11 / 19
番外編〜アオイの恋〜
4
しおりを挟む
「え、今はそんな大きな建物が建ってるの?! 都会、凄いわ!」
アオイとマリー様は故郷の思い出話に花を咲かせていた。二人とも、すごく楽しそう。
「それで、何でマリー様はトマトを作ってんの? 王妃様なんでしょ?」
すっかり打ち解けたアオイがマリー様に気さくに話しかける。
「だって、息子二人はもう立派になって私が世話を焼くこともないし、聖女業も引退したでしょ? アシュに王位を譲るまではアレンも公務で忙しいし」
「つまり、暇だと?」
「ああー、これでも王妃としての公務はあるのよ? ただ、聖女やってた頃より時間があるから、せっかくなら夢だった家庭菜園でもやろうかなーって」
マリー様は少女に戻ったかのように瞳をイキイキとさせて、アオイと話していた。
お元気そうで良かった。
王妃宮に入られてからは、公式以外でお顔を合わせることは無かった。私も魔物討伐で忙しくしていたし、こんな風にお話し出来るのは久しぶりだった。
「ところで、ステラちゃーん、アシュとの結婚生活はどう??」
ぶっ!!
アオイと話していたマリー様が突然私に話を振ったので、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
危ない、危ない。
「ど、どうとは……?」
「あの子、ステラちゃんにメロメロでしょ~? 重くなーい? 仲良くやってるー?」
「め、めろめろ……」
マリー様から中々パンチの効いた言葉が飛び出て、私は赤くなる。
「もーー、この二人はバカップルですよ!!」
「ばかっぷる……」
今度はアオイから呆れたように言葉が出る。
「アシュリー様にメロメロなのは私の方なので…」
赤い頬を押さえながら、二人に照れながらも伝えれば、優しく微笑まれてしまった。
「二人が幸せなら良かったわ」
穏やかに笑うマリー様に、私はジーンとしてしまう。
「……二人みたいな関係、羨ましい」
アオイがポツリと溢した。
アオイには「自分を愛してくれる人なんていない」、と心の奥で思っている節がある。
明るい彼女は決して言葉にはしないけど、一緒にいる私は、そう感じてしまった。
昨日の合コンだって、本当はアオイの望みじゃない。空虚な気持ちを埋めるかのように、彼女は明るく、見つからないと思っている『運命の人』を探している。
……アオイには幸せになって欲しい。
でも、アオイ自身が自分の幸せを信じてあげないと、前に進めない気がする。
昨日の神官は、若い顔ぶればかりだった。
アオイには、歳上の男の人が良いと思うんだよね。大きな愛で彼女を包み込んでくれるような人。
「アオイちゃんは本当はレオのお嫁さんになるはずだったのよね」
アオイのことを考えていると、マリー様が申し訳なさそうな顔で呟いた。
「本当は、レオノアがアオイちゃんを待ってなきゃいけなかった。ごめんなさい……」
「マリー様……」
深々と頭を下げるマリー様。場はシン、としてしまった。
「ステラちゃんも、不安にさせてごめんね?」
「いえ……アシュリー様から、マリー様のおかげで私が婚約者でいられたと聞いています」
そう。私は騎士団長のお父様の娘、という肩書はあるものの、レオノア様が去った当時は婚約者の座も危うかったらしい。
それを抑えてくれていたのが、マリー様。そこから魔物討伐の功績で徐々に味方を増やしていけたのだとか。
アシュリー様にその話を聞いた時には、ゾッとした。だからマリー様には本当に感謝している。
「……一番はステラちゃんが頑張ったからよ?」
私の言葉にマリー様は眉を下げながら微笑まれた。
「そもそもアシュリー様のお兄さんはどうして出て行っちゃったの?」
躊躇なくアオイがマリー様に尋ねた。
レオノア様は聖女召喚に反対だったと、アシュリー様からは聞いた。
でも確かに、何で皇太子の座を譲ってまで出ていかれたのだろうか。
「……あの子は優しすぎるのよね」
マリー様が困ったように微笑んだ。
