっとだけだよ」とさわらせてあげました。
りょうさんが教えると、ぶた太は意外と器用に足を使って動かしました。
「ぶた太くんは意外と上手に使えるんだねえ~」
アルダブラ君が、目を丸くして言いました。
「意外とが余計だブ」
ぶた太は、怒りながらも嬉しそうに尻尾を振りました。
「僕には難しいかなあ~」
りょうさんはアルダブラ君にも「やってみる?」と聞きましたが、アルダブラ君はゆっくり首を振りました。
「アルダブラ君も私もなかなか難しいかもしれないわね。体も大きいし、足もこんなだもの」
ポニーちゃんが、ひひーんと前足を持ち上げました。
「そんなことないよー。ポニーちゃんにも教えてあげるよ。アルダブラ君にも」
りょうさんが、みんなにスマホのやり方を教えてあげました。
みんなが首をかしげるところは、地面に絵をかいてわかりやすく教えてあげました。
「ほーら。こうやって画面の文字のところを軽く押しながら、左右上下に指を上げたり下げたりして文字を打つんだよ。文字を打つのが難しかったら、この丸い (ぽち) を押して何かを教えてって話すといいよ。スマホが考えて答えてくれるよ」
りょうさんは、やさしくみんなに教えてあげます。
へえ~
みんなは驚きの声をあげました。
「ぶた太、このあたりでおいしいカレー屋さんはどこ?って聞いてごらん」
ぶた太はぶひっと言われた通りにやってみました。
「このあたりでおいしいカレー屋さんはどこブ? 」
『このあたりにカレー屋さんはないようです』
スマホから女の人の声がしたので、動物たちは驚いてみんな後ろに半歩下がりました。
「よし子さんみたいな声がしたわよ」とポニーちゃん。
「機械から声が聞こえたよ~~~」いつものんびりアルダブラ君もおびえています。
「びっくりしたブ!」ぶた太の耳がピンと立っています。
「怖かったぞ」オライオンの顔も引きつってたてがみが逆立っています。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよー。ここのスピーカーから声が出てるんだよ」
りょうさんが、微笑みながらみんなに声をかけました。
「お、おう。ちょっとびっくりしただけだぜ」
オライオンが、前足でたてがみの乱れを直しました。
みんなは、ゆっくりとりょうさんのところに戻ってきました。
「ぶた太、スマホは何と言っていたかい?」
りょうさんに聞かれてぶた太は嬉しそうに答えます。
「ここら辺にカレー屋さんはないって言っていたブ」
「というふうに、わからないことをスマホに聞けば、答えてくれる。便利だろう」
りょうさんはみんなの目を見て言いました。
「それでもわからないことはあるんだろブ」
ぶた太がつっこみました。
「もちろんあるさ。わからないときは、わからないけどそれに近いことを書いてある文章を情報の中から探し出してきてくれるんだよ」
みんなは、ふーんとうなずきました。
「もうそうなると、ちんぷんかんぷん! 字が読める人やオライオンがいないと難しいわね」
ポニーちゃんが、耳をぺたんと後ろにくっつけました。
「だけど、思ったより簡単だろ。ボタンを押してスマホに聞けばいいんだから。アルダブラ君とポニーちゃんは、ボタンを押すのが難しかったら口や鼻を使ったらできるんじゃないかな」
「ちょっとやってみるわ」
ポニーちゃんが、口で押そうとしました。
「むずかしいわ」
ポニーちゃんは舌も使おうとしたので、りょうさんは首を振りました。
アルダブラ君も口を大きく開けていましたが、鼻先でスマホのボタンを押してみました。
「押せないことはないけど~ 長く押していると痛いよ~ それに押しながら話すなんて無理かも~」
ポニーちゃんとアルダブラ君はしょんぼりとうなだれます。
「まあまあ、練習すればできるようになるさ」
オライオンは二匹を慰めました。
「だけど、人間はやっぱりすごいものを持っているなあ」
オライオンは、すっかり感心して言いました。
「それにしても、スマホって頭いいんだなブ。オライオンより賢いんじゃないかブ」
ぶた太が言うと、
「今度おれ様とどっちが物知りか実験してみるか」
そう言うと、オライオンは笑ってぶた太の頭を軽くこづきました。
森の木々の葉っぱががさわさわと風に揺れています。
「みんな、楽しそうね」
後ろを振り返ると、そこにはゴルちゃんを連れたよし子さんが立っていました。
「よし子さん、遅かったね」
りょうさんが、心配そうに聞きました。
