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第一章:蔓延りまくりプロローグ
ミラノマルペンサ空港より
しおりを挟むミラノマルペンサ空港からヘルシンキで乗り換え、名古屋中部国際空港へと着陸する飛行機があった。所要時間約十五時間。
海を越える長旅の末、ようやく着いた日本に降り立つ二人。
キョロキョロと空港内を見渡すゴシックファッションの少女と、ブラックスーツの青年。イタリアから来た彼等にはある目的があった。
『全く、あの男……。手こずらせてくれるわ。見つけたらとりあえず半殺しね』
『ちゃんと加減はして下さいよ?連れ帰らないといけないんですから」
不穏な会話をする二人の名前はシャルロット・ラヴィガレッジとラッキー・ウォーカー。
シチリアから来たマフィアである。
『わかってる。ボスに怒られるのはごめんよ』
シャルロットの言葉に、ラッキーは一抹の不安を覚えた。可愛らしい見た目に反して、彼女は少々過激な性質の持ち主だ。
今回二人が日本に来たのは、ある男をイタリアへと連れて帰る為。
その男は留学でイタリアへやってきた大学生だった。そして、端的に言えばシャルロットたちの組織の金を持ち逃げしてそのまま日本へと帰国してしまったのだ。
追手として日本に来たシャルロットたちにわかっているのは、日本人の学生という事と、現場にいた住人に協力してもらい作成した人相書きを使って得た、『鈴木(すずき)サトシ』と言う男の名前。
異国人という事でそこまでの情報を集められなかったこともあって、最初は日本人の仲間が候補として挙がっていたものの本人が断ったために、シャルロットとラッキーに役目が回ってきた。
それと言うのも、日本人の知人がいると言う伝手があるためだ。既に連絡はついていて、会う約束も取り付けてある。その場所として指定されたのが名古屋だった。
中部国際空港駅から名鉄線電車へと乗って約四五分ほど。ようやく名古屋へと着いてからのシャルロットの第一声は空腹を訴えるものだった。
『まずは宿泊するホテルに荷物を置きにいかないと』
『そんなの後でいいから、ご飯。日本では腹が減ってはイクサは出来ぬって言うんでしょ?さっき読んだ日本のガイドブックに載ってたわ』
『……一体何のガイドブックを読んだんですか』
『これよ』
先ほどからシャルロットは熱心に何かの本を読んでいた。そのタイトル部分には【マフィアにもわかりやすい日本のガイドブック!困ったときに使える会話例付き】と書いてあった。
『え、何それ。なんでそんなの持ってるんですか』
一瞬自分のキャラを忘れて呟いてしまう。
『貰ったの』
『渡してきたの絶対アスマさんですよねそれ』
アスマとは幹部の一人であり、唯一の日本人だ。日本人の彼が何故イタリアンマフィアに身を窶しているのかは知らないが、もう五十越えのおっさんであり、未だ子供の心を持ったユーモアのあるムードメーカー的存在でもある。そして、裏世界の人間とは思えない程軽くて……色々緩い。
『シャルにこれあげるよ。俺が作ったんだよーそれ。絶対役に立つから読んどきな!』
そう言って渡された本をシャルロットは読みふけり、さっきの言葉を使ってみたという事らしい。確かに日本のコトワザと言う物は不思議な効力でもあるのか、知れば使ってみたくなるのも分からなくはない。
( ……でも教えるタイミングが完全に間違ってますよアスマさん )
『はあ。何かもう色々どうでもよくなってきました』
『さっきから何ぶつぶつ言ってるのよ。それより私はこれが食べたいわ!ひつまぶし!』
『何ですか?それは』
シャルロットの持っているガイドブックのグルメページには、名古屋の食べ物と言えばこれ!とばかりにでかでかと載っていた。
『何でも名古屋飯と言うらしいわよ』
そう言って指をさされた部分を見てみるとそこには見たものの食欲をそそる様に上手く撮られた料理の数々。アスマさんこんな才能が……。
『これは……美味しそうですね』
『ほら見なさい!他にもみそカツ、きしめんとか色々あるわよ』
『ではまずは美味しい店がどこかにかいか調べてみましょう』
『でもその前に、オアシス21ってとこにあるじゃんぷしょっぷと言うところに寄るわ』
『ああ……そう言えばアラキさんが買ってきて欲しいもの一覧の中に記していたお店ですね。あの人の機嫌を損ねるとまた面倒なことになりますから先にそちらに参りましょうか』
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