「当時の私はね、よくホームシックになって泣いていたの。もちろん、アレンといて幸せだったのよ。でも、そんな簡単なことじゃなくてね……」
マリー様は召喚された当時の心境を語ってくれた。
マリー様のお話に、聖女召喚によって一人の女性の人生を奪ってしまう、という事実が、より具体的になって重くのしかかる。
「レオは小さいながらにそんな私を見ていたのよね。アシュリーが生まれた頃には、すっかり吹っ切れてたのよ? アレンがめいいっぱい愛してくれたからね」
暗い顔をしていた私に、マリー様は茶目っ気たっぷりにウインクをした。
気遣わせないように、と明るく振る舞うマリー様はお優しい方だ。
「それで、聖女召喚に反対するレオ派と教会で、険悪になっちゃって。責任感じたのと、自分が降りれば聖女召喚は出来ないと踏んだんでしょうねえ、アシュにはステラちゃんがいたから」
アシュリー様も確か、そのようなことを言っていた。
私が魔物を一掃してしまうと…。うう……。
「でもそうはいかなかったのよねえ……、後はあなたたちの知る通りよ。レオノアの身勝手さで本当にごめんなさい」
マリー様は私たちを見ると、再び深々と頭を下げた。
アオイとマリー様は故郷の思い出話に花を咲かせていた。二人とも、すごく楽しそう。
「それで、何でマリー様はトマトを作ってんの? 王妃様なんでしょ?」
すっかり打ち解けたアオイがマリー様に気さくに話しかける。
「だって、息子二人はもう立派になって私が世話を焼くこともないし、聖女業も引退したでしょ? アシュに王位を譲るまではアレンも公務で忙しいし」
「つまり、暇だと?」
「ああー、これでも王妃としての公務はあるのよ? ただ、聖女やってた頃より時間があるから、せっかくなら夢だった家庭菜園でもやろうかなーって」
マリー様は少女に戻ったかのように瞳をイキイキとさせて、アオイと話していた。
お元気そうで良かった。
王妃宮に入られてからは、公式以外でお顔を合わせることは無かった。私も魔物討伐で忙しくしていたし、こんな風にお話し出来るのは久しぶりだった。
「ところで、ステラちゃーん、アシュとの結婚生活はどう??」
ぶっ!!
アオイと話していたマリー様が突然私に話を振ったので、飲んでいた紅茶を吹き出しそうになる。
危ない、危ない。
「ど、どうとは……?」
「あの子、ステラちゃんにメロメロでしょ~? 重くなーい? 仲良くやってるー?」
「め、めろめろ……」
マリー様から中々パンチの効いた言葉が飛び出て、私は赤くなる。
「もーー、この二人はバカップルですよ!!」
「ばかっぷる……」
今度はアオイから呆れたように言葉が出る。
「アシュリー様にメロメロなのは私の方なので…」
赤い頬を押さえながら、二人に照れながらも伝えれば、優しく微笑まれてしまった。
「二人が幸せなら良かったわ」
穏やかに笑うマリー様に、私はジーンとしてしまう。
「……二人みたいな関係、羨ましい」
アオイがポツリと溢した。
アオイには「自分を愛してくれる人なんていない」、と心の奥で思っている節がある。
明るい彼女は決して言葉にはしないけど、一緒にいる私は、そう感じてしまった。
昨日の合コンだって、本当はアオイの望みじゃない。空虚な気持ちを埋めるかのように、彼女は明るく、見つからないと思っている『運命の人』を探している。
……アオイには幸せになって欲しい。
でも、アオイ自身が自分の幸せを信じてあげないと、前に進めない気がする。
昨日の神官は、若い顔ぶればかりだった。
アオイには、歳上の男の人が良いと思うんだよね。大きな愛で彼女を包み込んでくれるような人。
「アオイちゃんは本当はレオのお嫁さんになるはずだったのよね」
アオイのことを考えていると、マリー様が申し訳なさそうな顔で呟いた。
「本当は、レオノアがアオイちゃんを待ってなきゃいけなかった。ごめんなさい……」
「マリー様……」
深々と頭を下げるマリー様。場はシン、としてしまった。
「ステラちゃんも、不安にさせてごめんね?」
「いえ……アシュリー様から、マリー様のおかげで私が婚約者でいられたと聞いています」
