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第二章 シフォン子爵領とダンジョン事情

第69話 ゲーム脳

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地下10階のボスを倒したカインとラックは順調にダンジョンを進み、地下20階のボスを倒した所で、一度地上に帰った。そして翌日から再度ダンジョンへ挑み、現在は地下25階を探索していた。

「徐々に魔物が強くなって来たにゃ。」

「そうだな。だけど正直その方がありがたい。強い魔物の方が経験値も多いからレベルが上がるからな。」

「この世界の人達は強い魔物が出ると嫌がるのにカインは逆にゃ。」

「この世界の人達にはレベルが分からないからな。魔物を倒してたら強くなった気がするから倒せば強くなるっていうのは知ってるだろうけど、それって毎日剣の素振りをしたって感じる事だからな。それにRPGみたいなゲームも知らないんだししょうがないだろ。」

(前世の知識があるってかなりこの世界で有用だよな。チート能力に目が行きがちだけど、このレベルの概念なんかすごい重要だ。これがあるから俺は魔物も積極的に倒すし、倒せるなら強い魔物でも大歓迎だと思ってしまう。欲を言えばゲームみたいに大量に経験値をくれる魔物とか、大量に金貨を落とす魔物とかが出てくれればいいんだけど、さすがにそれは欲張りすぎだよな。)

「カインのお陰でアタシも強くなったから何も言わないにゃ。だけどそんなに強くなってどうするにゃ?」

「そりゃ死にたくないからな。仮にこの世界に魔王とかが居てみろ。俺なんか魔法一つで死んじゃうぜ。」

「たしか大魔王は初級の火魔法一つが極大級の威力なんだったかにゃ?」

「それはアニメの話だけどな。だけどこの世界で生き続けるには強いに越した事がない。満喫する為にはお金はいるし、お金を稼ぐ為には強くなってより多くのお金を貰える依頼を受けないといけない。全てが強さに直結してるからな。まあそこに魔物がいるなら倒してレベルを上げるっしょっていうのも一つだけどな。」

「ゲーム脳にゃ。」

「しょうがないだろ。前世の頃からゲームとかアニメは好きだったんだから。」

「まあアタシはカインにずっとついて行くから構わないにゃ。だけど、ゲーム脳は気を付けた方がいいにゃ。死んだらロードできないにゃ。」

「・・・わかってるよ。だからガンガン行こうぜじゃなくて命を大事に作戦にしてるだろ?」

「時々、ガンガン行こうぜに命令が変更されてる時があるにゃ。」

「・・・気を付けるよ。」

(ラックの言う通りかもしれないな。ゲーム脳か・・・魔物を倒せば強くなって、倒した分だけお金が稼げるこの世界をゲームみたいに思ってる所は確かにある。神の奇跡だってそうだ。ラックなりに忠告してくれたんだな。感謝しないと。)

「このまま先に進むのかにゃ?」

「いや今日はこの辺で休もう。ラックの言う通りだ。早くレベルを上げたくて焦ってたのかもしれない。明日明後日はここから地下30階までの魔物を少しでも多く倒して経験を積もう。強い魔物相手に俺も少しでも早く刀に慣れておかないとな。」

「さすがカインにゃ。これなら安心してついていけるにゃ。」

「ああ目が覚めたよ。ありがとうなラック。」

「気にしなくていいにゃ。アタシはカインの相棒で正妻にゃ。当然の事にゃ。」

(正妻ネタはまだ引っ張ってたんだ・・・だけどまあそんな未来も楽しいかもな。なんだかんだラックといるのは楽しいし、正直いない生活が考えられない程にはなってるもんな。よし。俺がしっかりしてラックを何が何でも守る為にも明日からもがんばらないと。)

レベル上げ効率の事ばかり考えて、ドンドン先に進もうとするカインを、ラックが事前に止めた事で、カインは冷静に考える事ができるようになった。全てが順調に進んでいると、これぐらい大丈夫とか、まだまだいけると思って行動が大胆になるのは普通の事だ。カインはラックが居た事で実は命が助かったのかもしれなかった。

そして翌日からは、堅実に魔物を倒しながら、ダンジョンを攻略していった。部屋に入る前は、気配察知でどんな魔物がいるか調べ、罠の可能性も考えて慎重に行動した。

前日まではイケイケドンドンで、罠や魔物の種類を気にする事なく前へ前へ進んでいたので、攻略するペースは各段に落ちたが、途中で問題が起こる事はなかった。

そして・・・

「ラック、相談なんだけどここの罠を踏んでみないか?」

カインとラックの目の前には、色が違って少しだけ盛り上がってる土があり、ギルドでそれはモンスターハウスに強制転移させられる罠だと聞いていた。

「それはモンスターハウスへ転移される罠にゃ。カインはバカなのかにゃ?」

「だから相談だって言ってんだろ?何も考えなしって訳じゃないんだ。モンスターハウスの罠はうまく使えば効率が最高にいい。もちろんこの世界で、モンスターハウスの罠を見つけてわざと踏む奴なんかいないだろう。だけど、この階層の魔物と戦ってみて俺とラックの実力なら100体来ても対処は可能だと思ったんだ。魔力だってまだ残ってる。どうだろうか?」

「考え無しに又ゲーム脳を発動してるのかと思ったにゃが、カインがそこまで考えて臨むのならアタシもOKにゃ。カインとアタシのコンビなら100体来ても大丈夫にゃ。」

「ありがとうラック。一応作戦を伝えておく。100体いるかどうかはわからないけど、かなり多数の魔物がいると思う。一番最初に倒したい魔物は・・・」

そうしてカインは思う作戦をラックに伝え、準備を整えるとモンスターハウスの罠を踏むのだった。
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