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ロング帝国 ルーク
22話
しおりを挟む白い建物に入ると入口に白い服を来た年配の男性が立っていた。
「こんにちは。」
「っ、こんにちは……」
人が居ることには気付いていたが、急に声を掛けられて息が一瞬詰まった。
「ふぅ、あの、ここは、教会ですか?」
息をひとつ吐き落ち着いたハルは、今一番知りたい事を聞いた。
「えぇ、そうですよ。」
「あの、ぼく、教会って初めて入ったんですけど、ぼくみたいな子供、入っても大丈夫なんですか?」
「えぇ、もちろんです。」
「よかった。あ、あと、ぼくの家族なんですけど、このねこちゃん一緒でもいいですか?」
「うーん……、そうですね…………。」
年配の男性は、唸りながら顎に手を当てて考え込んでしまった。
「ダメ、ですか?」
「いえ、動物を連れて来る方が居ないのでなんともいえない感じですね。」
「そうですよね、普通そんなことしないですよね……」
「でも、大丈夫ですよ。一緒にお祈りしていただいて。」
「え、ほんとですか!?」
「えぇ。この世界の教会は、色々な神様を祀っていますが、皆一様に創造神様を必ず祀っているんです。」
「へー」
「その創造神様が動物が好きみたいだと古い文献に載っているんです。」
「そうなんですね!」
「なので、大丈夫ですよ。
ただし、紐を繋げて腕の中から降ろさないでくださいね。」
「わかりました。」
ハルの不安そうな声に顔を上げた男性は、優しそうな笑顔でアキが入る事の許可をくれた。
「ご挨拶が遅れました。わたくし、ここの教会で神父をさせていただいているエルマン・ルジャと申します。」
「あ、ぼくは、ハルです。この子はアキちゃんです。」
「にゃん」
「ハルさん、アキさんよろしくお願いしますね。」
「よろしくお願いします。」
お互いに挨拶をすると、
「ハルさんはお祈りをしに来たのでしたよね。」
「はい。お金とか払うんですか?」
「いえ、お祈りだけの方からは頂いていません。」
「そうなんですね。」
「では、こちらへどうぞ。」
「はい。」
エルマンが誘導してくれて、入口から真っ直ぐ歩くと、すぐ目の前に人型の彫刻が2体見えてきた。
「こちらの真ん中におられる方が、創造神のヴィオ様です。」
「うわぁ…………」
ハルは、彫刻を見入ってしまった。
彫刻のヴィオは、中性的な顔をしていて前髪はセンター分け、背中まである真っ直ぐな髪の毛を1本1本まで丁寧に掘られていた。
「ヴィオ様の左隣りにおられる方が、癒しの女神のエリュ様です。」
「エリュ様……」
彫刻のエリュは、美人な顔をしていて前髪は綺麗に揃えられている。背中まである髪の毛は緩くウェーブが掛けられて、こちらも1本1本丁寧に掘られていた。
「古い文献によりますと、エリュ様は、ヴィオ様のお姉様であるそうです。」
「え、兄妹なんですか。」
「えぇ。」
「あの、真ん中にヴィオ様が居らして、左側にエリュ様がいらっしゃいますが、右側はなぜ空いているのですか?」
「文献によりますと、ヴィオ様の家族をもう1人お創りになられようとしていたそうなのですが、他にどなたを創るのが正解なのか分からず、全世界で戦争が起きたそうです。」
「え、戦争……」
「はい。自分達の国で納めている神をヴィオ様の家族に加えようと考えた国王たちが起こしたそうです。」
「そう、なんですね……」
「そんな不毛な戦争はしばらく続きましたが、ヴィオ様の信託で終わりを迎えました。」
「信託……?」
「はい。ヴィオ様は、自分の家族は、姉のエリュのみだと話し、エリュ様以外に家族は居ないと言ったそうです。」
「へー……」
「それで、どの国でも真ん中にヴィオ様で左側にエリュ様が居て、右側が空いているのです。」
「そうなんですね。」
「えぇ。他になにか聞きたいことはございますか?」
「いえ、今のところは大丈夫です。」
「わかりました。では、わたくしは裏で作業がありますので、失礼ですが下がらせていただきますね。」
「はい。」
「帰る際のご挨拶は結構ですので、」
「わかりました。」
エルマンは丁寧にお辞儀をして教会の奥に入って行った。
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