美少女令嬢な元生徒会副会長を、キモオタな中年教師がNTRる話

小松 美堂

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第二章

浜田友介 前編

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この「浜田友介 前後編」の部分は、彼の設定や美奈子への思いや関りの経緯を綴ったものです。

少々長いし、エロはないので、読み飛ばしていただいても大丈夫です。



今後、友介のバックグラウンドが知りたくなったタイミングで読むのも、よいかもしれません。

前編は、友介が美奈子に出会う前の教員生活を描いています。

=================================

浜田友介42才。独身。両親は既に他界。

妹が一人いるが、北海道に嫁ぎ、交流は数年に一度。





著名私立大学を卒業後、母校であり私学としては条件の良い聖愛学園に就職し、

日本史教師として、真面目に教育に取り組んできた。

熱血教師は柄じゃないと目指さなかったが、自分が中学時代にお世話になった

恩師の様に実直に、生徒に対しては誠実に向き合ってきた。

少なくとも本人はそうありたいと行動してきた。

趣味はマンガ・アニメ・ラノベということで、図書委員の顧問として

名作漫画の読書会を主催をしたり、図書室のライブラリーに

アニメ作品のビデオやDVDを増やす事に熱心に取り組んだ。



もともとはSF小説が大好きで、中学高校はファンタジー小説にも手を出した。

大学生になる頃に"ライトノベル"という概念が広がり、

自分の大好きな分野が広がり、新作が次々出るのがうれしかった。

聖愛学園の図書室には、その手の作品は少なかったが図書委員顧問の特権で、

徐々に入れて、生徒たちに布教していった。



まだ二十代後半だったこの頃、請われて文芸部の顧問も引き受けた。

そこに集った内向的で文芸と言いつつも、主にファンタジーそしてラノベに

親しみつつあった生徒たちからは、自分たちと近しいオタク趣味で

親しみを持てる先生として、彼らからは「オタ友」先生と呼ばれるようになった。

それまで、特定のあだ名もなく浜田先生とのみ呼ばれていた友介だったので、

気恥ずかしながらもうれしかった。



友介は、そんな文芸部を大切な空間として愛していた。

だからこそ、あの事件は起こった。

学園を舞台にした、SFちっくなラブコメ作品が

文芸部メンバーの間で人気を博していた。

ライトノベルの新シリーズとして、ベストセラーになっていいる作品だ。



人気が出る前から、その作品に目を留めてメンバーに勧めた友介は、

「さすがはオタ友先生」と尊敬の念を集めていた。

そして、その作品のTVアニメがスタートし、深夜アニメにも関わらず、

爆発的な人気を得て、劇中のダンス動画の人気もヒットに拍車をかけた。



そんなさ中、運動会の出し物を決める時期が来た。

この学園では、運動会の昼休みのイベントとして、各部活の有志が

パフォーマンスを披露する習慣があった。



二~三分程度で、10数組が参加する。

ダンス部をはじめとした運動部の見せ場、陽キャ中心だが、

一部の文系部も毎年何組かは参加している。

ただ、文芸部の参加実績はない。



希望は多く、毎年抽選となる。

そのパフォーマンスの話題が部会で出た際に、

友介は、つい言ってしまったのだ。



「あのアニメの劇中ダンスやってみたら」と。



ちょうど直前の日曜の地上波テレビの素人参加番組で、

女子高校生がそのダンスを踊る姿を見たのが影響していたのかもしれない。

運命の悪戯というものだ。



「オタ友先生、何言ってるの」一年生男子部員の森下が、水をかけた時

「おもしろいかも」副部長の葛城がぼそりと呟いた。



「あれなら、結構運動部のやつらの間でもダンス動画として

話題になってるし、どこかがやってもおかしくない」

そう、意外と一般に広まり始めていたのだ。

アニメ本編は見ていない様な運動部系の学生にも。



「私、やってみたい」

