烏と春の誓い

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第三章:五月女梵の冒険

梵とツインズと少女

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 東区東桜一丁目、東山線の栄駅の東改札口を出てすぐにある公共施設と商業施設の複合施設『オアシス21』。立体的公園であり、人々には都心のオアシスとして愛されている。

 中央部分にある銀河の広場と呼ばれる場所を中心にその周りをぐるりと様々な店舗が並び、ジャンプショップや薬局、雑貨屋などがあったり、飲食店も多く軒を連ねていた。

「イベント会場としても使われてて、私のおススメは毎年夏にやっている世界コスプレサミットかな!」

「去年は空にせがまれて一緒に行ったけど、人多すぎだろ……しかも暑いし熱中症じゃなくて人混みで倒れそうだったわ、暫く行かねえ」

「えええ~~!何で!今年は梵君もいるし、三人で一緒に行こう!」

 イベントがある時にはよく利用すると言う空に、人込みが得意でオアシス21にはよほどのことがない限り来ることはないと言う流。聞いているだけだと割と正反対な性格そうだが、空の誘いを無下にしないところを見ると、今後も何だかんだ言いながらも二人が一緒に行動することが多い理由がなんとなくわかったような気がする。

 まるでツアーガイドのようにわかりやすく案内してくれる空につれられながら、施設内をぐるりと一周する感じで見て回る。そうして最後のジャンプショップの前に立ち止まった。

 ちなみに流は案内の途中で歩き疲れたからと言って、その辺にある空いている椅子に座りに行った。

「とまあこんな感じかな。今日は土曜だから平日よりも人が多いけれど……ん?」

 あたりを見ていた空が一点を見つめている。

「どうしたの?」

「あ、あれは……っ」

 空の視線の先を梵も追ってみる。

 そこには、まるで物語の登場人物のような黒基調に真っ赤なラインが所々入ったシックなデザインのゴシック系ワンピースを身に着けた少女がいた。着る人を選ぶ部類のコーディネートであるが、プラチナブロンドに深紅の眼をを持つ端整な顔立ちをした日本人ではないでろう少女はそれを自然に着こなしている。

 更に少女の横には黒服を着たいかつめの、同様に日本人離れした風貌の男がおり、どこぞのお嬢様と付き従う執事のように見え明らかに周りの視線を釘付けにしていた。自分たちに向いていることが理解できていないのか、知っていて堂々と振舞っているのかはわからないがとにかく凄かった。

『流、エスカレーターの手前!』

 いつの間にか空が流に電話を掛けている。するとすぐに用件は以上だと電話を切った。

「凄いね」

「うん、うん!あんな可愛い子、初めて見たよ!」

 あまり褒められた事ではないが、空が写真を撮ろうとスマホを向ける。だがしかし、「あれ、写らない」と言いながらスマホから視線を上げて少女たちのほうを見る。

「おっかしいなあ。ちゃんといるんだけど」とぼやきながら、再び撮ろうとしていくら方向を合わせてみても写りこみすらしないようで、それから二度ほどスマホ画面と少女たちを交互に見ていたが結局諦めたようだった。

「写らない?」

「うん……」と空が残念がるように返事をし、梵も空の方に向けていた視線を少女たちの方へ向けたが、既に二人はいなかった。

「私のスマホ……壊れた?」

「いや、多分壊れてない。俺もカメラ向けてみたけどダメだった」

 そこへ流が歩きながらやってきた。二人して同じことをしていたとは……流石双子。

「まあ仕方がない……でもかなり目の保養になった!」

「あそこまでバッチリ着こなしてる女子とかいないだろ」

「確かに」梵も二人に話題にうんうんと頷く。梵自身はあまりアニメや漫画と言った世界には今まで触れてこず、ゴスロリと言う言葉は何かで聞いたこともあったが、特に興味を持つ事もなかった。それでも目を惹く二人だったと素直に思う。

「んじゃまあ一通り案内が終わったなら場所移動すっか。少し小腹が空いてきた」

 お昼にラーメンを食べてから三時間。現時刻は一五時である。子供であればおやつの時間!というものだが。

「ずっと歩きっぱなしだったから、僕も少し。座りながら何か食べたいかな」

「じゃあ今度は久屋大通公園にあるレイヤード久屋大通パークにでも行ってみるかい?あそこならスイーツ系のお店もあったから」

「新しくできたとこだよな?俺変わってからまだ行った事ねえから行きたい」

「僕も、そこで大丈夫だよ」

「じゃあ決まりだね!」

 次なる行先が決定したところで、三人は移動を開始した。

「そう言えばさっきガラの悪そうな連中が辺りをうろついてんの見たけど、少し気を付けたほうがいい。十年前の事件以来数は結構減ったみたいだけどまた活動し始めてるチームみたいなもんがあるらしい」

「大学の例のサイトにもギャングチームがどうのっていうスレッドがあった気がする」

 まだ地元情報に詳しくない梵は、二人の話を耳に入れながらも、先ほどの少女と男の姿が頭から離れないでいた。そして興味本位で想像する。

 彼等はこの日本に、名古屋に果たして一体何をしに来たのだろうか ――― と。


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