烏と春の誓い

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第二章:名古屋の烏

再び山野組にて

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 情報屋と接触してから数日後。藤堂の姿は山野組組長の源三の前にあった。

「先日申しつけられた、芦屋組についての情報が得られました」

「おお!情報元はどこだ!」

「『円』です」

「ハッ、『円』情報なら信憑性は確実だな。早く報告しろ」

 待ちに待った情報がやってきた、源三は口元を吊り上げながら待ちわびたとばかりに報告を急かす。

「芦屋には隠し子がいることがわかりました。しかも、現在名古屋にいる、と」

 ガタンッ 源三が思わず立ち上がった。芦屋のアキレス腱となる存在が今、山野の庭である名古屋市内にいる。これはまさに天が味方しているとしか思えなかった。

「隠し子の名前は『五月女梵』。芦屋現組長はとても大切にしているとの情報もあります」

「遂にっ、遂にわしにもツキが回ってきたぞ!」

 上手く事が運んでいることに何の疑いもせず、源三は笑いが止まらない。

 座椅子に座り直し、一呼吸をして落ち着こうとするも興奮が収まることはないが、次の指示を出さねばならない。
 どのような状況下にいようと、藤堂は常に冷静沈着だった。その落ち着きが時に源三に安心感を与えることがあるが、今がそれだ。

「いかがいたしましょう。阿良々木の件もありますので、幾分慎重に事を進める必要があるかと」

「そうだったな。もしや阿良々木が名古屋に来たのは芦屋の倅の件かもしれん……楠尾に連絡は取れたのか?」

「はい、まだ具体的な指示は出していませんが」

「ならばまずは楠尾たちにその倅の身辺を見張らせろ。急に動いては芦屋に気づかれる恐れがあるからな」

「承知致しました。ではそのように伝えます」

 源三が話は終わり、と手をシッシと振り、藤堂が一礼をして退室する。

 一人になり静まり返った部屋の中で、源三は今後の展開が楽しみで仕方がなかった。


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