平素から生真面目眼鏡地味子風ながら、最もオタク志向の強い

部長の陸奥が目を輝かせた。

件のライトノベルの一番のファンと言ってよい。



こうして、文芸部初のダンスパフォーマンスが起案され、

あっさり抽選もクリアして運動会で披露されることとなった。

もちろん友介は、顧問として練習場所の確保や練習見本用に

アニメのDVDを提供するなど、精一杯のサポートを行った。



当日は、服装を各演者が工夫を凝らすため、体操服やジャージというわけにはいかない。

特に、メインダンスを踊る陸奥は、ヒロインのセーラー服のコスプレが必須だ。

友介は学生時代のオタク仲間のツテを辿って、コスプレイヤーから入手した。



当時、人気絶頂の衣装ということで安くはないレンタル料を要求されたが、

自腹で支払った。



「凄い、浜田先生、さすがですね。手作りしようと思ってました」



陸奥が、普段決して見せたことのない、

キラキラした目と笑顔で喜んでいる姿で、報酬は十分だった。



そして、当日のパフォーマンスは大反響・大成功に終わった。

運動部やダンス部と演目がかぶることはなく、

来賓席に来ていた小さな女の子が、飛び入りで一緒に踊ってくれたり、

生徒たちもノリノリで手拍子や掛け声をかけてくれるなど、大盛況だった。



「やるねぇ! 文芸部」

「陸奥ちゃん、可愛くね?」

「今年は持ってかれたなあ」

などの賛辞がひしめいた。



ただし、パフォーマンス表彰では1~3位に入ることはなく、

敢闘賞をいただくに留まった。



「生徒の投票だとダントツだと思ったんだけど」

「PTAや来賓の方々も、結構拍手してくれてたのに」



残念ではあったが、やはり現場の手応えは十分であったため、

陸奥・葛城はじめとした僅か5人の文芸部員は、喜びをかみしめていた。

ファミレスで打ち上げをするという部員に誘われたが、

友介は、パフォーマンスを収録した動画を編集して、何とか一般公開しようと、

翌日の職員会議で許諾を取る算段を準備するため、参加は見送った。



「先生がいたら邪魔だろうしな」と思いつつ、

自分の高校時代には一切縁のなかった、

青春を感じる一連の出来事に充実感を感じていた。

その日までは。





翌日の職員会議に「動画アップ」の話題が出されることはなかった。

いや、永久お蔵入りが決定した。



「浜田くん、昨日の文芸部のパフォーマンスはキミが提案したそうだね」



自分からではなく、校長自らダンスの話題を振ってもらい、

その校長の険しい顔色を感じることはなく浮かれていた友介は、



「いやぁ、僕はやってみたらどうか?と振ってみただけで、

部員がノッてきたんですよ。ダンスの練習もそりゃあ熱心で……」



「やっぱりそうか。キミの責任というわけだな。

あのダンスは、深夜帯に放送されているオタク向けのTVアニメの

ものだそうじゃないか。

PTA会長の葛城さんから、重大なクレームが来ているのだよ。

葛城さんの息子さんも参加していたね。



昨日のパフォーマンス審査の場では、

『文学に触れることも情操教育には必要と考え、文芸部の入部や活動を

支持してきましたが、いつの間にか顧問教師によってオタクに

洗脳されてしまいました。

うちの息子だけなら我慢もしますが、同じPTA役員の陸奥さんの娘さんまで

一緒になっては見過ごせません。

私は、PTA会長として役員の総意を取りまとめて学園に抗議します』

と、えらい剣幕だったのですよ。



しかも、昨夜、メールと電話・FAXで回状が回ったようで、

『図書室をはじめとした学校教育の場で

マンガ・アニメ・ライトノベルなどに触れる環境を、学内から一斉排除』

という署名歎願が、父兄1,000人分も今日届きました。大変な事態です」



教頭がすかさずフォローに入る

「もちろん、我々は学生の自主性を重んじたいから、

かれらの頑張ったという努力は評価したんですよ。

生徒の投票では文芸部は一位だったこともあり、

PTA会長の猛反対を抑えてもらって、敢闘賞を与えたんだ」