「りょうさんから安否確認メールもきたし……ゴルちゃんも疲れて寝ちゃっていたから……。ゆっくり歩いてきたのよ」
よし子さんは、そうっとキャリーケースを地面におろしました。
「おはようー」
ゴルちゃんが大きなあくびをして目を覚ましました。
「海で波乗りしている夢を見ていたよー」
毛づくろいを始めたゴルちゃんを見て、みんなはほっこりしました。
アルダブラ君が、相変わらずのんびり歩いています。
「何が?」
りょうさんは、スマホを見ながら聞き返しました。
「何がって、オライオンとポニーちゃんだブ」
ぶた太はぶうぶう鼻を鳴らしました。
「木の下でぼーっとしてるよ~」
アルダブラ君が教えてあげました。
「ほんとに? すごいな」
りょうさんは、そういうと顔をあげました。
「よし子さんからメールがきたんだよ。読んであげるね」
スマホから顔を上げると、りょうさんは驚いて声をあげました。
「わっ! 本当にオライオンとポニーちゃんだ」
「りょうさん、おいらたちの言うこと信じてなかったなブ」
ぶた太は、小さな目をさらに小さくしました。
「だって、ごめんよ」
りょうさんは慌ててぶた太とアルダブラ君に謝ります。
「よし子さんの予想通りに木の下にいたからなおさらびっくりして……」
「よし子さん、オライオンとポニーちゃんのいるところがわかるんてすごいな~ 」
アルダブラ君が、目をぱちぱちさせています。
「そーっと後ろから近付いて驚かすブ」
ぶた太が、ぶひひっと笑いました。
「そうだね~」
アルダブラ君もニヤリとしましたが、りょうさんが許しませんでした。
「だめだめ。オライオンはいま心が少し弱っているんだから」
「弱ってるって?」
アルダブラ君は、口を大きく開けてりょうさんを見つめました。
「オライオンは少し疲れてしまっているようなんだ」
りょうさんは、二匹を見つめました。
「どうして疲れちゃったの?」
アルダブラ君がりょうさんに聞きました。
「誰かの悩みやお願いを聞くっていうのは、とてもエネルギーを使うんだよ。だから疲れることがあるんだ」
りょうさんは、ぶた太とアルダブラ君にもわかるように説明しました。
「みんなで遠足に行った後、『お悩み相談室』はまた行きたいって動物たちであふれかえっていただろう。オライオンはやさしいから、自分の気持ちを押し入れに閉じ込めて丁寧に話を聞いていたんだよ。」
へえ、と二匹が驚きました。
「実は、オライオンももう一度ドッグランに行きたかったらしいんだよ」
りょうさんが教えてあげます。
「ドッグランに行きたい気持ちを押し入れに閉じ込めてたの~ 押し入れってなあに?」
アルダブラ君がじっとりょうさんの顔を見たまま尋ねます。
「心の中に押し入れがあるのかぶぅぅー どんなところだブ? 心は押し入れにしまえるんだブ!」
ぶた太はしばらくぶうぶう言いながら、しきりに感心しています。
「押し入れっていうのはたとえだよ」
りょうさんは、汗をふくとお茶を一口飲みました。
ぶた太が、突然すっと立ち上がりました。
「そうかわかったブ! 悩みを聞くと疲れるのかブ!」
りょうさんは、微笑みました。
「疲れることも知らないで、おいら何度も湧水に連れて行ってくれって言っちゃったブ!」
ぶた太が少しだけすまなそうに言いました。
「僕はオライオンが疲れていると思ったから、元気になってほしいと花をあげたよ~ お散歩に行きたいことは一度だけ言ったけど~ 一度だけにしておいたよ~ りょうさん、はーいお花どうぞ~」
アルダブラ君はそこら辺に咲いている草をくわえると、りょうさんに渡しました。
「ぶた太も、アルダブラ君もわかってくれたようでうれしいよ」
りょうさんは、花のにおいをそっとかぎます。
「正直に言うよ。僕もオライオンに謝らなくてはいけないんだよ」
「何か悪いことしたブ?」
ぶた太が聞きました。
「僕が字を教えてからというものオライオンは勉強してお悩み相談室を開いただろう。そうしたら、動物たちも喜んでいるし、オライオンも自分の知識を役立てたらと思っているように見えたんだ。飼育員たちも自分の仕事がはかどるし…… 心の中でこれは本当は不自然なことだと気づいていたけど、お互いにこれでいいんだよなと思うようにしていたんだ」
草には紫色の花がついていました。
「だけど、あまりにもたくさんの動物たちが悩みを打ち明けるようになってしまったから、オライオンはストレスが溜まってしまった」りょうさんは、がくっと肩を落としました。
