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ロング帝国 ルーク
27話
しおりを挟む食堂に着いたハルは、中に入る前にアキに紐を付け、鞄に括り付けた。
アキを抱っこして入ったハルは、食堂の活気にちょっとビビってしまった。
「おぉ……」
〔大丈夫?〕
〔うん。これって、どこに座ればいいのかな?〕
席はほとんど満席で、1人で静かに座ることは不可能だった。
「あら、ハル君いらっしゃい。」
「こんばんわ。」
食堂の入口でオロオロしてたら女将のモリーが声を掛けてくれた。
「かなり混んでるから相席になっちゃうけどいいかしら?」
「相席?ってなんですか?」
「他の人が座ってるテーブルの空いている席に座らせてもらう事よ。」
「そうなんですね。アキちゃんは?」
「一緒でも大丈夫な人の所に案内するわ。」
「アキちゃん、大丈夫?」
「にゃん」
「大丈夫だそうです。」
「分かったわ。」
モリーは、ハルを連れて食堂の奥に進んで行った。
「アルバンさん、相席いいですか?」
「え、」
「いつもはお断りOKにしてるんですけど、この子、昨日冒険者登録したばかりだからアルバンさんと一緒の席のが絡まれないで済むかと思って。」
「あー……」
「ほら、ハル君挨拶して。」
「はい。
アルバンさん、こんばんわ。朝ぶりですね。」
「にゃうー」
「おー、ハルとアキかー。ならいいぞ。」
「ありがとうございます。」
モリーが連れてってくれた席にはAランク冒険者のアルバンが居た。
最初嫌がっていたが、ハルとアキの顔を見るとOKしてくれた。
ハルはお言葉に甘えてアルバンの対面の席が空いていたため、そこに座った。隣の席にリュックを置き、アキを床に降ろした。
リュックとアキの周りに悪意がある人が触ると跳ね返される結界を張った。悪意が無くハルが許可した人は結界に腕を通すことが出来る。
モリーやルーシーが配膳でアキの前にご飯を持ってきた時に普通に置くことが出来るようにした。
「なに食べようかな」
「にゃー」
「そうだね、アキちゃんの分もちゃんと頼むよ。」
「にゃん」
「モリーさん、なにかオススメありますか?」
ハルが座るのを待っていてくれたモリーにオススメを聞いた。
「そうねー、今日のオススメは、やっぱりオーク肉かしら。」
「オーク肉?」
「ええ、今朝ギルドで大量に販売されたから買いに行ったのよ。」
「へー、でも、お昼ご飯にオーク肉食べちゃったんです。」
「あら、そうなの?」
「はい。」
「何味だったのかしら、ここでは、旦那が作った塩ダレで提供してるんだけど。」
「塩ダレですか?」
「ええ。醤油ダレはメジャーだからね。他と被らないようにって。」
「へー。じゃあ、それにします。」
「あら、そう?」
「はい。アキちゃんはどうする?」
「にゃう……〔私お肉パス〕」
「嫌かー。他にオススメありますか?」
「そうねー、よく出るのは魚のフライとかかしら。」
「にゃっ!」
「アキちゃん、お魚がいい?」
「にゃん!」
「じゃあ、アキちゃんにはお魚のフライで。」
「分かったわ。定食で提供してるんだけど、アキちゃんはそれでいいのかしら?フライだけのがいいのかしら?」
「アキちゃん、どっちがいい?」
「にゃー〔定食〕」
「定食でお願いします。」
「はいよ。ハル君も定食でいいかい?」
「はい。ご飯大盛りとか出来ますか?」
「あぁ、出来るよ。」
「なら、ぼくの分は大盛りでお願いします。」
「大丈夫かい?残したらお金取ってるんだけど。」
「大丈夫です。お腹ぺこぺこなので。」
「分かったよ。」
モリーは注文を取ると、厨房の方に向かった。
「大丈夫か?」
「なにがですか?」
「ここ、結構量多いぞ。」
「大丈夫です。お腹ぺこぺこなので。」
「だとしてもかなり多いぞ。ここはご飯もおかずも多いからな。俺なんて新人の時に来て大盛り頼んで食べきれなくてお金払ったんだから。」
「へー、そうなんですね。」
「ほんとに大丈夫か?」
ハルは、すごく心配してくれてるアルバンに安心してもらうため、アキに頼んでいつも使っているお茶碗を出してもらった。
「これ見てもらってもいいですか?」
「なんだそれ?」
「ぼくのご飯茶碗です。このお茶碗で基本的に3~5杯食べるので多分大丈夫ですよ。」
「……は?マジで………?」
「はい。」
ハルは、呆然としているアルバンに頷き、お茶碗をアキに渡してインベントリに戻した。
アルバンが驚くのは自然である。
ハルが出したお茶碗は、ご飯だけを食べるための物ではなくて丼にして、お米とおかずをのせるために作られた大きなお茶碗だったのだから。
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