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第2章 ゼンパンの素質とシークレットガチャスキル
第89話 転移魔法
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「ラッキー君には驚きの連続だ。まさかゼンパンの素質にそんな力があるとは・・・」
「はい。今まで伝えず申し訳ありませんでした。」
「いやかまわない。俺だって同じようにしたさ。それに目の前で転移魔法を見せてくれなければ素直に信じたかわからないしな。」
シークレットガチャスキルで転移魔法の素質を手に入れたラッキーは、王国武道会で転移魔法を使えば必ず大騒ぎになるとシルフィーとマリアに言われ、その対策の為、フロンダールにいるマリアの父親のユリウス子爵にゼンパンの素質を話した。
「はい。俺自身始めは何もわからなかったです。本当に毎日毎日パンばかり出てましたから。」
「それは知ってるよ。私も王城では見たしね。だとしてもこれは・・・。ストライク公爵が君を追放したのを哀れに思うよ。もう少し我慢強く待ってればと思うとね。」
「それはまあそうですね。追放された時は恨みはしましたが今はそれ程恨んでもいません。追放されたお陰で今の力も今の仲間にも出会えましたから。ただ・・・メルトのヤツは許せません。俺がお世話になった使用人やメイドにひどい事をするなんて。アイツだけはゆるせないですね。だから。」
「うむ。わかっている。ストライク公爵には気の毒だが、王国武道会が始まるまではラッキー君の実力は今まで通り隠す方向で行こうと思う。確かに転移魔法を始めゼンパンの素質はとても優秀だ。だが今、公爵にこの事が知られたらきっと君を排除しようとするだろう。」
「・・・そうですね。」
「だから今は力を付けろ。ミスリルの剣しかり、レベルアップしかり、転移魔法もだ。私が知る限り転移魔法は一度行った事のある街へ一瞬で行けるというものだ。今は1mしか転移できないかもしれないが、極めれば大きな武器になるのは間違いない。」
「はい。俺は知らなかったんですがシルフィーやマリアから聞きました。とてもレアな素質だって。」
「ああ。屋敷に転移魔法に書かれた本が何冊かあったはずだ。後でマリアに案内させよう。ラッキー君も読んでみればどういった素質かわかるだろう。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「それと、鍛冶師の方は手配できたぞ。明日にでも行ってみるがいい。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
ユリウス子爵との話を終えたラッキー達はマリアに書庫に連れてきてもらっていた。
「ここが書庫です。ラッキー様の家やシルフィーの家にある書庫と比べると小さいとは思いますが、お父様がオリジナルの本を集めていますので、正確さは間違いないと思います。」
「そうなんだ。オリジナル本があるのはすごいね。家はたしか複写本が多かった気がするな。」
「私の所も数は多いけどほとんどが複写本だわ。」
この世界で本はとても貴重なモノだった。印刷技術がないので複製がとても難しいからだ。複製する場合は本を丸ごと書き写さなければならない。複製された本はオリジナルと一字一句同じモノもあれば、内容が変わっていたりするものもある。なのでオリジナルの本は更に希少価値が高かった。
「転移魔法について書かれた本はこの2冊ですね。」
そう言って、マリアはラッキーの元へ2冊の本をもってきた。
『転移魔法によって英雄と呼ばれた男マルチーズの冒険譚』
『転移で内政チートだ。商人タルネコの一生』
「ありがとうマリア。」
『ラッキー。俺は退屈なんだぞー。』
「そういうなよ。これも大事な事なんだから。」
「リルちゃんはどうしたんですか?」
「退屈だってさ。」
「あらっ。じゃあリルちゃんは私と厨房にいきましょうか。食材があれば何か作ってもらいましょ。」
『本当かマリアー。俺は肉がいいんだぞー。』
「ありがとうマリア。リルは肉がいいってさ。」
マリアはリルを抱きかかえて書庫を出て行った。
マリアとリルが出て行ったので、ラッキーは先ほどの本を、シルフィーは自分に関係ありそうな魔法関連の本を読んでいた。
(なるほどな。たしかに転移魔法は便利だな。)
『転移魔法によって英雄と呼ばれた男マルチーズの冒険譚』
マルチーズ自身は強くもないどこにでもいる普通の人だった。英雄と呼ばれたのは転移魔法を使いある時は魔物に襲われた街への救援物資や兵士を送り届けたり、またある時は攻め込まれて絶対絶命の時に大勢の人を転移で逃がしたりと、魔法を使って多くの人の役に立ち英雄と呼ばれた男の物語だった。
『転移で内政チートだ。商人タルネコの一生』
仕入れた商品を一番高値で売れる街に一瞬で移動できる為、タルネコは多くの財を築いた。安く仕入れ高く売る。ただそれだけだが、転移魔法があると移動の時間もかからない。移動で雇う護衛の費用もいらない。必要なモノを必要なだけ仕入、必要な分だけ販売する。そうした無駄のないタルネコの人生について書かれた内容だった。
