ヒーローになりたかった

椿姫哀翔

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ヒーローになりたい

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りょうくんは、6歳、男の子。

ヒーローになりたい。

街に現れる怪人をかっこよく倒したい。

みんなが憧れるかっこいいヒーローになりたい。

そんな夢を持ちながら毎週お家でヒーロー番組を見るのが楽しみ。
そしてそのあとにお父さんを相手にヒーローになるための練習をするのも楽しみだった。



そんなりょうくんに試練が訪れた。

病気になったのだ。

りょうくん1人のチカラではその病気には勝てそうになかった。

だからみんなで頑張った。

お母さんもお父さんもお医者さんも看護師さんもりょうくん本人も頑張った。

なんとか病気には勝った。
みんなのチカラを合わせて、お医者さんが頑張ってくれた。

でも、後遺症で、目が見えなくなった。

りょうくんは、怖かった。

お母さんとお父さんの声は聞こえるし、不安になると手を握ってくれる。

だけど、真っ暗だし、見えない。
それがすごく怖かった。

今、お母さんとお父さんがどんな顔してりょうくんと会ってるのか分からない。

お母さんとお父さんを守るためにヒーローになりたかったのに、悲しませてるんじゃないかって。

すごくすごく不安で怖かった。

でも、お母さんとお父さんは、りょうくんが見えなくても笑顔でりょうくんとお話しした。

そのおかげで、りょうくんは、元気になっていった。

でも、空元気だったお母さんとお父さんは、疲れてしまった。

それを感じたりょうくんは、お母さんとお父さんに元気になってもらいたくて、毎日笑顔でいた。

つらいリハビリも頑張った。

頑張って頑張ってリハビリして、看護師さんに支えてもらわなくても白杖だけで歩けるようになった。

それを見たお母さんとお父さんは、泣きながらりょうくんを抱きしめて『すごいよ』『よく頑張ったね』っていっぱいいっぱい褒めてくれた。

りょうくんはそれを聞きながら、抱きしめられながら嬉しそうに笑った。



りょうくんはヒーローになりたかった。

街に現れる怪人をかっこよく倒して、みんなが憧れるかっこいいヒーローになりたかった。

でもホントは、お母さんとお父さんに怖い思いをしてほしくなくて、お母さんとお父さんの笑顔を守れるかっこいいヒーローになりたかった。

りょうくんは、目が見えなくなったけど、頑張ってリハビリしてお母さんとお父さんに笑顔が戻ったからとってもとっても嬉しかった。

目が見えなくなったけど、お母さんとお父さんの顔を見えなくなったけど、お母さんとお父さんが幸せそうに笑ってるのは分かる。


りょうくんはある日、お母さんとお父さんに聞いた。
「お母さんとお父さんに幸せになってもらいたい。笑顔でいてほしい。どうしたらお母さんとお父さんのヒーローになれるかな?」

お母さんとお父さんは、
「りょうがお母さんとお父さんと一緒にいて笑顔で幸せに生きてくれてればお母さんとお父さんは幸せになれるよ。りょうはもうお母さんとお父さんのヒーローだよ。」
って教えてくれた。

りょうくんはポカンとした顔をして、イマイチ意味がわかっていなかったけど、
「わかった!お母さんとお父さんと毎日一緒に笑って生きる!」
と満面の笑みを浮かべた。



その日、りょうくんはお母さんとお父さんの最強のヒーローになった。

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