「ライオンが円形脱毛症になってしまうなんて、聞いたことがないよ! オライオンがみんなの悩みを聞くなんてこと自体、無理があったんだよ。オライオンに僕たちは甘えていたんだ。今回の事は僕らの怠慢が招いたんだよー」
りょうさんの目は涙で濡れていました。
「たいまんってなんだブ。新しいまんじゅうの名前かブ」
ぶた太が鼻をくすんと鳴らしました。
「まんじゅうじゃないよ。怠けてたってことだよ」
りょうさんは弱弱しく答えました。
「でも~ りょうさんたちは一生懸命僕たちのせわをしてくれていると思ってるよ~ こんなに僕たちのこと考えているし~」
アルダブラ君が、りょうさんの足にすり寄ります。
「さっき、よし子さんからメールが来たんだよ。海の家のおじさんに叱られたそうだよ」
りょうさんが、よし子さんのメールを読んであげました。
《さっきね、おじさんが言っていたの。動物が動物の悩みを聞くなんてどうかしてるって。飼育員は何をやっているんだって叱られたわ。私はおっちょこちょいでしょう。そういうところも動物たちに気を使わせてるんじゃないかって……》
「そうだったんだブ」
「確かによし子さんおっちょこちょいだけどね~」
ぶた太とアルダブラ君はうーんと言って空を見上げました。
「そこがいいところでもあるんだけどな」
りょうさんが言うと、ぶた太のおなかがぐうっと鳴りました。
オライオンとポニーちゃんは、何者かの気配を感じて後ろを振り返りました。
「わあ」
オライオンが叫びました。
「どうしてみんながいるの?」
ポニーちゃんは、どうしてどうして、と何度も鼻をふくらませました。
「よし子さんたちかと思ったら、りょうさんとアルダブラ君とぶた太がいるからびっくりしたわよ」
ポニーちゃんはもう一度鼻から大きく息を吐きました。
「驚かせてごめんよ」
りょうさんは、オライオンとポニーちゃんの背中をなでてあげます。
「オライオンが逃げ出したとき、よし子さんから動物園にSOSの電話が来たんだよ」
ポニーちゃんは、あわてて動物園に電話をかけていたよし子さんを思い出しました。
「僕が車を出そうとしたら、アルダブラ君とぶた太も一緒にって乗ってきたからさ」
りょうさんはアルダブラ君とぶた太を指さしました。
「オライオン、元気なかったし~ 園長さんたちから、海へ行ったみんなが大変なことになっている、って聞いたから~」
アルダブラ君が、目を精いっぱい大きく開いて言いました。
「おいらも、心配でいてもたってもいられなくなってアルダブラ君と一緒についてきたんだブ」
ぶた太は尻尾をピンとたてました。
「オライオン、りょうさんから聞いたんだけど、オライオンはおいらたちの悩みを聞きすぎて疲れてしまったんだなブ? おいら悪いことをしたブ。湧水に連れて行ってくれってしつこかったブ。おいらたちオライオンに頼りすぎたんだブ」
二匹が、オライオンの足元に近づいてきました。
「もう困らせないから、ゆっくり休んで~ 」
アルダブラ君とぶた太は一緒に話しかけました。
オライオンの目からまた大粒の涙がぽろぽろとこぼれ始めました。
ポニーちゃんまで涙ぐんでいます。
「謝らないでくれー。おれ様は…… 」
「オライオン、おいらたちオラアルブ探検隊だブ」
ぶた太は尻尾をぐるぐると小さく回しました。
「そうだよ~。僕たち三匹そろってオラアルブ探検隊でしょ。オライオン、一匹でそんなに頑張らないで~」
アルダブラ君は近くの少し背が高い花をくわえると、オライオンの前に置きました。
「また花だ」
オライオンの目が細くなりました。
「なんてかわいい花。揺らすと鳴りそうね」
ポニーちゃんは、顔を近づけました。
「名前はわからないけど、素敵な花だから~」
アルダブラ君が言いました。
りょうさんがスマホで写真を撮っています。
「その花は釣り鐘人参というんだよ。花言葉がやさしい愛情、感謝、誠実、大切な思い出だって」
「オライオンにピッタリの花だったね~」
アルダブラ君がにっこり笑いました。
「オライオンは、真面目なんだよなブ。それにしても、りょうさんの持っているその機械便利だなブ」
ぶた太はりょうさんがさっきからいじっているスマホを見てよだれをたらしました。
「ちょっとさわってみたいぞブウー」
りょうさんが「ちょっとだけだよ」とさわらせてあげました。
りょうさんが教えると、ぶた太は意外と器用に足を使って動かしました。
「ぶた太くんは意外と上手に使えるんだねえ~」
アルダブラ君が、目を丸くして言いました。
「意外とが余計だブ」
