夢世界ナル

白蓮

文字の大きさ
上 下
9 / 37

2話-3 意義

しおりを挟む
「う・・・ん」
 気を失った。私は目をゆっくりと開けて、体を動かす。動かせる事を確認した後、ゆっくりと立ち上がる。
「今まで何を・・・」
 何も思い出せない。何をしていたのか。それさえもはっきりと言って曖昧だった。
「やっと気付いたわね」
 目の前にはナルがいた。椅子に座りながら、私を見ていた。
「約10分ぐらい寝てたよ」
 寝ていたと言葉を聞いた時、私はやっと思い出した。すぐに体を触る。
「・・・繋がってる。切断されてない」
 さっきは確実に真っ二つになっていた。だけど、今は何も変わっていない。切断された痕跡がない。
 一安心している時、ナルは椅子から立ち上がる。
「この世界は切断されても元に戻る。なにせ、私達の世界だから」
 そう言った。ナルが座っていた椅子はそれと同時に消え去った。
 私はその場に立ち上がり、ナルの方を見る。だが、ナルは素早く武器を取り出す。
「さあ、続きをしましょう。まだまだ長い。あなたを鍛えるには十分ですから」
「これをやらないといけない?」
「えぇ、生き残るにはこれが最速です」
 私は鎌を取り出す。それを震えながらもしっかりと持ち、構える。
「それ、それだけでいいです。ここから長くなりそうですね」
 そう言った彼女の目は獲物を狙う獣のような目つきはと変わっていた。



「・・・」
 何回死んだのか分からなくなる。
「・・・・・・」
 死ぬ事も慣れてしまった。だが、その分経験値として積み重なっていく。
「・・・痛い」
 だが、体が再生されるからって、死なない骨折とかは妙に痛みが残る。これは夢であるのが唯一の幸いだ。
「結構扱えるようになったわね」
 私は疲れ果て、その場に座り込んでいた。持っていた大釜は手から落ち、少し離れた所に置いてあった。
「でも今はそれでいい。ある程度戦闘が出来れば、生存確率が上がる」
「・・・一ついい?」
 彼女が喋っている時、ふと私は声を上げた。
「何?」
「もし、あの世界で死んだ時、どうなるの?」
「言ってなかったかなそれ」
「うん。聞いてない」
 もし聞いていたとしても、多分死に過ぎて忘れてしまったかもしれない。だけど、ここは何度も蘇るけど、あちらの世界ではどうなるのかは気になる。
「死ぬ事はない。だけど、戻る事も出来ない」
「・・・どういう事?」
 戻る事が出来ない・・・意味が分からないが、死ぬ事はないのはいい。
「魂を失う。それは現実の肉体は生きてるが、死んでる。植物状態になる」
「・・・え?」
 なんかそれらしき話をしてた気がする。ただの思い違いだと思うけど。だけど、それは死んではダメって意味なのは理解出来る。彼女が私を鍛えてくれるように死なないように考慮してくれている。
 それを聞いた後、世界は揺れ始めた。
「そろそろね。お目覚めの時間だ」
 ナルは微笑みがら、私を見て来る。振動はどんどん大きくなり、私の上から瓦礫が落ちて来る。それを避ける時間もなく、私をぺちゃんこにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

カラスに襲われているトカゲを助けたらドラゴンだった。

克全
ファンタジー
爬虫類は嫌いだったが、カラスに襲われているのを見かけたら助けずにはいられなかった。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

夢うつつ

平野 裕
ファンタジー
夢でみた不思議な情景をもとに書いています。とても短いSSです。 ※1話完結でゆっくりと続きます ※夢日記のようなものです

天使の住まう都から

星ノ雫
ファンタジー
夜勤帰りの朝、いじめで川に落とされた女子中学生を助けるも代わりに命を落としてしまったおっさんが異世界で第二の人生を歩む物語です。高見沢 慶太は異世界へ転生させてもらえる代わりに、女神様から異世界でもとある少女を一人助けて欲しいと頼まれてしまいます。それを了承し転生した場所は、魔王侵攻を阻む天使が興した国の都でした。慶太はその都で冒険者として生きていく事になるのですが、果たして少女と出会う事ができるのでしょうか。初めての小説です。よろしければ読んでみてください。この作品は小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+にも掲載しています。 ※第12回ネット小説大賞(ネトコン12)の一次選考を通過しました!

ドマゾネスの掟 ~ドMな褐色少女は僕に責められたがっている~

ファンタジー
探検家の主人公は伝説の部族ドマゾネスを探すために密林の奥へ進むが道に迷ってしまう。 そんな彼をドマゾネスの少女カリナが発見してドマゾネスの村に連れていく。 そして、目覚めた彼はドマゾネスたちから歓迎され、子種を求められるのだった。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...