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終章 二人の恋と救国編
父の気持ち
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「リリア、やはり君をルーカスに近づけるべきじゃなかった」
「お父様、お願い! 聞いて!」
次の日、研究室に出掛けようとしていた私をアレクに足止めされた私は、彼に訴えかけていた。
「君もルーカスも頭を冷やすと良い。」
「お父様!!」
「すまない、リリア。頭を冷やすのは私もか……。しばらくは家にいてもらうよ。ポーションも作りだめがあるし、ずっと働き詰めだったんだ。休ませてもらうと良い」
何とかアレクに説明しようにも、彼は聞く耳を持たない。
「あと……」
私の話をまったく聞こうとしないアレクは、ちらりと部屋の扉に目をやると、懐かしい顔がのぞいた。
「お久しぶりです、リリア様……」
「ユーグ?!」
少しバツが悪そうに、そっと前に出てきた彼に驚くと、アレクが口を開いた。
「またユーグには専属護衛に戻ってもらう。屋敷を抜け出そうなんて考えないでくれ? リリア」
厳しい口調ながらも、私を心配する父親の顔に、ただただ私はアレクに頷くことしか出来なかった。
「ええと?」
アレクが仕事に出掛け、ユーグと二人きりの部屋。
ユーグも確かアレクに怒られて私から遠ざけられていたはずなのにこの状況は?
私がユーグをちらりと見ると、彼は苦笑して言った。
「リリア様、殿下と上手くいったんですね。良かったです」
「え……」
「もし、自分が当て馬になったんだとしたら、感謝して欲しいな~」
あの時と変わらない軽口のユーグ。でもその変らない明るさと気さくさに、私は心底ホッとした。
「あの、ユーグ…」
「あ、謝らないでくださいよ?! 自分、本当にリリア様に真剣だったんですから」
私が話す前に、ユーグは手を前に出して私に言った。
「でも、それと同じくらい、リリア様には幸せになって欲しかったから……良かったです」
「ユーグ……」
優しく微笑むユーグに涙が出そうだった。
こんなにも素敵な人が私を想ってくれて、幸せを願ってくれて。
「ユーグ、ありがとう」
「勿体ないことしたって思っても遅いですからね」
ユーグは片目をバチンとつぶって茶目っ気たっぷりに言った。
さっきまでの暗い気持ちが明るくなる。
「本当にありがとう」
そっと目を閉じて彼に感謝をした。
「自分はリリア様の味方ですけど、このお屋敷から出すと流石にクビになるので、今は大人しくしててくださいね」
「わかった」
ユーグは冗談っぽく言ったけど、今朝のアレクの様子を見るとそうなりかねないことは予想された。
私はユーグのためにも家で大人しく過ごすことにした。
ルーカス様はどうしているだろう?
アレクにはやっぱり祝福して欲しい。
そんなことを考えながら、私はすることもなく自室でゴロゴロとしていた。
「アレクにもリヴィアだと話しちまえば?」
「…………」
「ごめん、簡単に言ったな」
トロワの言葉で黙ってしまった私に、彼は慌てて謝った。
ルーカス様の時もあんなに言わないと決めていたものの、結局は明かしてしまったわけだし。
「それが良いのかも……」
「まじで?!」
ポツリと私がそう言うと、トロワは驚いていた。
「うん……。アレクにはきちんと話した方が良いと思って」
「そうだな。俺は、リリアの味方だから。必要なら本当の姿だって、アレクの前でなってやるさ」
「ありがとう、トロワ」
考え込む私に、トロワの肯定と心強い言葉。私の心は救われる。
アレクには父としても、リヴィアとしても、本当に感謝している。だから、『私』を認めて欲しい。
「よし! じゃあ出来ることをしないとね」
「どうするんだ?」
「まずは、アレクが帰って来る前にマフィンを作るわ!」
「マフィン、食わせろーー!」
私の部屋の前で見張りをしていたユーグに声をかけ、私達はキッチンに向った。
「自分はリリア様のマフィン好きですけど、なぜ、マフィン?」
「作るのが趣味なのよ! 家にいても暇なだけだしね」
いきなりマフィンを作ると言い出した私に、ユーグは不思議そうに聞いてきた。
今は外にも出られないし、そもそもお屋敷に人も少なく、食べさせる人もいないのに、どうして突然作ると言い出したのか謎だったみたい。
趣味だというのと、一種類を少ししか作らないから、と言うと、ユーグは納得して嬉しそうに言った。
「自分も貰えると思って良いんですかね?」
「ふふ、そうね」
「やったーー!」
喜ぶユーグを見ながら、私は何を作るか決めていた。
一番はルーカスに食べて欲しかったけど、ごめんね、ルーカス。
ムスっとするルーカスの顔が思い浮かべられて、私はクスッと笑った。
「リリア様?」
「あ、ごめん。行きましょう」
先を歩いていたユーグが振り返って首を傾げていたので、慌てて走り寄る。
甘いものが嫌いなルーカスのための鴨のマフィン。あのときも初めて口にしたのはアレクだった。
私たち三人の思い出。アレクは覚えているかしら?