そう。私は騎士団長のお父様の娘、という肩書はあるものの、レオノア様が去った当時は婚約者の座も危うかったらしい。
それを抑えてくれていたのが、マリー様。そこから魔物討伐の功績で徐々に味方を増やしていけたのだとか。
アシュリー様にその話を聞いた時には、ゾッとした。だからマリー様には本当に感謝している。
「……一番はステラちゃんが頑張ったからよ?」
私の言葉にマリー様は眉を下げながら微笑まれた。
「そもそもアシュリー様のお兄さんはどうして出て行っちゃったの?」
躊躇なくアオイがマリー様に尋ねた。
レオノア様は聖女召喚に反対だったと、アシュリー様からは聞いた。
でも確かに、何で皇太子の座を譲ってまで出ていかれたのだろうか。
「……あの子は優しすぎるのよね」
マリー様が困ったように微笑んだ。
「当時の私はね、よくホームシックになって泣いていたの。もちろん、アレンといて幸せだったのよ。でも、そんな簡単なことじゃなくてね……」
マリー様は召喚された当時の心境を語ってくれた。
マリー様のお話に、聖女召喚によって一人の女性の人生を奪ってしまう、という事実が、より具体的になって重くのしかかる。
「レオは小さいながらにそんな私を見ていたのよね。アシュリーが生まれた頃には、すっかり吹っ切れてたのよ? アレンがめいいっぱい愛してくれたからね」
暗い顔をしていた私に、マリー様は茶目っ気たっぷりにウインクをした。
気遣わせないように、と明るく振る舞うマリー様はお優しい方だ。
「それで、聖女召喚に反対するレオ派と教会で、険悪になっちゃって。責任感じたのと、自分が降りれば聖女召喚は出来ないと踏んだんでしょうねえ、アシュにはステラちゃんがいたから」
アシュリー様も確か、そのようなことを言っていた。
私が魔物を一掃してしまうと…。うう……。
「でもそうはいかなかったのよねえ……、後はあなたたちの知る通りよ。レオノアの身勝手さで本当にごめんなさい」
マリー様は私たちを見ると、再び深々と頭を下げた。
1
お気に入りに追加
880
あなたにおすすめの小説
麗しの王子殿下は今日も私を睨みつける。
スズキアカネ
恋愛
「王子殿下の運命の相手を占いで決めるそうだから、レオーネ、あなたが選ばれるかもしれないわよ」
伯母の一声で連れて行かれた王宮広場にはたくさんの若い女の子たちで溢れかえっていた。
そしてバルコニーに立つのは麗しい王子様。
──あの、王子様……何故睨むんですか?
人違いに決まってるからそんなに怒らないでよぉ!
◇◆◇
無断転載・転用禁止。
Do not repost.
待つわけないでしょ。新しい婚約者と幸せになります!
風見ゆうみ
恋愛
「1番愛しているのは君だ。だから、今から何が起こっても僕を信じて、僕が迎えに行くのを待っていてくれ」彼は、辺境伯の長女である私、リアラにそうお願いしたあと、パーティー会場に戻るなり「僕、タントス・ミゲルはここにいる、リアラ・フセラブルとの婚約を破棄し、公爵令嬢であるビアンカ・エッジホールとの婚約を宣言する」と叫んだ。
婚約破棄した上に公爵令嬢と婚約?
憤慨した私が婚約破棄を受けて、新しい婚約者を探していると、婚約者を奪った公爵令嬢の元婚約者であるルーザー・クレミナルが私の元へ訪ねてくる。
アグリタ国の第5王子である彼は整った顔立ちだけれど、戦好きで女性嫌い、直属の傭兵部隊を持ち、冷酷な人間だと貴族の中では有名な人物。そんな彼が私との婚約を持ちかけてくる。話してみると、そう悪い人でもなさそうだし、白い結婚を前提に婚約する事にしたのだけど、違うところから待ったがかかり…。
※暴力表現が多いです。喧嘩が強い令嬢です。
※史実とは関係ない異世界の世界観であり、設定はゆるゆるで、ご都合主義です。魔法も存在します。
格闘シーンがお好きでない方、浮気男に過剰に反応される方は読む事をお控え下さい。感想をいただけるのは大変嬉しいのですが、感想欄での感情的な批判、暴言などはご遠慮願います。
どうして私にこだわるんですか!?
