猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

13話

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エイミーと一緒に解体作業場から出て受付で別れて、冒険者ギルドを出たハルとアキは町の散策を始めた。

「うわぁー、どこも活気が凄いねー、アキちゃん。」
「にゃうー〔どこか見たいところある?〕」
「うーん、とりあえずフラフラ歩いて気になったところがあったら入ろうかな。アキちゃんも気になったところあったら教えてね。」
「にゃん〔分かった〕」

ハルはアキを抱っこしてキョロキョロしながら町を見回しながら歩いた。

〔あ。〕
「なにかあった?」
「にゃう。〔あの服〕」
「服?」
「にゃ。〔ハルの服って、汚れが目立たないように黒っぽい服ばかりだからさ、あの白い服とかどうかな?〕」
「うーん〔でも、汚れるよ?〕」
〔でも、せっかくだから黒っぽいの以外でなにか着てよ。似合うと思うんだよね。〕
〔そうかな…?〕
〔そうそう。〕
〔うーん…〕
〔白じゃなくてもいいからさ、とりあえずお店に入ってみようよ。〕
〔うーん、わかった…。〕

白い服の前で立ち止まり、店の外で服を見ながら2人で話し始めた。
その様子を店の中で見ていた店主は、中に入ってこないかなーとうずうずしながら見守っていた。


ガチャ カランカラン

「こんにちは…。」
「はい、いらっしゃいませー!」
「っ、」

おそるおそる入ったハルにうずうずしていた店主は思わず大きな声で出迎えた。
それにびっくりして肩を揺らしたハルに店主はすまなそうな顔をした。

「あ、ごめんなさい。びっくりしちゃった?」
「あ、はい…、」
「お店の前に居るの見かけて来るのかなーと思って見てたら来たから嬉しくなっちゃって大きな声が出ちゃった。ごめんなさいね。」
「いえ、あの、」
「はい?」
「ぼくの家族でアキちゃんっていう猫ちゃんが居るんですけど、お店に入れてもいいですか?ぼく、ちゃんと抱っこしてますので。」
「ええ、いいわよ。」
「ありがとうございます。」

ハルは店主に許可をもらい、リュックの中に入ってもらっていたアキを出して抱っこした。

「あら、可愛い。」
「ありがとうございます。」
「猫ちゃんは、アキちゃんって名前だったわね。君の名前は?」
「はい。ぼくはハルと言います。」
「ハル君ね。私はセリナよ。よろしく。」
「よろしくお願いします。」
「それで、なにか欲しいものあるのかしら?」
「はい。ぼく、黒っぽいお洋服は持ってるんですけど、それ以外は持ってないので、明るい色のお洋服が欲しいなと思って。」
「わかったわ。なにか希望はある?」
「動きやすいのでお願いします。」
「動きやすいのねー。うーん…。」

ハルの要望を聞いた店主のセリナは悩み出した。

「無い、ですか…?」
「え、ううん。違うの。ハル君、似合いそうなのたくさんあってどれにしようかなって思って。」
「そう、ですか…?」
「そうそう。」

ハルのしょんぼりとした顔を見て、セリナは慌てて椅子から立ち上がり手を胸の前で振りながら否定をした。

「よし、決めた!」
「はぁ、」

5分ほど椅子に座ったまま悩んでいたセリナは立ち上がって店に置いてある服を持ってきて立って待ってたハルに持たせた。

「3パターン用意したから着てみて。」
「3パターン?」
「ええ。アキちゃんは、私が見てるから。そこのカーテンの中で着替えられるから着てきて。」
「え、あ、はい、わかりました…。」

迫力と圧に負けて服を持ったハルは、着替えるスペースにリュックを置いて、アキの首に付けてるリボンに紐をくくり付けて、リュックに紐を縛り付けた。

「アキちゃん、苦しいと思うけど、ちょっとだけ我慢してて。」
「にゃうん。」
「ありがとう。」

アキの頭をひと撫でしてからカーテンの中に入って行った。

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