「お父様、お願い! 聞いて!」
次の日、研究室に出掛けようとしていた私をアレクに足止めされた私は、彼に訴えかけていた。
「君もルーカスも頭を冷やすと良い。」
「お父様!!」
「すまない、リリア。頭を冷やすのは私もか……。しばらくは家にいてもらうよ。ポーションも作りだめがあるし、ずっと働き詰めだったんだ。休ませてもらうと良い」
何とかアレクに説明しようにも、彼は聞く耳を持たない。
「あと……」
私の話をまったく聞こうとしないアレクは、ちらりと部屋の扉に目をやると、懐かしい顔がのぞいた。
「お久しぶりです、リリア様……」
「ユーグ?!」
少しバツが悪そうに、そっと前に出てきた彼に驚くと、アレクが口を開いた。
「またユーグには専属護衛に戻ってもらう。屋敷を抜け出そうなんて考えないでくれ? リリア」
厳しい口調ながらも、私を心配する父親の顔に、ただただ私はアレクに頷くことしか出来なかった。
「ええと?」
アレクが仕事に出掛け、ユーグと二人きりの部屋。
ユーグも確かアレクに怒られて私から遠ざけられていたはずなのにこの状況は?
私がユーグをちらりと見ると、彼は苦笑して言った。
「リリア様、殿下と上手くいったんですね。良かったです」
「え……」
「もし、自分が当て馬になったんだとしたら、感謝して欲しいな~」
あの時と変わらない軽口のユーグ。でもその変らない明るさと気さくさに、私は心底ホッとした。
「あの、ユーグ…」
「あ、謝らないでくださいよ?! 自分、本当にリリア様に真剣だったんですから」
私が話す前に、ユーグは手を前に出して私に言った。
「でも、それと同じくらい、リリア様には幸せになって欲しかったから……良かったです」
「ユーグ……」
優しく微笑むユーグに涙が出そうだった。
こんなにも素敵な人が私を想ってくれて、幸せを願ってくれて。
「ユーグ、ありがとう」
「勿体ないことしたって思っても遅いですからね」
ユーグは片目をバチンとつぶって茶目っ気たっぷりに言った。
さっきまでの暗い気持ちが明るくなる。
「本当にありがとう」
そっと目を閉じて彼に感謝をした。
「自分はリリア様の味方ですけど、このお屋敷から出すと流石にクビになるので、今は大人しくしててくださいね」
「わかった」
ユーグは冗談っぽく言ったけど、今朝のアレクの様子を見るとそうなりかねないことは予想された。
私はユーグのためにも家で大人しく過ごすことにした。
ルーカス様はどうしているだろう?
アレクにはやっぱり祝福して欲しい。
そんなことを考えながら、私はすることもなく自室でゴロゴロとしていた。
「アレクにもリヴィアだと話しちまえば?」
「…………」
「ごめん、簡単に言ったな」
トロワの言葉で黙ってしまった私に、彼は慌てて謝った。
ルーカス様の時もあんなに言わないと決めていたものの、結局は明かしてしまったわけだし。
「それが良いのかも……」
「まじで?!」
ポツリと私がそう言うと、トロワは驚いていた。
「うん……。アレクにはきちんと話した方が良いと思って」
「そうだな。俺は、リリアの味方だから。必要なら本当の姿だって、アレクの前でなってやるさ」
「ありがとう、トロワ」
考え込む私に、トロワの肯定と心強い言葉。私の心は救われる。
アレクには父としても、リヴィアとしても、本当に感謝している。だから、『私』を認めて欲しい。
「よし! じゃあ出来ることをしないとね」
「どうするんだ?」
「まずは、アレクが帰って来る前にマフィンを作るわ!」
「マフィン、食わせろーー!」
私の部屋の前で見張りをしていたユーグに声をかけ、私達はキッチンに向った。
「自分はリリア様のマフィン好きですけど、なぜ、マフィン?」
「作るのが趣味なのよ! 家にいても暇なだけだしね」
いきなりマフィンを作ると言い出した私に、ユーグは不思議そうに聞いてきた。
今は外にも出られないし、そもそもお屋敷に人も少なく、食べさせる人もいないのに、どうして突然作ると言い出したのか謎だったみたい。
趣味だというのと、一種類を少ししか作らないから、と言うと、ユーグは納得して嬉しそうに言った。
「自分も貰えると思って良いんですかね?」
「ふふ、そうね」
「やったーー!」
喜ぶユーグを見ながら、私は何を作るか決めていた。
一番はルーカスに食べて欲しかったけど、ごめんね、ルーカス。
ムスっとするルーカスの顔が思い浮かべられて、私はクスッと笑った。
「リリア様?」
「あ、ごめん。行きましょう」
先を歩いていたユーグが振り返って首を傾げていたので、慌てて走り寄る。
甘いものが嫌いなルーカスのための鴨のマフィン。あのときも初めて口にしたのはアレクだった。
私たち三人の思い出。アレクは覚えているかしら?
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