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ロング帝国 ルーク

23話

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1人になったハルは、リュックを降ろし、ヴィオの彫刻の前で膝を着き、腕の中にアキを抱っこしたまま両手を合わせてその手をおでこに当てて瞳を閉じた。

〔アキちゃん、苦しくない?〕
〔うん、大丈夫。〕
〔ヴィオ様の本で読んだんだけど、これがお祈りのポーズみたい。〕
〔そうなんだ。私もやろう。〕
〔うん。〕

(ヴィオ様、挨拶遅くなってごめんなさい。私、アキはここ居るハルと家族になり、旅をすることにしました。旅をするまでかなり時間を掛けてしまい申し訳ありませんでした。今、凄く楽しいです。この世界に連れてきてくださって本当にありがとうございます。)
(ヴィオ様、はじめまして。ハルと言います。アキちゃんと家族になりました。ヴィオ様は、アキちゃんのために力や神域を用意したのにぼくまで使わせてもらってしまってすみませんでした。ですが、今、アキちゃんと居て、とても楽しいです。)

手を合わせた2人はヴィオに近況を伝えた。

〔こんにちは、2人とも楽しそうで良かったです。〕
「うぇ!?」
〔ハル、この声、ヴィオ様……。〕
〔っ、〕

そんな時、脳内に成人男性より少し高めの男性の声がした。
ハルは思わず手をおでこから離して声を出してしまったが、アキの言葉で唖然としながらもまた手をおでこに当てた。

〔驚かせちゃったみたいでごめんなさい。〕
〔いえ、ヴィオ様、こちらこそ来るのが遅くなってごめんなさい。〕
〔いえいえ、アキさんが楽しく毎日を過ごしているのを神界で見守っていたので、挨拶はいつでも大丈夫でしたよ。〕
〔そっか、良かった……。〕
〔ハルくんでしたね。はじめまして。こんにちは。〕
〔こ、こんにちは…………〕
〔アキさんと出会ってくれてありがとう。〕
〔い、いえ、〕
〔ヴィオ様、ハル、いい子でしょ?〕
〔えぇ、凄く可愛らしいです。〕
〔え、へ、あ、〕
〔ふふっ、可愛らしいハルくん。〕
〔は、はい、〕
〔貴方に僕の寵愛を与えます。〕
〔へ?〕
〔…………はい、与えました。あとでステータスを確認してください。〕
〔え、?〕

突然の事で頭が真っ白になってしまったハルにアキが苦笑いしながら声を掛けた。

〔ハル、大丈夫?
これがヴィオ様の過保護だよ……。〕
〔え、あ、なるほど……?〕
〔大丈夫、そのうち慣れるから。〕
〔あ、うん、〕

アキが呆れていると、美しい女性の声がした。

〔ヴィオ、誰とお話ししているのかしら?〕
〔あ、姉様!今、教会に来てくれたアキさんと家族のハルくんとお話ししているんです。〕
〔あら、そうなの?私も挨拶していいかしら?〕
〔えっと、〕
〔アキさん、ハルさん、はじめまして、ヴィオの姉、エリュです。よろしくね。〕
〔あ、はい、お願いします……〕
〔エリュ様って、もしかして、私のステータスに載ってる加護の『癒しの女神エリュの寵愛』のエリュ様ですか……?〕
〔えぇ、そうよ。ヴィオが亡くなる前からずっと気にしていたあなたをわたくしも見ていたら気に入っちゃって、ヴィオが加護を与えるって言っていたからわたくしも与えたのよ。〕
〔そ、そうだったんですね。ありがとうございます。〕
〔ふふっ、いいえー。そちらの可愛らしいハルさん〕
〔は、はいっ!〕
〔ふふっ、緊張しています?〕
〔も、もちろん、緊張しています……、〕
〔ふふっ、ほんと、可愛らしいわぁー。
ふふふっ。〕
〔あ、姉様!何も言わずに寵愛を与えないでください!アキさんのときにも言いましたよね!〕
〔あらっ、そうだったかしら?覚えてないわー。〕
〔姉様ー!〕
〔ふふふっ〕
〔〔ふふっ〕〕

脳内に聞こえてくる神の声が2柱になり、ものすごく緊張していた2人だが、神様2柱のやり取りに思わず微笑んでしまった。

〔あら、可愛らしいお顔。〕
〔す、すみません……〕
〔いいのよ。楽しい時は笑いなさい。そして悲しい時は泣きなさい。辛い時は誰かに頼りなさい。誰にも頼れずひとりで抱えるのであればわたくし達を頼りなさい。これでもわたくし達は口が堅いですからね。〕
〔〔はい。〕〕

声しか聞こえないが、エリュの声が真剣になり、ハルとアキは真剣に話しを聞いた。

〔アキさん、ハルくん、そろそろ戻りましょうか。〕
〔え?〕
〔そろそろ神父さんが神殿に戻ってくるとおもいます。結構長い間こちらに来ていただいているので、もしかしたら不審がられるかもしれません。〕
〔なるほど、わかりました。また来ますね。〕
〔すみません、急かしたみたいになってしまって。〕
〔いえ、大丈夫ですよ。〕
〔いつでもいらっしゃい。〕
〔〔はい、また必ず来ます。〕〕

ハルとアキは明るい声に見送られて、瞳を開けた。

「はふぅ……」
〔ふぅ、お疲れ様。〕
〔うん、アキちゃんも〕
〔うん。ヴィオ様元気そうで良かった。〕
〔そうだね。エリュ様って方ともお話ししちゃったね。〕
〔そーだね。加護のエリュ様って誰かと思ってたらヴィオ様のお姉様だったんだねー。〕
〔そうだねー〕
〔さて、神父さんはまだ戻っていないみたいだし、長く居たことバレないようにさっさと出ようか。〕
〔うん。〕

戻ってきたハルは、リュックを背負い、アキを抱っこして教会をあとにした。


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