猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

31話

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「んんー、なんか眠くなってきた……」

プリンを食べ終えたハルは、伸びをしてからまた机に突っ伏した。

〔ハル、寝るのは良いんだけど、明日シキ振る時に使うのにホルダー作っとく?〕
「あっ!忘れてた……。お願いしていい?」
〔もちろん。刀用のホルダーだけ貸して。やっとくから寝る準備してな。あとで確認してもらうから。〕
「はーい。」

ハルは、突っ伏していた体勢から起き出し、腰に付けているホルダーを外した。

「刀はー?」
〔シキと一緒にそこ置いといて。入れた時に当たらないかとか確認したいから。〕
「わかったー」

刀とシキもホルダーの近くに置いた。

寝る時用にと神域に居る時に作ってくれた服に着替えたハルは、脱いだ服を綺麗に畳んで服だけにクリーンを掛けた。

「よし」

寝る準備を終わらせたハルは、ベッドに座ってアキの作業を見ていた。


アキは、ホルダーを見ながら考えていた。

(うーん、刀を通す輪っかの下にもう1つ輪っかを付けると重くなりそうだよな……。輪っかの横に輪っかを付けるか?でも、ハルの重心がズレるか……?両側に輪っかを付けて……、いや、銃のホルダーも脇に付けてるんだから両側はやっぱり邪魔か…………、うーん……。やっぱり輪っかの横に輪っかを付けるか。)

アキは、インベントリからブラックベアーの皮とシルバースパイダーの糸を出して縫い付けていった。

〔うーん……〕
「アキちゃん?」
〔あ、ハル、とりあえず付けてみたから付けて少し動いてみて。動きずらそうだったら言って。調整するから。〕
「わかった」

ハルは、ベッドから降りてズボンだけ履き替えてホルダーを腰に巻いてみた。

「うーん、」
〔どうした?〕
「あ、いや」
〔言って。修正するから。〕
「うん。少し動きずらいかも。」
〔そっか〕
「あと、」
〔ん?〕
「右側にホルダー付けてたんだけど、左側に付けて右手で抜く方が抜きやすいかも……?」
〔あー、ハル右利きだもんね。ずっと使いずらかった?〕
「ううん、そんな事ないんだけど、」
〔そっか…………、背負うんだとリュックが邪魔になるもんね……。どうしようかな……〕
「ん?左側に付けるんじゃダメなの?」
〔あ、いや別に良いんだけど、左脇に銃入れてるでしょ。どっちも左側じゃ邪魔じゃない?〕
「あー、…………あ、じゃあ、銃を腰の後ろ側に持ってきて刀を左側に持ってくるのはどう?」
〔あー、それなら良いかも。銃のホルダーも貸して。直す。〕
「はい。お願いします。」
〔うん〕

方向性が決まったからなのかそれからアキは、無言で調整などをして直した。

〔ふぅ、ハルお待たせ。付けてみて。〕
「うん。」

ハルは結局森の中を歩いてた時に着ていた黒い服に着替えた。

〔なんでその服なの?〕
「え、冒険者として森に行く時はこの格好かなって思って。ならこれを着た状態で付けて動いた方が分かるかと思って。」
〔なるほど〕

ハルが机の近くに立った為、机に新しく作ったベルトと修正したホルダーを置いた。

「これ?」
〔うん。〕
「どう付けるの?」
〔そのズボンだと、腰の所に等間隔に輪っかが着いてるでしょ。〕

アキに言われて良く確認すると、腰を囲うように7ヶ所に輪っかが付いていた。

「ん?……あ、ほんとだ。知らなかった。」
〔そこにこのベルトって言うんだけど、この長い皮を入れて。〕
「えっと、どっちから?」
〔ハル、時計の文字盤思い浮かべて。〕
「うん?うん。」
〔ハルのおへそが12時だとすると、1時の所から金具が無い方から入れて。〕
「うん、入れたよ。」
〔そしたら、2時と4時の位置の輪っかにもそのまま通して。〕
「うん、背中の方見えないけど入ってる?」
〔うん。大丈夫。ちゃんと入ってるよ。
そこまで入れてから銃のホルダー、ベルトに通せるように輪っか付けたから取ってがハルの手の方に向くように入れて。〕
「う、うーん……、で、出来ないー」
〔大丈夫。ちゃんと入ったよ。〕
「え、ほんと?」
〔うん。触ってみな。落とさないようにね。〕

ハルは、通しているベルトの先を左手でしっかりと持ちながら右手で触ってみた。

「あ、ほんとだちゃんと入ってる。」
〔それなら取りやすいでしょ?〕
「うん。」
〔そしたら、6時の位置にベルトの先入れて。〕
「え、そうすると銃のホルダー取れなくなっちゃうよ。」
〔だから動いても大丈夫でしょ。外す時は、ベルトを抜けば一緒に取れるから〕
「んー…………、あ、なるほど、わかった。」
〔良かった。で、そのまま8時の位置を通してから、この刀用のホルダーを通して。〕
「うん。」

自分の視界に入ってきたからなのか、さっきよりスムーズに入れることが出来た。

〔で、10時と11時の位置の輪っかを通して最後に金具に輪っかと針みたいの付いてるでしょ。〕
「うん。」
〔まず、輪っかに通して〕
「うん。」
〔キツ過ぎず緩すぎないようにキュッてして。〕
「キュッ、こんな感じ?」
〔お腹苦しくない?〕
「うん。大丈夫。」
〔なら、皮に何個か穴を開けてあるからその穴に針みたいの通して〕
「ううーん、こう、かな……?」
〔うん。いい感じ。邪魔な部分は、輪っかに通しちゃっていいよ。〕
「うーん、しょっと。……出来た?」
〔うん。どお?刀とシキ挿して少し動いてみて〕

ワタワタしながらなんとかベルトを通した。
ホルダーに刀とシキを挿して軽く動いてみた。

「うん。結構動きやすい。明日、試してみて馴染むといい感じかも。」
〔ほっ、なら良かった……。じゃあ、二度手間になっちゃったけど、また寝る準備して。〕
「うん。アキちゃん、ワガママ聞いてくれてありがとう。」
〔いえいえ、こちらこそ何回も着替えさせちゃってごめんね。〕
「ううん。大丈夫。でも、明日一人で付けられなさそうだから手伝って?」
〔もちろん。〕

ハルはまた寝る準備をするとアキを抱っこしてベッドに入り、眠りについた。

「アキちゃん、おやすみ……」
〔おやすみ。〕


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