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ロング帝国 ルーク
19話
しおりを挟む「ホントにすまんかったな、して、そのカタナの素材はなんじゃ?」
「素材……〔アキちゃん分かる?ぼくが鑑定しても分からなかったんだよね〕」
〔さあ?〕
「すみません、分からないです……。(知ってるけど、言う気無い。みたい…)」
「そうなのか……。でも、鑑定して文字化けするのはたまに見かけるからのう。」
「そうなんですね。」
「あぁ。神具が基本だがな。」
「神具……、」
「そのカタナはあまり鑑定させないようにした方が良いじゃろう。」
「分かりました。そうします。」
「そうしておけ。そういやハルは短剣が欲しいと言ってたな。そんないいもん持っててなんでじゃ?」
「これだと切れすぎちゃうことがあるので。」
「切れすぎる……?」
「はい。刃は薄いのですがその分切れ味が抜群でサッと触れるだけで切れちゃうんです。」
「ほぉ!」
「なので、周りに人が多い時はあまり使わない方が良いかなと思ってまして……」
「なるほど……。なら、何故片手剣じゃなくて短剣なんじゃ?」
「どちらでも良いんですが、なんか短剣かっこよくないですか?」
「かっこいい………………?」
「あ、すみません……」
「いや、片手剣のがかっこいいと良く言われるのを聞くから以外だなと思っての。」
「そうなんですね」
「それに、短剣だと戦う時のフォームが変わるだろ。カタナで戦う時に影響が出ないかのう。」
「なるほど……。ですが、片手剣だと、長さは同じくらいですが、重さが倍ぐらい違うのでその方が影響出そうだなと思いまして。刃も太いですし。」
「そうか、なるほどな。でも、鍛錬だと思って使ってみるのはどうじゃ?重い片手剣を使って、カタナと同じ使い方をしてみればカタナの使い方が良くなるかもしれないぞ。」
「なるほど……、それはいいかもしれませんね。」
「店にあるの見てみていいぞ。触ってみてもいいぞ。」
「ホントですか?ありがとうございます。」
ハルは、ルネルの助言を聞いて、片手剣を探してみることにした。
〔アキちゃん、今の話しどう?〕
〔いいと思うけど。〕
〔ホント?〕
〔うん。鍛錬になるってのはほんとだと思う。片手剣使って朝の稽古やるの良いと思うよ。〕
〔なるほど、それいいかも。〕
〔で、どれにするの?見ながら鑑定してるんでしょ?〕
〔うん。どれもいい出来なんだけど、これといったのはなくて…〕
〔まあ、ゆっくり探しなー〕
〔うん。〕
片手剣を鑑定しながら持って軽く振ってみて手に馴染むかなどを確認しながら1本1本見て行った。
「うーん……」
「無いのか?」
「あ、はい……、ぼくの手に馴染むものがなくて。全部大きいんですよね…。」
「そうじゃのう、ハルの手は小さいのう。」
「そうなんですよ…。」
「……、ちょっと待っとれ。」
「え、あ、はい。」
ルネルはハルの手を見てから作業場と続いている扉を入っていった。
〔なんだろ?〕
〔さぁ?いいの持ってきてくれるとか?〕
〔まさか〕
〔だよね。〕
しばらく品物を見ながら待っていると、ホコリだらけになったルネルがひとつの箱を持って戻ってきた。
「待たせたの。これを持ってみ。」
「あ、はい。」
ハルは、渡された箱を開けた。
中から出てきたのは片手剣にしては少し小ぶりのものだった。
「これは?」
「随分昔に小人族の冒険者から頼まれて作ったものじゃ。」
「え、それって、」
「あぁ、その依頼主はこの町のリーダー格の人間に目を付けられて力に合わない依頼を受けさせられた。それにより死んだ。」
「え……、」
「完成予定の日になっても取りに来ないから不思議に思っておったのじゃ。まあ、冒険者だから依頼中に死ぬことはある。じゃが、そいつはまだ武器が無いから薬草取りぐらいしかやってなかった。」
「そんな……、」
「酒場で大声で馬鹿みたいに騒いでいる奴らがいて、笑いながら小人族を高ランクの依頼受けさせたって言ってて苛立ちを隠しながら聞いたら、そいつらがあの子をはめて死に追いやったっ!」
「酷い……」
「あぁ、直ぐにギルドに言いに行ったら、ギルドにダメだと言われると思ったのかギルドを通してなかった!」
「それじゃあ、」
「あぁ、ワシの訴えでようやくその子がギルドに顔を出さないのを職員達も認識したのじゃ。」
「……」
「その子の無念を、思うとこれを処分する事が出来なくてな、ホコリだらけになってたのじゃ。」
「でも、ぼくが使っても良いんですか……?」
「あぁ。ハルなら大切に使ってくれると思ったからの。」
「…………、分かりました。使わせていただきます。」
「そうしてくれ。」
「お代は?」
「あの子が払ってるから大丈夫じゃ。」
「でも、それは前金だけですよね。」
「……そうじゃな」
「ちゃんと払わせてください。その人からお借りするためにも。」
「分かった。」
ハルはその小さめの片手剣の残りのお金を払って片手剣を受け取った。
「ちなみに、その人のお名前は?」
「あの子の名前?なぜじゃ?」
「この剣にその人の名前を付けて一緒に旅をさせてください。」
「っ、……、分かった。あの子は、『シキ』じゃ。」
「『シキ』……、これから、よろしくお願いします。シキ。」
ハルは、片手剣の柄の部分におでこを当てて目をつぶり語りかけた。
その光景を目に涙を溜めながらルネルが見ていた。
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