転移魔法に関する本を読んで、ラッキーはわかった事をまとめていた。
・転移魔法は、行った事のある場所ならどんなに遠くても一瞬で行ける。
・転移魔法は、魔力を多く使う為無制限に使えない。
・転移魔法は、自分だけでなく他の人も一緒に移動できる。
(重要なのはこれぐらいかな。とりあえず今の移動できる距離が1mなのはわかってるけど、一日に何回使えるのか。一度に何人転移できるのかは調べておく必要があるな。)
ユリウス子爵邸の書庫で転移魔法について調べたラッキー。気づいたら日が落ちていた事に気付いた。
「もうこんな時間か・・・。知りたい事は知れたしここまでにするか。」
ラッキーはシルフィーの元へ行き声をかける。シルフィーも気になる本があったのか集中して本を読んでいた。マリアも離れた所で本を読んでいた。リルは・・・マリアの膝の上でスヤスヤ眠っていた。
明日はミスリル装備について相談する為、子爵邸を後にし宿屋に戻るのだった。
「はい。今まで伝えず申し訳ありませんでした。」
「いやかまわない。俺だって同じようにしたさ。それに目の前で転移魔法を見せてくれなければ素直に信じたかわからないしな。」
シークレットガチャスキルで転移魔法の素質を手に入れたラッキーは、王国武道会で転移魔法を使えば必ず大騒ぎになるとシルフィーとマリアに言われ、その対策の為、フロンダールにいるマリアの父親のユリウス子爵にゼンパンの素質を話した。
「はい。俺自身始めは何もわからなかったです。本当に毎日毎日パンばかり出てましたから。」
「それは知ってるよ。私も王城では見たしね。だとしてもこれは・・・。ストライク公爵が君を追放したのを哀れに思うよ。もう少し我慢強く待ってればと思うとね。」
「それはまあそうですね。追放された時は恨みはしましたが今はそれ程恨んでもいません。追放されたお陰で今の力も今の仲間にも出会えましたから。ただ・・・メルトのヤツは許せません。俺がお世話になった使用人やメイドにひどい事をするなんて。アイツだけはゆるせないですね。だから。」
「うむ。わかっている。ストライク公爵には気の毒だが、王国武道会が始まるまではラッキー君の実力は今まで通り隠す方向で行こうと思う。確かに転移魔法を始めゼンパンの素質はとても優秀だ。だが今、公爵にこの事が知られたらきっと君を排除しようとするだろう。」
「・・・そうですね。」
「だから今は力を付けろ。ミスリルの剣しかり、レベルアップしかり、転移魔法もだ。私が知る限り転移魔法は一度行った事のある街へ一瞬で行けるというものだ。今は1mしか転移できないかもしれないが、極めれば大きな武器になるのは間違いない。」
「はい。俺は知らなかったんですがシルフィーやマリアから聞きました。とてもレアな素質だって。」
「ああ。屋敷に転移魔法に書かれた本が何冊かあったはずだ。後でマリアに案内させよう。ラッキー君も読んでみればどういった素質かわかるだろう。」
「ありがとうございます。とても助かります。」
「それと、鍛冶師の方は手配できたぞ。明日にでも行ってみるがいい。」
「本当ですか!?ありがとうございます。」
ユリウス子爵との話を終えたラッキー達はマリアに書庫に連れてきてもらっていた。
「ここが書庫です。ラッキー様の家やシルフィーの家にある書庫と比べると小さいとは思いますが、お父様がオリジナルの本を集めていますので、正確さは間違いないと思います。」
「そうなんだ。オリジナル本があるのはすごいね。家はたしか複写本が多かった気がするな。」
「私の所も数は多いけどほとんどが複写本だわ。」
この世界で本はとても貴重なモノだった。印刷技術がないので複製がとても難しいからだ。複製する場合は本を丸ごと書き写さなければならない。複製された本はオリジナルと一字一句同じモノもあれば、内容が変わっていたりするものもある。なのでオリジナルの本は更に希少価値が高かった。
「転移魔法について書かれた本はこの2冊ですね。」
そう言って、マリアはラッキーの元へ2冊の本をもってきた。
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「ありがとうマリア。」
『ラッキー。俺は退屈なんだぞー。』
「そういうなよ。これも大事な事なんだから。」
「リルちゃんはどうしたんですか?」
「退屈だってさ。」
「あらっ。じゃあリルちゃんは私と厨房にいきましょうか。食材があれば何か作ってもらいましょ。」
『本当かマリアー。俺は肉がいいんだぞー。』
「ありがとうマリア。リルは肉がいいってさ。」
マリアはリルを抱きかかえて書庫を出て行った。
マリアとリルが出て行ったので、ラッキーは先ほどの本を、シルフィーは自分に関係ありそうな魔法関連の本を読んでいた。
(なるほどな。たしかに転移魔法は便利だな。)
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