猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

10話

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「んー?」

手を振っていたハルは、アルバンが見えなくなったとたん、首を傾げた。

「にゃ?〔どうした?〕」
「あの人、アルバンさんってどうゆう人なんだろ?」
「にゃう?〔どうゆうこと?〕」
「冒険者だよね?きっと。」
「にゃん。〔そうね〕」
「だよね。受付の人に聞いてみればいいのか。」
「にゃー。〔それが確実だと思うけど。〕」
「だよねー。」

ハルは、イスに座ったままアキを向かい合うように膝に座らせて話し始めた。


それを無言で見つめている多数の冒険者やギルドスタッフ。

((((なんだ、あの可愛さは……!))))

皆一様にハルとアキに心を奪われている。
誰が次に彼らに話し掛けるか、無言で火花を散らしている。

「っ、」
〔どうした?〕
〔なんか、寒気がする……。〕
〔あー…、周りに居る人達じゃない?〕
〔なんで?〕
〔なんか凄いこっち見てたと思ったら、こっちには向けてないけど少し殺気放ってたから。〕
〔え、なんで?〕
〔さあ?〕
〔殺気放ってなかった人って居る?〕
〔うん。1人だけ。受付に居る可愛い感じの女の子だけ。〕
〔そっか…。じゃあ、その人の所に行こうかな。〕
〔なんで?〕
〔他の人、なんか怖そう。殺気放ってたとか聞くと。〕
〔あー…、そうね。じゃあ、行こうか。〕
〔うん。〕

ハルは、アキを前に向けて抱っこし直してイスから立ち上がり受付に向かった。


(きゃっ!こっち来たーー!!可愛い!可愛い!)

受付に居た妖艶なお姉さんが内心きゃっきゃっしながら顔には出さずに受付に座り、ハル達が自分の前に来るのを待っていた。

そんな内心なんか知らないハルは、その妖艶なお姉さんの隣りに座っている可愛い感じの女の子の受付の方に行った。

(なっ!)

「い、いらっしゃいませ。どういったご用件でしょうか?」

女の子は、隣から感じる威圧感に耐えながらハル達に接した。

「あの、昨日冒険者登録をしたハルと言います。解体をお願いしていたんですけど、終わってますか?」
「ギルドカードをお預かりします。」
「はい。」

ギルドカードを預かった女の子は手早く確認をした。

「お待たせしました。終わっていますね。お金はこのままギルドカードに入れてしまってもよろしいでしょうか?」
「はい、お願いします。」
「かしこまりました、少々お待ちください。」

女の子が作業しているあいだヒマなハルは興味津々と女の子の作業を見ていた。

「見ていて楽しいですか?」
「はい、とっても。」
「そうですか?」
「はい。ぼくには出来そうにない事なので、スゴいです!」
「ありがとうございます。」

ハルがニコニコと笑顔で女の子の作業を見ていると、

「ギリッ」
「っ、」

妖艶なお姉さんが歯ぎしりをした。
女の子は強ばりながらも作業をした。

「おまたせしました。今、引き取る素材持ってきますね。少々お待ちください。先にギルドカードお渡しします。」
「はい、ありがとうございます。」

女の子は席を立ち、受付の後ろにある扉から中に入っていった。

〔ハル〕
〔んー?〕
〔楽しい?〕
〔うん。あのお姉さん、凄いスピードで作業してた!〕
〔ハルが楽しそうで何よりだよ。私以外に笑顔見せたし、ホントにあのお姉さんの作業見てて楽しかったんだね。〕
〔ん?〕
〔ん?〕
〔ぼく、笑ってた?〕
〔うん。ニッコニコで作業見てたよ。〕
〔そうなの?〕
〔気付かなかった?〕
〔うん。凄く楽しい気持ちではいたけど笑ってたんだ…。〕
〔うん。〕
〔へへー、なんか、嬉しい。〕
〔よかったね。〕
〔うん。〕

「すみません、おまたせしました。」
「あ、はい。」
「ご確認お願いします。」
「はい。」
「オークとハイオークのお肉が4分の1と、ブラックベアの子供のお肉が半分と、子供のブラックベアの毛皮1体分です。お間違いないですか?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます。」

ハルは、女の子から受け取った素材をリュックに入れるフリしてアキがインベントリにしまった。

「他になにかご用件はありますか?」
「いえ。大丈夫……、あ、そうだ、」
「はい、なんでしょうか?」
「お姉さん、お名前は?」
「あ、言ってませんでしたね、すみません。私は、エイミーです。」
「エイミーさん…。」
「はい。」
「改めて、ぼくがハルです。この子は、アキです。
よろしくお願いします。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。ハルくん。アキちゃん。」
「はい!」
「にゃー!」

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