猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

16話

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「はぁ、」
「にゃうー」
「ごめん、大丈夫。」

先程の場所から離れ、近くにあった噴水広場に来ていた。

近くにベンチもあり、周りに人が居ないベンチを選んで座った。

〔とりあえず、傷、治そう。〕
〔お願い。〕
〔《ヒール》〕

アキは、ハルの腕に抱っこされたまま、ハルの頬に触れてヒールを掛けた。

〔はい、もう大丈夫。痛くない?〕
〔うん。ありがとう。〕
〔どういたしましてー。〕

ヒールを掛け終わったあと、ハルはアキを膝の上に乗せて頭や背中を撫で始めた。

「なぅー」
「ふふっ」



穏やかな時間が過ぎるなか、ドタドタと足音を立てて噴水広場に男が来た。

「居た!」

男は、何かを見つけてそこに向かって走った。

「おい、ハル!」
「っ!」
「シャー!」
「お、わ、わりぃ…。」

ハルに向かって来たのは、冒険者ギルド職員のローガンだった。

「ローガンさん、どうかしましたか?」
「いや、ギルドに道端で喧嘩沙汰になってるって言われたから来たんだ。そしたら、もう収まってて、猫を連れた子供がなんとかしちまったって言ってたからハルだなって思って探してたんだ。」
「そうでしたか。」
「それで、悪いんだが、報告書を書かなきゃいけないから事情を話してもらえないか?」
「報告書?」
「あぁ、なんか貴族と揉めたんだろ?その場合は双方に聞いて報告書作って上に上げないと面倒なことになるかもしれないだろ。」
「なるほど…。でも、おじさんどっか行っちゃいましたけど。」
「大丈夫だ。相手は誰か、周りに居たって奴らに聞いてきたから。」
「そうですか。」
「あとはハルから話し聞いて、事実であるか確認取れば終わりだ。」
「なるほど。」
「だから、悪いが話してもらってもいいか?」
「今すぐですか? 」
「嫌か?」
「いえ、そうゆうことではなくて、お腹空いたなーと思いまして。」
「なんだ、まだメシ食ってないのか?」
「はい。」
「なら先にメシ行くか?」
「ローガンさんと、ですか…?」
「え、嫌か…?」
「いえ…。大丈夫です。」
「そ、そうか?…じゃあ、行くか。」
「はい。」

アキを抱っこして、ローガンのあとをついて行くと、噴水広場を出て少し歩いた場所にある建物に着いた。

「ここは?」
「ここは、『食事処メーラ』」
「メーラ…?」
「あぁ、リンゴって意味らしい。」
「へー」
「店名の由来なだけあって、メシだけじゃなくて、リンゴのデザートも美味いぞ。」
「へー」

そう言うローガンのあとを着いて行ってお店へ入る前にリュックにアキを入れてから店に入っていった。

「いらっしゃいませー!」
「おー、ノエリア久しぶり。」
「あ!ローガンさん!お久しぶりです!どうぞ!」
「あぁ」
「あ、ローガンさん」
「ん?」
「アキちゃんの確認をしたいです。」
「確認?」
「はい。」
「あれ?この子ローガンさんの子?」
「いえ、ぼくは、ハルといって冒険者をしているものです。」
「ハドソンが可愛がってるんだ。だからちょいちょい俺も会ってる。」
「なるほど。はじめまして、私はノエリア。ここの食堂で働いてるの。よろしくね!」
「はい。あの、猫ちゃんを連れて歩いているんですが、中に入れて一緒にご飯食べても良いですか?」
「良いよ。ただし、紐で繋いどいてね。」
「分かりました。」

ハルはリュックからアキを出して、首に巻いているリボンに紐を付けて、反対側をリュックに付けてからアキを抱っこした。

「わぁ!可愛い猫ちゃん!」
「アキちゃんっていいます。」
「アキちゃん!よろしくね!」
「ウウゥ……」
「アキちゃん?〔どうかした?〕」
〔この人、うるさい……。耳痛い…。〕
〔そうだね。早くご飯食べて出よう。〕
〔うん。〕
「おい、ハル、大丈夫なのか?その猫。」
「はい、大丈夫です。早くご飯食べましょう。」
「そうだな。」


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