と、一般の教師の反感を弱めるためか、

聞いてもどうしようもない内情を暴露してくる。



職員会議の結果、校則違反事例というわけでもないため、学校としての処分ナシ。

但し、文芸部は部室の資料整理という名目で当面の間休部。

友介は、図書委員及び文芸部の顧問は更迭。

最後の仕事として、図書室のラノベ・アニメDVDの廃棄指定となった。

廃棄理由はPTA要望による、学業の妨げとなる書籍の排除である。



文芸部員と話すことは、暗に禁止され、運動会以降授業以外では、接触はなかった。

葛城はすぐさま退部。

陸奥は、三年生ということでもともと運動会活動を機に退く予定だったためフェードアウト。

残る、森下をはじめ一・二年生三人は、幽霊部員化し、

彼らの卒業と共に、休部していた文芸部の復活の芽も潰え、事実上消滅した。





暫くして、コスプレ衣装が宅配便で友介宅に送られてきた。

衣装はクリーニングされ、そこには、



「私には、楽し過ぎて、真っ白、いえ真っ暗だった高校生活が、

真っ赤に燃え上がって見えた瞬間でした。

準備期間を含めて、あんなに学校が楽しかったことはありません。

本当にありがとうございました」



という丁寧な筆致で書かれた陸奥詠子からの手紙と、

あのパフォーマンス直後に部員全員で撮ってもらった写真が添えられていた。

端っこに映る自分。

友介にとっての、はじめての青春の一コマの一枚だけが残った。





顧問の枠が空いた友介は、生徒に嫌われると、なり手が少ない風紀委員担当と、

当時大きな課題ながらIT知識のない教師たちが持てあましていた

ネットワーク・セキュリティ担当に任じられた。

「浜田先生は、こういうのお詳しいようですから、まさに適任ですね」

と、教頭にお世辞を言われて。

まるで、"パソコンの大先生"と持ち上げられたような気がしたが、もはやどうでもよかった。



こうして、友介の灰色の教師生活が続くことになった。

この一件の影響、そして風紀担当という面倒な役割になったこともあり、

慕ってくるような生徒はなく、緩慢とした日々が続いた。

30代となり、両親が相次いで病気で他界し、風体にかまわないまま歳を重ねて

中年太りが始まり、淋しくなっていく頭髪と相まって、

うだつの上がらない中年教師のできあがりだ。



いつしか「オタ友」先生から、「キモオタ先生」「キモ友先生」と

揶揄されるようになっていった。

もちろんPTAでの「オタク趣味を生徒に広げた先生」という悪評が

裏打ちしているのだろうが、自身の姿形の変化が、

キモオタっぽさを助長し、自業自得と言えた。

もはや、情熱を失った友介は、面映ゆかくもうれしかった「オタ友先生」から

「キモ友先生」への格下げを、今更気にすることもなく淡々と教師生活をこなし、

30代も後半となっていった。



面倒なセキュリティ担当の仕事は、黙々とこなし、

古い学園内の監視カメラシステムの一新も行なった。

風紀担当と言うと強面のイメージだが、友介は波風立てず、事なかれ主義で通した。

学生からの人望なんて、あっても仕方がないので、取り締まりも規定通り。

必要以上に厳しくもしないし、かといって権力の笠を着ることもない。

監視カメラシステムを用いて、よからぬ事をする学生を

わざわざ摘発することもなかった。もちろん、画像の悪用などもってのほか。

いつしか、学園の監視カメラについては



「動いていない」

「実は、予算けちって中身空っぽ」



などという噂がまことしとやかに流れ、いじめや性行為じみとたことをする場合にも

カメラを気にする学生はいなくなった。

もちろん、友介は監視カメラシステムによる巡回は行っていて、

学生たちの行動もある程度把握していた。

ただ、それを用いて取り締まりをしても、自分の勤務評価が上がるとも思えず、

いじめの摘発しても、加害者が有力者の関係者だったりして

もみ消れる未来もあるかもと考え、傍観を決め込んだ。



そしてまた、新入生を迎えた。
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