上 下
94 / 193
第三章 アルプス王国のお姫様

第94話 亀一郎の黒亀ダンジョン

しおりを挟む
「ふ~やっと解放されたな。」

「バニーもしつこいにゃ。」

新しく借りた家について根掘り葉掘り聞かれたカイン達は、ギルドを出て黒亀ダンジョンへと向かっていた。

「ギルドで大分時間を取られたな。今日は日帰りの予定にしてたけど、ダンジョン内で泊まるか?食料なんかはアイテムボックスに入ってるし。」

「わかったにゃ。アタシは大丈夫にゃ。この四日間は必死に稼ぐにゃ。どうせ買うなら大きなベッドが欲しいにゃ。」

「なるほど。たしかにな。そうだな~。稼いだお金の半分は家に使うか。残り半分は神様へ寄付するのでどうだ?」

「それは名案にゃ。ちなみに次の神の開放に必要な金額はいくらにゃ?」

「金貨170枚ぐらいだな。ブラックダイヤは金貨10枚からって言ってたから、30個ぐらい取れればいけるかな。」

(四日間で1個か2個しか見つからないブラックダイヤモンドを30個か・・・実際にダンジョンに行ってみないとわからないけど、普通に考えれば無謀も良い所だよな。)

そんな事を話しながら進んで行くと、目の前に大きな亀が姿を現した。

「甲羅が真っ黒にゃ。あれが黒亀ダンジョンにゃ?」

「ああ。やっぱ甲羅の色でダンジョンがわかるのはわかりやすいよな。それに・・・甲羅を掃除してる人がいるのもよくある光景だな。」

カインは目の前に見える大きな亀を鑑定した。

名前:ジョン・亀一郎
この世界にダンッとそびえ立つ巨大なジョン・亀一郎は、中に入ると別の空間へと飛ばされる。そこは、魔物が現れ、宝箱という名の素敵アイテムが入ってる箱が現れるアトラクション施設。ジョン・亀一郎は、その名の通り長男だ。皆が略してダンジョンと呼ぶこの亀の経済効果はとてつもない。これは内緒だが、甲羅を掃除してもドロップ率は上がらない。しかし、綺麗好きなジョン兄弟はその事を誰にも伝えない。

(説明はだいたい他のダンジョンと一緒だな。ブラックダイヤモンドの事もわかるかと思ったけど、さすがにそれは出てこないか・・・まあそれはダンジョンに入ればわかるか。)

カインとラックの二人は、黒亀ダンジョンを眺めて、そして中へと入った。

「ダンジョンの中は他と一緒にゃ。」

「ああ。まずは下に行く階段を探すか。それとブラックダイヤモンドがある場所は壁が光ってるってバニーさんが言ってたから壁は注意して見てくれ。」

「わかったにゃ。」

(ダンジョンに来るのも久しぶりだな。緑亀ダンジョンに青亀ダンジョンときて黒亀ダンジョンか~。身代わりの指輪を手に入れる為には、いつかは来ると思ってた場所だ。今回は攻略はしないけど、どんな感じか見ておくのは今後の参考になる。それにブラックダイヤで稼ぐ事が出来れば、寄付も生活も安定する。気合入れないと。)

黒亀ダンジョンに入り、地下2階を探してダンジョンを進むカインとラック。いまだ攻略されていないダンジョンといえど、地下1階に出る魔物はスライムやスモールラビットなどの弱い魔物ばかりなので、ストレスなくドンドンダンジョン内を進んで行く。

すると・・・

「カイン。あれを見るにゃ。壁が光ってるにゃ。」

ラックの指さした方を見ると、ダンジョンの壁がうっすらと光っていた。

「たしかに光ってるな。これがバニーさんの言ってたブラックダイヤがあるかもしれない場所か。」

「カイン。早く錬金術でブラックダイヤを取り出すにゃ。」

「待て待て。今からするから落ち着けって。」

カインは、光る壁に手を当てて錬金術を使った。すると・・・

「何も出てこないにゃ。」

「え~っと・・・ブラックダイヤが分からないから分離が使えなかった・・・黒いダイヤをイメージしてみたんだけど無理みたいだ。一度現物を見れば、それを分離で取り出す事はできると思うんだけど・・・」

「どういう事にゃ?」

「俺の錬金術って素材を分離するんだけど、何を分離するのかわかってないと、ちゃんと発動しないんだ。たとえばこの壁がどういう素材でできてるのか何種類の素材がこの壁にはあるのか?俺が分離で取り出せるのは、わかってる素材だけなんだ。例えば・・・」

カインは、再度壁に手を当てて錬金術を発動した。すると、壁からビー玉程の鉄の塊が現れた。

「今のは分離で鉄を取り出したんだ。この壁には鉄が含まれてたから取り出せたって感じだな。」

「という事はどういう事にゃ?」

「一度自力でブラックダイヤを見つけないと錬金術は使えないって事だな・・・」

「まじかにゃーー!!」

「ゴメン。そこまで深く考えてなかった。」

(こんな事ならギルドでバニーさんに実物を見せてもらうんだったな。今ならまだ地下1階だしギルドに戻る事もできるけど・・・)

「一度ギルドに戻るか?バニーさんならブラックダイヤを見せてくれると思うけど?」

「しょうがないにゃ。頑張って壁を掘るにゃ。ツルハシも持ってきたし丁度良いにゃ。一つ見つけるまでは自力でがんばるにゃ。」

ラックはそう言うと、自前のマジックバッグからツルハシを取り出した。

「カインも一緒に掘るにゃ。」

「うん。」

カインもアイテムボックスからツルハシを取り出し、ラックの横に並んで壁を掘っていく。

ブラックダイヤを求めて、カインとラックはその後、1時間みっちりとダンジョンの壁を掘り続けるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

スキルは見るだけ簡単入手! ~ローグの冒険譚~

夜夢
ファンタジー
剣と魔法の世界に生まれた主人公は、子供の頃から何の取り柄もない平凡な村人だった。 盗賊が村を襲うまでは…。 成長したある日、狩りに出掛けた森で不思議な子供と出会った。助けてあげると、不思議な子供からこれまた不思議な力を貰った。 不思議な力を貰った主人公は、両親と親友を救う旅に出ることにした。 王道ファンタジー物語。

「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした

御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。 異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。 女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。 ――しかし、彼は知らなかった。 転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――

異世界転生!俺はここで生きていく

おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。 同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。 今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。 だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。 意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった! 魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。 俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。 それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ! 小説家になろうでも投稿しています。 メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。 宜しくお願いします。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

処理中です...