ぶた太は、怒りながらも嬉しそうに尻尾を振りました。
「僕には難しいかなあ~」
りょうさんはアルダブラ君にも「やってみる?」と聞きましたが、アルダブラ君はゆっくり首を振りました。
「アルダブラ君も私もなかなか難しいかもしれないわね。体も大きいし、足もこんなだもの」
ポニーちゃんが、ひひーんと前足を持ち上げました。
「そんなことないよー。ポニーちゃんにも教えてあげるよ。アルダブラ君にも」
りょうさんが、みんなにスマホのやり方を教えてあげました。
みんなが首をかしげるところは、地面に絵をかいてわかりやすく教えてあげました。
「ほーら。こうやって画面の文字のところを軽く押しながら、左右上下に指を上げたり下げたりして文字を打つんだよ。文字を打つのが難しかったら、この丸い (ぽち) を押して何かを教えてって話すといいよ。スマホが考えて答えてくれるよ」
りょうさんは、やさしくみんなに教えてあげます。
へえ~
みんなは驚きの声をあげました。
「ぶた太、このあたりでおいしいカレー屋さんはどこ?って聞いてごらん」
ぶた太はぶひっと言われた通りにやってみました。
「このあたりでおいしいカレー屋さんはどこブ? 」
『このあたりにカレー屋さんはないようです』
スマホから女の人の声がしたので、動物たちは驚いてみんな後ろに半歩下がりました。
「よし子さんみたいな声がしたわよ」とポニーちゃん。
「機械から声が聞こえたよ~~~」いつものんびりアルダブラ君もおびえています。
「びっくりしたブ!」ぶた太の耳がピンと立っています。
「怖かったぞ」オライオンの顔も引きつってたてがみが逆立っています。
「そんなに怖がらなくても大丈夫だよー。ここのスピーカーから声が出てるんだよ」
りょうさんが、微笑みながらみんなに声をかけました。
「お、おう。ちょっとびっくりしただけだぜ」
オライオンが、前足でたてがみの乱れを直しました。
みんなは、ゆっくりとりょうさんのところに戻ってきました。
「ぶた太、スマホは何と言っていたかい?」
りょうさんに聞かれてぶた太は嬉しそうに答えます。
「ここら辺にカレー屋さんはないって言っていたブ」
「というふうに、わからないことをスマホに聞けば、答えてくれる。便利だろう」
りょうさんはみんなの目を見て言いました。
「それでもわからないことはあるんだろブ」
ぶた太がつっこみました。
「もちろんあるさ。わからないときは、わからないけどそれに近いことを書いてある文章を情報の中から探し出してきてくれるんだよ」
みんなは、ふーんとうなずきました。
「もうそうなると、ちんぷんかんぷん! 字が読める人やオライオンがいないと難しいわね」
ポニーちゃんが、耳をぺたんと後ろにくっつけました。
「だけど、思ったより簡単だろ。ボタンを押してスマホに聞けばいいんだから。アルダブラ君とポニーちゃんは、ボタンを押すのが難しかったら口や鼻を使ったらできるんじゃないかな」
「ちょっとやってみるわ」
ポニーちゃんが、口で押そうとしました。
「むずかしいわ」
ポニーちゃんは舌も使おうとしたので、りょうさんは首を振りました。
アルダブラ君も口を大きく開けていましたが、鼻先でスマホのボタンを押してみました。
「押せないことはないけど~ 長く押していると痛いよ~ それに押しながら話すなんて無理かも~」
ポニーちゃんとアルダブラ君はしょんぼりとうなだれます。
「まあまあ、練習すればできるようになるさ」
オライオンは二匹を慰めました。
「だけど、人間はやっぱりすごいものを持っているなあ」
オライオンは、すっかり感心して言いました。
「それにしても、スマホって頭いいんだなブ。オライオンより賢いんじゃないかブ」
ぶた太が言うと、
「今度おれ様とどっちが物知りか実験してみるか」
そう言うと、オライオンは笑ってぶた太の頭を軽くこづきました。
森の木々の葉っぱががさわさわと風に揺れています。
「みんな、楽しそうね」
後ろを振り返ると、そこにはゴルちゃんを連れたよし子さんが立っていました。
「よし子さん、遅かったね」
りょうさんが、心配そうに聞きました。
「りょうさんから安否確認メールもきたし……ゴルちゃんも疲れて寝ちゃっていたから……。ゆっくり歩いてきたのよ」
よし子さんは、そうっとキャリーケースを地面におろしました。
「おはようー」
ゴルちゃんが大きなあくびをして目を覚ましました。
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