風見ゆうみ
恋愛
「手柄をたてて君に似合う男になって帰ってくる」そう言って旅立って行った婚約者は三年後、伯爵の爵位をいただくのですが、それと同時に旅先で出会った令嬢との結婚が決まったそうです。
それを知った伯爵令嬢である私、リノア・ブルーミングは悲しい気持ちなんて全くわいてきませんでした。だって、そんな事になるだろうなってわかってましたから!
婚約破棄されて捨てられたという噂が広まり、もう結婚は無理かな、と諦めていたら、なんと辺境伯から結婚の申し出が! その方は冷酷、無口で有名な方。おっとりした私なんて、すぐに捨てられてしまう、そう思ったので、うまーくお断りして田舎でゆっくり過ごそうと思ったら、なぜか結婚のお断りを断られてしまう。
え!? そんな事ってあるんですか? しかもなぜか、元婚約者とその彼女が田舎に引っ越した私を追いかけてきて!?
おっとりマイペースなヒロインとヒロインに恋をしている辺境伯とのラブコメです。ざまぁは後半です。
※独自の世界観ですので、設定はゆるめ、ご都合主義です。
【完結】離縁の理由は愛されたいと思ったからです
さこの
恋愛
①私のプライバシー、プライベートに侵害する事は許さない
②白い結婚とする
③アグネスを虐めてはならない
④侯爵家の夫人として務めよ
⑤私の金の使い道に異論は唱えない
⑥王家主催のパーティー以外出席はしない
私に愛されたいと思うなよ? 結婚前の契約でした。
私は十六歳。相手は二十四歳の年の差婚でした。
結婚式に憧れていたのに……
ホットランキング入りありがとうございます
2022/03/27
初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。
豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」
「はあ?」
初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた?
脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ?
なろう様でも公開中です。
愛されない花嫁はいなくなりました。
豆狸
恋愛
私には以前の記憶がありません。
侍女のジータと川遊びに行ったとき、はしゃぎ過ぎて船から落ちてしまい、水に流されているうちに岩で頭を打って記憶を失ってしまったのです。
……間抜け過ぎて自分が恥ずかしいです。
むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ。
緑谷めい
恋愛
「むしゃくしゃしてやりましたの。後悔はしておりませんわ」
そう、むしゃくしゃしてやった。後悔はしていない。
私は、カトリーヌ・ナルセー。17歳。
ナルセー公爵家の長女であり、第2王子ハロルド殿下の婚約者である。父のナルセー公爵は、この国の宰相だ。
その父は、今、私の目の前で、顔面蒼白になっている。
「カトリーヌ、もう一度言ってくれ。私の聞き間違いかもしれぬから」
お父様、お気の毒ですけれど、お聞き間違いではございませんわ。では、もう一度言いますわよ。
「今日、王宮で、ハロルド様に往復ビンタを浴びせ、更に足で蹴りつけましたの」
【完結】転生の次は召喚ですか? 私は聖女なんかじゃありません。いい加減にして下さい!
金峯蓮華
恋愛
「聖女だ! 聖女様だ!」
「成功だ! 召喚は成功したぞ!」
聖女? 召喚? 何のことだ。私はスーパーで閉店時間の寸前に値引きした食料品を買おうとしていたのよ。
あっ、そうか、あの魔法陣……。
まさか私、召喚されたの?
突然、召喚され、見知らぬ世界に連れて行かれたようだ。
まったく。転生の次は召喚?
私には前世の記憶があった。どこかの国の公爵令嬢だった記憶だ。
また、同じような世界に来たとは。
聖女として召喚されたからには、何か仕事があるのだろう。さっさと済ませ早く元の世界に戻りたい。
こんな理不尽許してなるものか。
私は元の世界に帰るぞ!!
さて、愛梨は元の世界に戻れるのでしょうか?
作者独自のファンタジーの世界が舞台です。
緩いご都合主義なお話です。
誤字脱字多いです。
大きな気持ちで教えてもらえると助かります。
R15は保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる