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第四章 宗教国家ローズベール

第167話 アルプス王国のアイドル⁉

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「ヤバいにゃヤバいにゃ。」

「どうしたんだラック?そんな焦ったような顔して。」

「今日もスズのおっかけが増えてたにゃ。このままじゃアタシの事なんかみんな忘れちゃうにゃ。ジェーンに相談したらジェーンもスズにメロメロだったにゃ。もうダメにゃ。」

「は~。何かと思えば又その話かよ。よかったじゃないか。スズが人化できて、それでみんなに可愛がられてて。」

「アタシも始めはそう思ったにゃが、可愛がり方が尋常じゃないにゃ。アレは信仰にゃ。もはや教祖様レベルにゃ。スズが黒と言えば、白いモノも黒になるレベルにゃ。」

「でも俺は普通だぞ?ラックもスズも同じ仲間と思ってるけど?」

「ううう・・・カインだけにゃ。アタシの癒しはカインだけにゃーーー。」

ラックはそう言うと鳴きながらカインに抱き着いた。

事の発端は数日前まで遡る。カイン達が黄亀ダンジョンを再攻略した時に、ゴールドスライムのゴルちゃんと、シルバースライムのシシルちゃんが、人化してるのを見て、スズも林太郎の元で人化の練習をした。そして見事スズは、スライム型から人型への人化が可能になった。

その時はよかった。皆がスズを褒め、スズもとても喜んでいた。そこまではよかった。おかしくなったのはそこからだ。スズの人化した姿は白いスライムを思わせる真っ白い髪。大きくつぶらな瞳。ラックよりも身長は低いがだいたい10歳ぐらいのとても可愛らしい姿だった。

スライムの時ですら周りにチヤホヤされていたスズは、人化してさらにそれが拡大したのだ。道を歩けば声を掛けられ宿にまで人が押しかけてくる始末だ。更にギルドではスズちゃんファンクラブまでできていた。

林太郎が人化をスズに教えなかった理由が良く分かる結果となったのだ。始めはカインも受け流していたが、ラックの方が我慢できなくなっていたのだ。

(まあラックの言う事もわからないではないけど・・・。まさかここまでスズが人気になるとは思わなかったな。ゴッドノイヤシの効果なのかな?可能性はあるな。スズに悪気がないだけにどうするべきか・・・。まあこういうのは一過性のモノだから徐々に落ち着くとは思うけど。ファンクラブとかさすが異世界だよな~。)

「所でスズはどうした?」

「スズはいつものパン屋さんに呼ばれて行ったにゃ。スズが店頭に立つと売上が何倍にもなるにゃ。」

「なるほど。たしかにその手の依頼が最近は多いよな。スズもいくだけで報酬が貰えるから俺達の為になるって頑張ってるもんな。」

「わかるんにゃ。わかるんにゃ。スズは悪くないんにゃ。あ~アタシは自分がいやになるにゃ。こんな事思いたくないのに、スズを見てると嫉妬してしまうにゃ。」

「俺からしたらラックとスズは仲の良い姉妹みたいなもんだぞ。嫉妬じゃなくてラックならスズが褒められたら、姉である自分も褒められたみたいって笑っていられるんじゃないか?」

「仲の良い姉妹??」

「ああ。二人はいつも一緒にいるじゃないか?俺はそう思ってたけど・・・ラックは違ったのか?」

ラックは、ひとしきりカインの胸で泣いた後笑った。

「やっぱりカインは最高にゃ。カインの言う通りにゃ。カインの言葉で吹っ切れたにゃ。そうと決まれば早速行くにゃ。」

「えっ、どこに?」

「可愛い妹のスズの所に決まってるにゃ。アイドルには護衛が必要にゃ。お姉ちゃんとしてスズを守る必要があるにゃ。そして、スズにお姉ちゃんって呼んでもらうにゃ。」

「なるほど。たしかにそうだな。」

「ちなみにカインはお兄ちゃんにゃ。兄妹は恋愛禁止にゃ。これで悩みもなくなるにゃ。」

(そういう意味で言ったんじゃないんだけど・・・まあラックが元気になったし良しとするか。)

カインとラックは、スズがいるパン屋へと向かった。予想通り、パン屋は行列になっていたがカイン達は行列の間をぬって中に入った。

「カイン様。ラック様。どうしたっすか?」

「手伝いに来たにゃ。お姉ちゃんは妹を守る義務があるにゃ。」

「お姉ちゃん・・・っすか?」

「その話は帰ってゆっくりするにゃ。まだまだ行列が出来てるにゃ。アタシとカインも手伝いするにゃ。」

カインとラックがお店を手伝い、一時間程すると、商品が全て完売となった。パン屋にお礼を言われ、報酬をもらったカイン達は、仲良く家へと戻っていく。

ラックは仲良くスズと手を繋ぎ、

「スズ、最近スズに対して冷たかったにゃ。ごめんにゃ。」

「そんな事ないっす。カイン様もラック様も僕によくしてくれてるっす。」

「スズ。これからはラック様じゃなくてお姉ちゃんと呼んでほしいにゃ。スズは家族にゃ。家族を様で呼ぶのはおかしいにゃ。」

「ラック様・・・。」

「お姉ちゃんにゃ。」

「ラック・・・お姉ちゃん。」

「可愛いにゃーーー!ちなみにカインにも様は禁止にゃ。カインお兄ちゃんにゃ。」

「カインお兄ちゃん。」

「ラックの言うように俺達は家族も同然だ。こうやって呼び合うのもいいな。お兄ちゃんって言われるのはちょっと照れるけどな。」

「カインが照れてるにゃ。ほらカインも手を繋ぐにゃ。真ん中がスズで仲良く帰るにゃ。」

「うれしいっす。林太郎お兄ちゃんもいるっすけど、カインお兄ちゃんとラックお姉ちゃんと家族になれてうれしいっす。」

(こう言うのも悪くないな。なんかほっこりする。家族か・・・。)

カイン達は三人仲良く手を繋いで家へと帰るのだった。
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