猫ちゃんの異世界、旅日記。

椿姫哀翔

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ロング帝国 ルーク

7話

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「はっ、はっ、……あっ、いゃっ!」
〔っ、ハル!?〕

ハルの声で飛び起きたアキはハルの腕の中から出て、ハルに飛び乗り叩いて起こした。

〔ハル!ハル!〕
「ん、やっ!」
〔っ、どうしよう……、ハル!ハル!ハル!!〕
「んはっ!………はぁはぁはぁ…、あれ、アキ、ちゃん……。」
〔大丈夫?かなりうなされてたけど。〕
「え、あー、うん、大丈夫。」
〔ハル?〕
「うん、大丈夫。大丈夫。」
〔っ、(ちゃんとまだこっちに戻ってこれてない!)ハルっ!〕
「っ!はっ、あ、アキ、ちゃん……?」
〔ハル、気付いた?大丈夫?〕
「あれ、ぼく……?」
〔寝てる時にうなされてたんだよ。〕
「そっか、起こしちゃってごめんね…。」
〔それは良いけど、まだまだ夜明け前だけどもう一度寝れる?〕
「っ、あ、うん、大丈夫。寝れる。うん。」
〔無理しなくていいよ。寝れないなら一緒に起きてるから。〕
「でも、明日も色々やるから、ちゃんと寝ないと…。」
〔大丈夫。〕
「ほんとに…?」
〔うん。もし、眠くてギルドの依頼とかやるの不安なら行かないで寝てれば良いんだから。〕
「でも……、うん、そっか、そうだよね……。少し、話し、聞いてくてる……?」
〔うん。でも、その前に〕
「ん?」
〔身体、汗でベタベタでしょ。〕
「うん…。」
〔《クリーン》〕
「ありがとう。」
〔あと、これも、どうぞ。〕

なんとかハルを起こして、ベットにクッション2つを積んで背もたれにして座らせ、インベントリからカップとミルクを出して、魔法で温め、ホットミルクを作ってハルにあげた。

「ありがとう…。あったかい……。」

コクッ

いつもみたいに大きい一口でがっと行かず、舐めるように一口飲んだ。

「ん、美味しい。…少し甘い…?」
〔うん。少し蜂蜜入れてみた。どう?〕
「美味しい。ほっとする…。」
〔よかった。〕

ハルは、アキを膝の上に乗せて、撫でながら無言でホットミルクを半分ぐらい飲んだ。

「ふぅ、落ち着いた…。はふぅ……。」

起きてすぐより顔の強張りが幾分か和らいでいる。

「ねぇ、アキちゃん、」
〔ん?〕
「さっき、夢でね、」
〔うん。〕
「っ、……………ふぅ、ローガンさんに殴られてた……。」
〔え、〕
「魔の森に入った日の夢だった。魔の森に連れてった衛兵も同じ人だった。殴られてた時も同じ人だった。でも、途中で急に、ローガンさんになったの…。」
〔うん、〕
「びっくりした。何が起こったのか周りを見たの。そしたらね、っ、」
〔ハル、〕
「…………すぅ、はぁー、ハドソンさんが笑って、ぼくが殴られてるの、見てた、の……。」
〔っ、〕
「ハドソンさんにね、『助けて』って、いっぱい言った。でも、助けて、貰えなかった……。」
〔……。〕
「ハドソンさんが、ね、近付いて来たの……、っ、ふぅ、…………。」
〔ハル、もう、良いよ。〕
「でも、」
〔大丈夫。わかったから。〕
「っ、ふぅ、ひぃ、……、は、ぁ、……っ、」

ハルは、話してる途中から涙を流しながら、アキに夢の内容を伝えた。

「………………ふぅ、コクッ。あ、ねぇ、アキちゃん、」
〔ん?〕
「ミルク、また、ちょうだい……?」
〔いいよ。〕

20分程涙を流していたハルだが、少し落ち着いたのか、手に持ってたカップに残ってた冷えたホットミルクを飲んだ。

アキは、ハルが持ってるカップにそのままミルクと蜂蜜を入れ、魔法で温めた。

〔どうぞ。〕
「ありがとう…。」

コクッ

「うん、美味しい…。」
〔よかった。〕
「はふぅ、……、ねぇ、アキちゃん、」
〔なーに?〕
「どうして、あんな夢、見たと思う?」
〔うーん、今日会ったローガンさんがその、衛兵に似てたから…?〕
「でも、それなら、ハドソンさんは……?」
〔うーん、ハルを苦しめたかった、とか…?〕
「えー、誰が」
〔うーん、捕まえた男達とか…?〕
「そんな訳、」
〔そうだけど、そう思っといた方がラクになるでしょ。〕
「……、うん、そうだね。」
〔なんで、とか考えたらキリないから、あの男達がやったって思ってれば良いよ。〕
「そうだね。ちょっと酷いことし過ぎたから仕返しが来たんだね、きっと、」
〔そう、そう思っときな。〕
「うん。そう考えたら、なんか、安心して、また眠れそう。」
〔そ?ならよかった。〕

ハルはホットミルクを飲み干した後、ほんとにすぐにベットに横になって、眠りについた。

〔ふぅ、(ハル、あなたの心は、私が守るから。だから、安心して眠りな。)〕

アキもハルの腕の中に入りまた眠りについた。

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